三度目のお話し1

 大勢の獣人を連れて解放軍は逃げる。

 レオとしては色々なケモッ娘がいて眼福であった。


 ただ周りの目もあるのでミカオやフーニャを撫で回す朝と夜のモフ行為はお預けとなった。

 ラオナールが最初に力を見せつけたので獣人内は表面上は穏やかであった。


 人間であるレオに関しては冷たい視線もあったのだけどラオナールが甲斐甲斐しく世話を焼いていたので文句を言う人も一切出なかった。

 ライオン的な性質なのか意外とラオナールはレオに対して優しい。


 一度だけレオに突っかかった犬の獣人がいた。

 レオは無益な争いを避けようとしたけどそれをラオナールに見つかって犬の獣人はボコボコにされた。


 そんなこともあった。


「もうあと1日ほど進めば国境を抜けるはずだ。そうなると追跡も難しくなるから余裕もできるだろう」


 今のところ人間から追い付かれてはいない。

 解放軍は国境を超えて別の国にまで移動しようとしている。


 別の国に入れば国同士の関係上追いかけてくるのも難しくなる。

 だからここらで人間たちが追いついてくる可能性もトブルは考えていた。


「もうひと頑張りだ! いくぞ!」


「トブル支部長!」


 昼ご飯がてらの休憩を終えて移動しようとしたトブルのところに解放軍の獣人が慌てたように駆け寄ってきた。


「なんだ!」


「人間が近くまで迫ってきています!」


「なんだと!?」


 当然トブルはこれまでも追跡を警戒していた。

 そのために足の速いものに後方を見張らせていた。


 完全に穴がないように見張ることは不可能であるがそれでも追跡してくる者がいれば気づけるだろう。

 そう思っていたのに意外と近くまで人間が来ているというのだ。


「どうしますか?」


 人間たちの位置を聞くにここから逃げおおせるのは少し難しい。

 ここまで来れば国境を少し越えても追いかけてくることも考えられる。


「ここで迎え撃つ」


 逃げられる保証はない。

 相手が変に追いかけ回してきて拠点の位置がバレても面倒なことになる。


 憂いはここで断っておく。

 トブルは共に戦う志願者を募り、解放軍の一部や怪我人などを優先的に先に行かせた。


「俺も戦います」


「レオ、感謝する」


「レオが残るなら私も!」


「私も戦う」


 レオもここで戦うことにした。

 もう解放軍とは一連托生だ。


 ミカオとフーニャもレオを置いて逃げるつもりはなかった。

 もう大事な仲間である。


「ミカオ、フーニャ、少しだけいいか?」


 戦いになる。

 脱獄の時に大きくモフポイントを消耗してしまった。


 今でも58モフポイントを残してはいるがモフポイントはあればあるだけいい。

 レオはみんなから少し離れてミカオとフーニャを呼んだ。


「ちょ、ちょっとだけだよ?」


 そう言いながらも尻尾を振っているミカオはレオに頭を差し出した。


「ありがとう」


 レオはニコリと笑うとミカオの頭を撫で始めた。

 頭の上側をとかすように優しく撫でたり、耳周りを少し揉むように撫でたりとミカオの頭を堪能する。


「……無事に乗り切ろうね」


 レオに撫でられると気持ちがいい。

 これからももっと撫でてほしいしレオと一緒にいたい。


 ミカオは撫でられながら上目遣いにレオを見た。


「ああ、乗り切れるさ」


『ケモッ娘ミカオの頭をモフりました。

 同意のあるモフです。

 接触の少ないモフりです。

 ミカオは嬉しそうにしています。

 得られるモフポイントが増加します。

 モフポイントが5回復しました』


「次は私」


 ひとしきりミカオを撫でたあとはフーニャ。

 レオよりも背の高いフーニャは膝を曲げて屈み、レオが撫でやすいようにしてくれる。


「ん……ごろごろ」


 レオが撫で始めるとフーニャはすぐに喉を鳴らした。

 前髪の奥に見える目が細められているのをレオは見た。


 フーニャは顎も好きなので顎も撫でてやる。

 するとクーっと顎を伸ばしてきて気持ちいいのか口が少し開くのだ。


「無事に終わったらまたお腹吸わせてあげる」


「……それは楽しみだな」


『ケモッ娘フーニャの頭をモフりました。

 同意のあるモフです。

 接触の少ないモフりです。

 フーニャは嬉しそうにしています。

 得られるモフポイントが増加します。

 モフポイントが5回復しました』


 これで合計10モフポイントが回復した。


「なぁーに、してんだー!」


「うおっ!?」


 後ろから包み込まれるように抱きしめられてレオは驚きの声を漏らした。


「こんな時にイチャついてんのか? ん? 私のこと除け者にして?」


 レオに抱きついたのはラオナールであった。

 拗ねたような目をしてレオの頭に顎を乗せている。


「これは……イチャというモフついてるというか……」


「モフ? なんだそりゃ?」


「実は……俺が力を使うのには獣人の助けがいるんだ」


「……はぁ?」


「ウソじゃなくてホントなんだよ」


「さっきのあれが?」


 どう見たって頭撫で回してた。

 力を使うのに獣人の頭を撫で回すなんておかしいだろうとラオナールは思った。


「……もしよかったらラオナールもモフらせてくれないか?」


「だからその……モフって何だよ?」


「とりあえずさっきみたいに撫でさせてくれればうれしいんだけど……」


「お、おい、マジかよ?」


「マジだ」


 大真面目である。

 レオがくるりと振り返ってラオナールを見つめる。


 その目には一点のくもりもなく、ラオナールはレオの真剣さに圧倒された。

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