ケモッ娘の寝顔可愛し1

「まさかあんな特技あるなんてな」


「ふふ、レオが手伝ってくれたから。私手先器用なんだ」


 レオとミカオは町を離れていた。

 スキンヘッドの男の金庫から盗み出したお金で服や必要なものを買ってさっさと町を抜け出していた。


 ミカオはスキンヘッドの男が金庫を隠していることを知っていた。

 最初はただの違和感だった。


 歩いているとなんとなく床の感触が違う場所があって気になっていた。

 たまたまスキンヘッドの男がいなかった時にカーペットを剥がしてみて金庫を見つけたのだ。


 おそらく獣人の敏感な感覚がカーペットしたの微妙な違いを感じ取ったのである。

 決して部下の前でも金庫を見せたことがない。


 大事なものが入っているに違いないとミカオは思っていた。

 そしてどうやって金庫を開けたか。


 なんとも単純なことでミカオがピッキングしたのである。


「俺は金属の棒曲げただけだからな」


 家の中を探して細い金属の棒を見つけ出した。

 金属の棒をレオがなんとか曲げて、それを使ってミカオが金庫のカギをピッキングして開けたのであった。


「私の力じゃ曲げられないから」


「にしてもどこで学んだんだ?」


「おじいちゃんから。昔は大泥棒だった……なんて言ってる人なんだけど私とかお兄ちゃんに手癖の悪ーいこと教えてくれたんだ」


 レオの隣を歩くミカオはニコニコとしている。

 最初は冷たいような印象だったけれど共に逃げ出して以来心を許してくれているようで明るい側面が見えてきた。


「私はこうしたこと得意だったからおじいちゃんがよく褒めてくれて、いろんなカギ開けたりして遊んだんだ」


「その経験が生きたんだな」


「久々だったからちょっと手こずっちゃったけど上手く開けられてよかった。レオに良いところ見せたかったから」


 ミカオがニコリと笑いながら尻尾を振る。

 このまま抱きしめてしまいたくなる衝動に駆られるが、まだまだミカオとは仲良くなり始めたばかり。


 ケモッ娘に対する欲望を必死に抑えてレオも笑顔を返す。


「あとはそれ、良かったのか?」


 レオは首を指差すジェスチャーをする。

 ミカオの首には革製の首輪が巻かれていた。


 今度は奴隷にするような魔法はかけられていないがせっかく解放されたのにまた首輪をすることになったのには訳がある。

 人間と獣人が何もなく一緒にいるということは他の人から見た時に違和感が拭えない。


 町で服などを買うためにはどうしてもミカオが一緒にいなければならないのだけど、ただの獣人がそのまま町中にいるとミカオに絡んでくる人がいるかもしれないのだ。

 そのためにミカオに首輪をつけてもらってあたかもレオの奴隷かのように見せていた。


 見せかけとは言ってもミカオを奴隷扱いするのはよろしくない。

 多少ミカオが自分のものという興奮があったりするけれど良くないことは良くないことなのだ。


「んー、まあ他の人が私に首輪つけるなら嫌かもしれないけど……レオならご主人様でも……いいかな?」


「ゔんっ!」


「レ、レオ!? どうしたの?」


「いや、ちょっと致命傷だっただけだよ」


 ミカオは照れたように笑う。

 言葉も仕草もレオにとってクリーンヒットだった。


 急に胸を押さえて苦しむようにような声を出したレオをミカオが心配するように覗き込む。

 少しばかりミカオのケモ力が強すぎた。


「ん、えへへ……」


 これぐらいならと我慢できずにミカオの頭を撫でる。

 ミカオは嫌がることもなく笑顔を浮かべて撫でを受け入れ尻尾を振る。


『モフポイントが1回復しました』


「ぬんっ!」


「レオ!?」


 それもまた可愛くてレオのケモッ娘愛を刺激する。

 レオはミカオの可愛さにギュンとなる心臓を強く押さえた。

 

 ケモッ娘に会えることは幸せだ。

 しかし幸せすぎて死んでしまいそう。

 

 ケモッ娘に会えた喜びで死ねるなら世界一幸せな死に方だろうと自信をもって言えるが、この世界にはまだまだ知らないケモッ娘がたくさんいる。

 ここで幸せ死してる場合じゃない。


「とりあえずこれからどうしようか」


 服や食料品など旅に必要そうなものを買った。

 ひとまずスキンヘッドの男から逃げるために町から離れたけれども先のことはまだ決まっていない。


 スキンヘッドの男はかなりヤバい人のようだ。

 お金まで盗んだのだし探して追いかけてくることは間違いない。


 早めに安全なところを見つけたいと思っていた。

 せめてミカオだけでもどうにかしてあげたい。


「……解放軍に行こう」


「解放軍? 時々その言葉出てくるけど解放軍ってなんなんだ?」


 レオも解放軍だと勘違いされて殺されかけた。

 スキンヘッドの男やミカオの話の中にも出てくるがレオは解放軍が何なのか知らない。


「本当に何も知らないのね」


「ごめん……」


「いいのよ。でも不思議な人。解放軍っていうのは獣人たちの集まりのことなんだ。奴隷にされている獣人の解放や人間に脅かされないで暮らせるように獣人たちを集めたりしてるんだ」


「なるほど。獣人を解放してるから解放軍なのか」


 解放軍の多くは獣人で構成されている。

 けれど一部の人間も考えに賛同して獣人たちの解放や自由のために解放軍に参加している。


 レオはそんな解放軍に参加している人間だと思われたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る