かみさまなんてことを ~陽だまり~
あんぜ
第一部 幕間
第1話 プラチナの少女
「ちょっと! そんなのズルい! 聖騎士様だからって贔屓ではなくて!?」
俺の前には襟の華やかな、漂白された白のシュミーズの上に裏地のある
「いや、でも……このゴブリンの巣穴、結構危ないよ?」
俺の所属する冒険者パーティ、
「
くるくると巻いた
「――わたくしたちのパーティにも、その金貨10枚の依頼を受ける権利があるはずです!」
確かに大荷物を持ってはいるが……。下男と呼ばれた俺は、そそくさと後退って後を
ただ、アリアも聖騎士だからと突っ込まれると、なんだか申し訳なさそうにしていた。
この世界では聖騎士という
「(ねぇ、ああいう地毛の人も居るの?)」
俺は皆の後ろでぼーっとしていた
「(んにゃ、魔術で染めてる。昔、あんな髪の色の王様がいたから今でもマネする人多い)」
「(あ、一応居るのは居るのね)」
「そこ! 人の髪についてコソコソ陰口叩かないでくださる!?」
「やや、別に陰口を叩いていたわけじゃ……」
プラチナの少女が文句をつけてきた。
「ユーキ、どうしよう……? 譲った方がいいかな?」
アリアもすっかり
ただ、俺たちにだって金は必要だ。孤児院の子供たちにも服とか、靴とか、シーツとか色々買ってあげたい。
「……わかった。じゃあそこのお嬢……さん? どちらが依頼を受けるか俺と腕相撲で決めない?」
そう言うとアリアは微妙な顔をしていた。まあ、ある意味、結果の分かったズルみたいなものだからね。
プラチナの少女のパーティには、見るからに力持ちそうで大柄な鎧兜の戦士が居たが、俺には他人の力を見通せる『鑑定』の能力があった。そして『鑑定』で見通したその戦士の筋力はこの俺の筋力を下回っていたし、他にそれ以上の力持ちは居なかった。
「構わないわ、それで行きましょう!」
プラチナの少女はその条件で納得した。当然だろう。俺は筋肉ムキムキのゴリマッチョなんかじゃない。むしろ酒場の給仕の女性にも負けそうな腕っぷしだ。勝てると踏まれても何ら不思議ではない。がしかし! 実は俺は異世界からの召喚者。神さまに与えられた特別な力を得ていたため、肉体的な能力は誰よりも高かったのだ。
じゃあ――と、俺はギルドホールの窓際の二人掛けの机を引っ張り出してきて席に着く。プラチナの少女のパーティの大男は俺を見据え、ゆっくりとこちらにやってきて席に着く…………のかと思ったら、椅子を引いただけで実際にそこに座ったのはプラチナの少女だった。
「「「えっ!?」」」
声を漏らしたのは俺だけではなかった。アリアもそうだし、事の成り行きを見守る野次馬冒険者たちもそうだった。
「君が相手するの? そっちの彼じゃなく?」
「もちろんよ、わたくしでは不満かしら?」
アリアの方を見ると、なんかちょっと怒っていた。
目の前の女の子と腕相撲とは言え、手を繋ぐことに嫉妬してるのかもしれない。
もちろん怒ってる顔もかわいい。
「いや、君がいいならいいんだけどさ……」
「じゃあ問題ないわね、始めましょうか」
わかった――とテーブルに肘を置き、右手を差し出す。
が、彼女は手を出してこなかった。代わりに何かの詠唱を始め――
「ぁ、やばっ……」
そう漏らしたのは珍しく普段無口なリーメだった。そして詠唱は完成される。
「
見る間にプラチナの少女の体が筋肉で溢れ、ボタンが弾け飛ばんばかりにコットが膨れ上がり、ひと回りもふた回りも彼女の身体は大きくなったように見えた。
初めて見るその魔術の効果に呆気に取られていた俺は――はじめ!――の掛け声で我に返った時には、既に右腕はテーブルすれすれまで押し込まれていた。
「ふんぎぃぃぃいいいい!」
いつかの俺の対戦相手を思い出すかのように、必死に巻き返そうとした。しかしプラチナの少女も顔を真っ赤にして最後のひと押しに賭けていた。スタミナは十分にあったはずだったが、元来、緊張癖のある俺はゲームならともかく
「あたしのかちぃ! やったぁ! みんなぁ、ほめてほめて!」
プラチナの少女は立ち上がると、小さな子供かのような無邪気さで称賛を求めはじめた。それはまるでさっきまでとは別人のように見えた。
「なんだあれ……」
「
むふん――とリーメが得意げな顔で言う。いや、お前が自慢するところかよ。
「あたしはルサルフィ! おじょうさんなんてナマエじゃないの! おぼえとくことね!」
ビシィ!――と俺を指差す細マッチョのプラチナの少女。
俺もアリアもあっけに取られていた。
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とりあえず1.5部(第一部 第二幕)はこんな感じでスタートです!
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