モフを守りし王となる〜MPのMはモフのエム〜
犬型大
第一章
変態か、あるいはケモッ娘の王か1
ケモッ娘が 助けを呼んでる 声がする。
「誰か助けて!」
「誰もこねぇよ! 来たところでお前なんか助けてくれるやつはいない!」
『パッシブスキル:ケモッ娘ヒーローが発動
身体能力が向上します』
レオは走り出す。
姿もまだ見えていないのに助けなければならないと本能が叫ぶ。
見知らぬ場所だがレオはただ何かに導かれるように声の方に向かう。
頭の中で聞こえてくる不思議な声はとりあえず無視することにした。
「痛い……放して!」
走っていくと3人の男たちが見えた。
「お前ら!」
「なんだ?」
男たちの隙間から見えたものにレオは怒りに駆られて声を上げた。
振り返った男たちの一人を殴り飛ばしながら横を通り抜ける。
「大丈夫かい?」
「あ、あなたは……」
男たちの隙間から見えていたのは頭の毛を掴まれている女性の姿。
しかしただの女性ではない。
全体的な体の形は人間と大きく変わりがないのだが女性には毛が生えていた。
髪の毛だけではない。
体から顔に至るまで真っ黒な毛に覆われている。
さらには顔の形も普通の人と異なっている。
鼻から口にかけて前に突き出している。
例えるなら犬のような顔の形をしているのだ。
「誰だお前!」
「なぜ獣人を庇う!」
そう、彼女は獣人なのであった。
「俺か? ……名乗るほどの者じゃない。ただケモッ娘を守るためにここにいるだけさ」
「はぁ? なんだこいつ」
ふっと笑うと髪をかき上げるレオ。
今ここで名乗ることにはなんの今もない。
大事なのはレオがケモッ娘側の人であるという事実のみ。
レオが今ケモッ娘を愛すべきケモッ娘を守ろうとしているということだけが大事なのだ。
「獣人を庇い立てするなら容赦しねぇ! やっちまうぞ!」
男たちは苛立ちを隠そうともせず舌打ちするとレオに襲いかかった。
体が軽い。
怖いけどケモッ娘のため今ならいけるかもしれないとレオも拳を握って立ち向かう。
「よしっ!」
男のパンチを見切ったレオはそのままお返しに拳を男の顔面に叩き込んだ。
「なんだぁ? 虫が止まったみたいなパンチだな」
「なに……ぐっ!」
確かな手応えはあった。
しかしレオの拳は男にほとんどダメージを与えられることができずにいた。
男がレオの腹を殴りつけ、レオは派手に地面を転がる。
「こいつ……体に魔力もまとわないでマトモに相手になると思ってんのか?」
「なんだ、さっきのも痛くねぇと思ったらほんとにただ殴っただけなのかよ?」
「舐めてんのか……それともこいつ魔力ねぇのか?」
「はは、魔力も突っかかってきたのか?」
「う……く……」
「獣人を庇おうとしたり……バカな野郎だな!」
「うっ!」
腹部を押さえるレオの頭を男が蹴り飛ばす。
「魔力……」
魔力がないから攻撃が効かない。
蹴られてグワングワンとする頭でレオは考えた。
「魔力……そうか……」
「おい、大丈夫か!」
全く役には立っていないが助けようとしてくれた相手ではある。
黒い犬のケモッ娘が倒れたレオに駆け寄って抱きかかえて顔を覗き込む。
「魔力……MP……モフポイント……」
「何を呟いてるんだ? あんた人間なんだから私のことなんて放っておけばいいのに……」
「そうはいかない……助けるを求めるケモッ娘を、俺は放っておけないんだ。ただ君を助けるために君に助けてほしい」
「何か私にできることがあるのか?」
「済まないな……」
「えっ?」
レオは手を伸ばして黒い犬のケモッ娘の頭に回す。
そしてそのまま自分の方に強く引きつけた。
「なんだあいつ、獣人とキスしてるぞ!」
男たちはひどく不愉快なような目でレオの行動を見ている。
レオは黒い犬のケモッ娘の頭を引き寄せ、レオもまた迎え受けるように頭を上げた。
側から見ればまるでキスでもしているようだった。
(違う……)
だがレオがしていることはキスではなかった。
「スゥーーーー!」
レオは黒い犬のケモッ娘の首元に顔を寄せて大きく息を吸い込む。
犬吸いである。
『ケモッ娘をモフりました。
互いに同意がないモフです。強制的なモフに大きくモフの充足が損なわれます。
モフポイントが5回復しました』
「君は甘い香りがするんだね」
「なっ……!」
「いでっ!」
急に気持ち悪いことを言われて黒い犬のケモッ娘はレオを突き飛ばした。
においを嗅がれることだって突然だったから呆然としてされるがままだったが、受け入れられることではない。
「ふぅ〜」
レオはゆっくりと立ち上がった。
体に力がみなぎっている。
「体に魔力をまとう……」
『モフポイントを2使い、身体能力を強化します』
「何気持ち悪いことやってんだよ!」
獣人とキスをするなんて異常だ。
男が怒りに任せて拳を振るう。
「モフを愛でるのは気持ち悪いことじゃない!」
より体が軽くなった。
レオは男の拳をかわすと先ほどと同じように顔面に拳を叩き込んだ。
どうせ痛くないだろう。
そんな風に思っていた男は回避するつもりもなかった。
「ミーゴ!」
しかし今度の拳は男のことをぶっ飛ばした。
鼻が潰れて血を噴き出しながらゴロゴロと後ろに転がっていき、地面に倒れたまま動かなくなる。
地面にゆっくりと鼻血が広がっていく。
「この野郎!」
残りの2人のうち1人がレオに向かって手を突き出した。
「獣人の味方をする奴なんか殺してやる!」
男の手に赤い光が集まって、炎に変わる。
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