ああ、ケモッ娘2
思っていたよりも栄えていそうな大きな町。
城壁などがあるわけでもなく、見張りもいなかったので普通に町に入ることができた。
「……見られてるな」
町中に入ると意外と人も多い。
溶け込めそうだと思っていたレオだったが周りからの視線を感じていた。
明らかに見られている。
先ほどユーファンを守った件で警戒されているのだろうかと周りを見てみるけれどそんな感じでもない。
どこか物珍しいものでも見ているようだった。
「あっ! なるほど……」
しばらく視線を集める理由を考えてようやく分かった。
服装が周りと明らかに違うのである。
レオの服装は何故か転生前のものと同じだった。
ナイフで開けられた穴はないけれど、この世界の人の服装と比べてみると浮いてしまっている。
これは盲点だったなと少し苦い顔をする。
だがお金もないので服を買うこともできない。
仕方ないので目立ちにくいように道の端を歩いて町中を散策してみることにした。
「こうした異世界ってやつは大体冒険者とかって仕事があると思うんだけどな」
レオが見ていたのはケモッ娘系同人誌ばかりではない。
ケモッ娘が出てくるWeb小説なんかも見ていたりする。
そうしたものはファンタジージャンルのものも多いので異世界のお話なんてものも結構ある。
魔力があって魔法がある。
そして魔物というものもいると聞いているから魔物に対抗するための仕事で稼ぐような職業があるはずなのだ。
やや未熟なレオの知識では冒険者になればなんとか食いぶちぐらい稼げそうだと楽観的に考えていた。
「おい、あいつだ!」
そういえばなんとなく店なんかの文字も読めるなと思っていたら先ほど倒した男たちがレオを見つけて大声を上げていた。
「げっ、ちょっと不味そうかな?」
状況的にあまり良くない。
先ほどユーファンに軽くモフポイントを回復してもらったとはいえ、腕を軽く吸わせてもらったぐらいでは2ポイントしか回復しなかった。
男たちを倒したときに使ったのは5ポイントで全くたりてもない。
その上男たちは3人だけではなく、声を聞きつけてさらに何人か駆けつけてきていた。
仮にモフポイントが潤沢でも人数差があっては勝てるか分からない。
「こういう時は……!」
「逃げたぞ!」
「追いかけろ!」
どう見ても話し合いで解決する雰囲気ではない。
勝てないのに馬鹿正直に相手が来るまで待つこともない。
レオはその場から逃げ出した。
男たちはそれを見てレオを追いかける。
『モフポイントを1使い、身体能力を強化します』
レオは少ないモフポイントから身体能力を強化した。
ケモッ娘に捕まるなら本望であるが人間の男に捕まるなど勘弁願いたい。
町のこともまだほとんど知らないので適当に走る。
男たちはしつこくレオを追いかけてきて、なかなか振り切ることことができない。
「なんなんだよ……うっ!」
チラリと後ろの男たちを確認して前を向いたレオの視界に避けようがないほど近くにある棒が映った。
顔面を棒で殴られ、レオは回転するように倒れて背中を地面に打ち付けた。
「手間かけさせやがって」
ぐるぐると逃げ回っている間に男の仲間に先回りされていた。
「縄で縛って連れてくぞ」
薄れゆく意識の中で男たちに囲まれたことをレオは感じていた。
ーーーーー
「起きろ!」
「うっ!」
パシャリと頭から水をかぶせられてレオは目を覚ました。
鼻は痛いし水は冷たいしで最悪の目覚め。
「よう、ねぼすけ。調子はどうだ」
ぼんやりとした視界が定まってくるとレオは目の前に男が座っていることに気がついた。
綺麗に剃り上げたスキンヘッドの目つきの悪い男は椅子の背もたれにアゴを乗せてジッとレオの顔を見ている。
明らかに悪人面である。
体を動かそうとして椅子に縛り付けられていることにも気がつく。
「うちのもんが世話になったようだな。まあそれはいい。たった1人に負けるマヌケどもがどうなろうが知ったことではないからな」
ならどうしてこんなことするんだと聞きたいところであるが、下手に口を挟むと危ない雰囲気を感じたので押し黙る。
「問題は……あんたが獣人を助けたってことだ」
スキンヘッドの男は立ち上がって椅子を横にどける。
「ぐっ!」
「お前、解放軍だな?」
スキンヘッドの男はレオの首を手で掴んだ。
縛られているので抵抗もできない。
みるみると手に力が入ってレオは呼吸もできなくなる。
「解放軍があんなところで何をしていた?」
「……し、知らない」
絞り出すようにレオが質問に答える。
レオはこの世界にきたばかりで当然解放軍なんてものは知らない。
「ふん、口を割らないか」
スキンヘッドの男はニヤリと笑う。
そう簡単に口を割るとは考えていないからである。
「グレーシオ」
「はい」
「少しお話しして差し上げろ」
「分かりました」
スキンヘッドの男は再び椅子に座り、後ろに控えていた大男に命令を下す。
レオにもお話しがただのお話しでないことは分かっていた。
グレーシオがレオの倍はありそうな拳を振り上げて顔を殴りつける。
「……拳でのお話しは好かないな」
「なら早く話せばいい。だがそちらがお話ししないのならグレーシオの拳はお話ししたくてたまらないようだ」
もう一度グレーシオがレオを殴りつける。
遊びではない本気の殴打。
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