ケモッ娘を増やそう1

 ケモッ娘がいれば百人力。

 暗い夜でもケモッ娘が近くにいるというだけでなんの不安もない。


 レオとミカオは歩き続けて次の大きな町にやってきていた。

 獣人を連れているということで少し視線が向けられたりするのだけど、首輪を見てみんな事情を察したように目を逸らす。


 服のグレードも多少下げていかにも奴隷っぽくミカオは装う。

 少しだけ楽しそうにしているのでレオも別にいいかと思っていた。


 まず必要なものは周りの地理を把握すること。

 解放軍がいる場所も探さねばならないし、効率の良いルートも考えて移動しなきゃならない。


 地図を売っていそうな大きな商会を訪ねる。

 商人はあまり貴族っぽさがないレオにいぶかしむような視線を向けたが、奴隷役として連れているミカオがここで役立った。


 自由にもなれたので毛のお手入れもしている上に服もグレードは下げたけれど綺麗な服。

 奴隷である獣人相手にそこまでするということはお金に余裕があるのだろうとそこから判断したのだ。


 結果的に地図を買うことができた。

 多少のぼったくられた感はあるものの二度と会わない相手なので後腐れなく記憶に残らないようにスパッと取引を終えた。


「んーとね、このドーケっていう町に解放軍の支部があるんだ」


 奴隷のために一部屋用意する物好きはいない。

 そのために宿もレオとミカオで同部屋だ。


 少しだけ理性が保てるか心配になるレオだが同じ部屋に泊まればお金も無駄にならない。

 いくつか必要なものを買い足して宿の部屋で今後のことを話し合う。


 目標としては解放軍と接触して保護を求める。

 ミカオは元解放軍で兄弟も解放軍として活動しているらしい。


 レオも解放軍の目的が獣人たちの解放という自身の目的と一致するところがあるので解放軍に迎え入れてもらえれば共に活動したいと考えている。


「ドーケは……ここからだと北になるのか」


 ちょうどスキンヘッドの男たちがいた町から離れることになる。

 運良く逃げてきた方もドーケの方角だった。


 それほど遠い距離でもない。

 ここまでの移動速度からどれぐらいかかりそうかを計算する。


 日程が分かればもうちょっと食料必要かなとか他のことも準備ができる。


「でももう1人ぐらい仲間欲しいよね」


 夜の見張り番のことや魔物に襲われる可能性なんかを考えると1人か2人仲間が欲しい。

 2人旅も悪くないと互いに考えているが安全を考慮すると人は増やしたいと思う。


「となるとケモッ娘一択だな」


「判断が早いね……」


 レオの性癖だからというだけではない。

 さまざまなことを考慮した結果ケモッ娘が新たなる仲間としてふさわしいのだ。


 人間はまだイマイチ信頼できない。

 それに人間を雇うとミカオを奴隷扱いしなければならなくてモフモフできなくなる。


 今も別にモフモフしているわけではないがいざという時モフポイントを回復する必要がある。

 信頼ができて、ミカオに理解があって、ミカオとモフモフしても離れていく心配のない人。


 ケモッ娘しかいない。

 モフモフできるし。


 そう、モフモフ出来るのだ。

 モフモフ大事。


「ジィー……」


「はっ! そうじゃないんだ!」


「何も言ってない」


 新たなるモフモフに想いを馳せているとミカオが冷たい目で見ていることに気がついた。


「別に私はレオのものじゃないし」


「グゥッ!」


 ちょっとした嫉妬もまた可愛い。

 だけどまあミカオの言う通りではあるのだ。


 ミカオを自分のものにしてしまいたいという激重感情がないわけではない。

 今は共に逃げる目的のために一緒にいるけれど解放軍に接触した後はどうなるか分からない。


 もう一度ぐらいミカオを吸わせてもらえないだろうかと思うが嫌われるのが怖くて聞けない。

 やはり地下牢に囚われている時に吸っておけばよかったとちょっぴり後悔。


「でも……ケモッ娘の仲間なんてどうやって見つけたらいいんだ?」


 基本的に人間の町中でケモッ娘はおろか獣人も見ない。

 時々奴隷っぽそうな獣人はいるがあまり表には出ていないようだった。


「獣人は人間に奴隷にされていることもあるけれど扱いは色々なんだ。ステータスのように連れて歩く国もあれば、この国のように見たくないからあまり外に出さないなんて国もあるんだ」


「じゃあ家に閉じ込められてるってことか?」


 ミカオが頷いて返事する。


「そんな顔してくれるのレオぐらいだよ」


「ごめん……」


「ううん嬉しいよ」


 レオは思わずムッとしてしまった。

 奴隷にして、家に閉じ込めておくなんて。


 見たくもないなら放っておけばいいのに。

 ミカオはそんなレオの顔を見て嬉しくなっていた。


 獣人のことを本当に対等に考えて、獣人たちの境遇に怒りを抱えてくれている。

 獣人の境遇を思うと悲しいが、こうして親身になってくれる人間がいるのだと思うも嬉しさを感じずにいられない。


「……多分仲間も……奴隷がいいんじゃないかなって思うんだ」


 ミカオは少し言いづらそうに仲間の候補先を答えた。


「奴隷なら逆らわないし、レオの言うケモッ娘もいると思うよ」


「けど……」


「気持ちはわかるよ。でもレオなら奴隷から解放してあげられるし1人救うと思えば……」


「確かに」


 そう言われてみれば納得できなくもない。

 今のレオに全ての獣人を救う力はない。

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