本格的モフ行為3

「ミカオ、ここから逃げよう」


 レオもミカオもここにいて良いことなどない。


「私レオと一緒に行く!」


「行こう!」


「うん!」


「アイツらはまだ戻ってきてないの?」


「戻ってきてないよ」


「じゃあそのまま出ても大丈夫だな」


 開け放たれたままの牢屋から出て一階に上がる。


「外は夜か……」


 ミカオが来たということから分かっていたけれど窓から見える外は真っ暗だった。

 ただ人目を避けて逃げるのにはちょうどいいかもしれない。


 ケモッ娘と2人で逃避行。

 全男子の憧れではないか。


「あっ、待って」


「なに?」


「私、良いもの知ってる」


 ーーーーー


「くそっ! 解放軍奴ら!」


 家に帰ってきたスキンヘッドの男は苛立ちを椅子にぶつける。

 蹴り飛ばされた椅子が壁にぶつかって壊れる。


「おい、ミカオ!」


 解放軍がいると聞いて行ってみるとハズレだった。

 正確にはいたようなのであるが少し顔を見せてすぐに引いてしまったようだった。


 目的は分からないが陽動のようなものか、あるいはコケにされたかである。

 苛立った表情のままミカオを呼びつけるスキンヘッドの男。


「……チッ、アイツ!」


 呼んでも来ないミカオに対してスキンヘッドの男は盛大に舌打ちする。


「ミカオ、どこにいやがる!」


 グレーシオはこのまま無視していたらミカオは殺されるかもしれないなと思った。


「グレーシオォ!」


「は、はい!」


 奥の部屋に行ったスキンヘッドの男の怒号にグレーシオは飛び上がりそうになりながら駆けつけた。


「こ、これは……」


「今すぐミカオを探せ! ……解放軍の男はアイツはいるのか!」


 部屋に敷かれていたカーペットが剥がされていた。

 そして部屋の真ん中の床には大きな金庫が埋め込まれている。


 しかし金庫の扉は開いている。

 金庫の中は空。

 

 まるでゆでだこのようにスキンヘッドの男の頭は怒りで真っ赤になっている。


「解放軍の男も……ミカオもいません!」


 地下牢を見てきたグレーシオが真っ青な顔をしてスキンヘッドの男に報告する。


「ああああああっ!」


 スキンヘッドの男は近くにあった椅子を持ち上げ、お酒を並べている棚に投げつけた。

 いくつものお酒が割れてアルコールの香りが部屋に広がる。


「……どうやって!」


 金庫のことはグレーシオも知らない。

 そしてカギはスキンヘッドの男が肌身離さず持ち歩いていた。


 犯人として考えられるのはミカオなのであるがミカオがどうやって金庫の存在を知り、カギを開けたのか分からない。


「まあいい、逃げても首輪がある」


 スキンヘッドの男の右手に魔法陣が浮かび上がる。

 このまま逃げるなら金属の首輪にかけられた魔法がミカオの体の自由を奪い取る。


 絶対に戻ってくるはずだと魔法を発動させようとした。


「あ、あの……」


 しかしいくら魔法を発動させようとしても何の反応もない。

 そこにグレーシオが震える手で金属の首輪を差し出した。


「ち、地下にこんなものが……」


 それはミカオの首につけていた首輪だった。


「なんだと……」


 首輪を受け取ってみると確かにミカオにつけていたもの。

 けれどもかけていた従属の魔法は跡形も無くなっている。


「どうなってるんだぁ!」


 スキンヘッドの男は首輪を床に投げつける。


「全員呼んでこい……草の根かき分けてもミカオとあの男探し出せ!」


「は、はい!」


「ぶっ殺してもいい! 俺の金とアレを取り戻すんだ!」


 グレーシオは走って部屋を出ていく。


「クソッ……」


 スキンヘッドの男は苛立ちが抑えきれない。

 無事だった酒瓶を一つ手に取って、口の部分をテーブルに叩きつけて壊して酒を飲む。


「アレが解放軍に渡ったらマズイ……なんとしても取り戻さねば」

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