第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌】二十首連作部門『万年平の宵』

川崎涼介

『万年平の宵』

重い身を鞭打ち動かす労働者老齢達すも隠居出来ぬ世


朝食はファストフードの珈琲のみ周りも同じく色々節約


来て早々他人が起こし火の粉浴び吾の仕事にも尻に火が付く


昼時の繁盛店の人気メニュー上司見かけて味わからず


同僚らほぼサボる為外回りその穴埋める不器用さん


終業前トラブル発生追作業押付けられた万年平


チラホラと知ってる顔を見る車内通勤ラッシュが過る終電


帰宅時間午前一時十分前待っていたのは暗い部屋だけ


荷物放て上着脱ぎ捨て床に入る涙し眠り今日も不変


休日は惰眠貪る出不精さん動こうにも懐寂し


突然に呼ばれ向かえば重い気配待ってた上司が辞職勧告


満ち満ちた日々に信じた将来は五十路となり初めて疑う


片付ける溜まった仕事と身の回り周囲は無理し腫れ物扱い


全て終え職場をあとする被リストラまっすぐ帰れず破れかぶれ


去りし者遺した成果啄むは自意識過剰な厚顔無恥


夜の蝶会って臆する勤勉家飲み食いしても誤魔化せず


慣れてない夜遊びをして虚しけりそしてそして悔し涙


お馴染みの終電で帰る最後の日だからここで自棄の晩酌


重い身に鞭打ち動かす無職者隠居するには足りぬ蓄え


真剣成れぬ情報ハロワかなされど漁る生きるために

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌】二十首連作部門『万年平の宵』 川崎涼介 @sk-197408

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