大文字伝子が行く281

クライングフリーマン

50年かけた愛

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。


 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。

 中津敬一警部・・・元警視庁捜査一課刑事。現在は警視庁テロ対策室勤務。興信所を開いている、弟の中津健二に調査依頼をすることが多い。


 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 久保田嘉三管理官・・・EITO元司令官。柴田管理官と交替で人質交渉人を勤めることもある。警視庁テロ対策室とEITOの橋渡しを行う。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。


 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 高坂(飯星)満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。


 筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 原田正三警部・・・元新宿風俗担当。警視庁からのEITO出向。


 須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。EITO東京本部武術顧問。

 矢田浩一郎・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。


 渡辺道夫・・・警視庁副総監。あつこの叔父。

 市橋早苗・・・現・内閣総理大臣。移民党総裁。

 御池花子・・・東京都知事。

 橘藤兵衛・・・陸自の陸将。なぎさの叔父。

 池上葉子・・・池上病院院長。

 本庄まなみ・・・本庄病院医師。

 真中瞳・・・池上病院看護師長。


 小田祐二・・・やすらぎほのかホテルチェーン社長。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。宅配便ドライバーだったが、小田社長に見込まれ、慶子と結婚、やすらぎほのかホテル東京支配人に。

 依田(小田)慶子・・・叔父である小田社長の秘書をしていたが、依田と結婚、やすらぎほのかホテル東京副支配人に。

 高峰圭二・・・みちるの姉婿に当たる。元警視庁刑事。今は、先輩刑事が立ち上げた警備会社の社員。EITOに協力することが多いので、DDバッジを携帯しているが・・。

 下田・・・高峰の同僚。元陸自隊員。

大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

物部(逢坂)栞・・・伝子の大学同級生。介護士の資格を持つ。


 ※他に、エマージェンシーガールズ、EITOガーディアンズ。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 == EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズの後方支援部隊である。==


 午後1時。やすらぎほのかホテル東京。披露宴会場。

「どうか。50年かけて熟成した愛の形に、今一度ご声援の拍手を願います。」

 今日は、小田社長自らがMCをしていた。

 新郎天童晃と新婦須藤桃子は、惹かれ合いながらも、50年の月日が流れた。

 EITOで再会した2人は、50年前の『誤解』と、『変わらぬ愛』を確認した。

 そして、漸く結ばれた。結婚届は既に出してあり、須藤は天童と同居している。

 だが、やはり女だ。結婚式はあげさせてあげたい、と伝子は依田に用意をさせた。

 キャンセルが出たので、挙式も披露宴も用意出来たが、天童は一昨日、狙撃されている。池上院長の気遣いでドクターヘリが用意され、池上病院のヘリポートから、ホテルのヘリポートに天童は移送された。

 万一の為、本庄病院の医師まなみが出席し、高坂看護官も出席した。

 天童は車椅子に移され、以前『身障者のための結婚式』の実績を持つ、やすらぎほのかホテル東京では、天童の為に、マジックテープで着せられる式服セットや肌着が用意された。点滴はもうしていないが、三角巾は痛々しい。

 介護士の資格を持つ大文字綾子、物部栞も着付けを手伝った。

 来賓として、副総監、陸将、総理も出席した。御池都知事も駆けつけた。

 噂を駆けつけたマスコミが取材を申し込んだが、全て却下された。

 天童達新郎新婦の席に一番近い席に田坂、安藤、浜田、矢田が座っている。

 新郎側の参列者は、ほぼEITO関係だが、新婦側は、1人もいない。須藤が拒否したからだ。唯一親しい高坂や飯星は、看護を兼ねて、新郎新婦の後ろに控えている。

 今回は、ヤクザの下っ端がヒットマンだが、どこで狙われるか分からない。

 例によって、中津興信所の面々が、要所で張り込みをしている。

 高峰の警備会社も駐車場の応援の名目で、見張り、いや、見回りに入った。

「高峰さん、ホントに出ますかね?」「出ますかね?幽霊やお化けじゃないでしょ。人間ですよ。ビビってるんですか?下田さん。」

 高峰は下田と歩きながら話していた。

「一昨日、ダークレインボーと闘った、大文字さんの『カン』ですからね。ピスミラっていうエイラブ系の組織が、どの程度EITOのことを知っているか分からない。下田さんが元陸自だからこそ、私の知ってるEITOのことお話しているんですからね。ホントは機密情報、守秘義務なんですよ。ピスミラっていう組織は、資金集めには殺人も厭わない組織らしい。ウチの会社にEITOに応援依頼してくれるのも、私を含めて元警察官が多いからです。普通、警備員は人手不足だから、って誰でも雇うでしょ?」

「ウチは頼りにされているんですね。分かりました。武装していても、私は柔道が出来るから大丈夫です。」「よろしくお願いいたします。」

「このビル。いつの間にか廃ビルになったんだなあ。こういうビルの屋上からなら、ライフル持って狙撃しやすいのかな?」

「ちょっと、行ってみますか。屋上へのドアが施錠されていれば、問題なしだし。」

「うん。行ってみましょう。」

 午後2時。廃ビルの屋上。

 2人のカン、は当たっていた。

 物陰から出てきた男に背後から殴打され、気絶したからである。だが、ライフルマンも甘かった。高峰は、警備員の装備以外にDDバッジを持っていたからだった。

 午後2時半。EITO東京本部。司令室。

 理事官は、式場(披露宴会場)に行っていて、司令官は、夏目警視正だけだった。

「警視正。高峰さんのDDバッジが30分以上、動いていません。」

 DDバッジとは、大文字伝子の先輩後輩グループが事件に巻き込まれやすいので携帯させている位置情報発信バッジだ。最初の頃はエリアだけしか特定できなかったが、今はシステムがグレードアップされて、常時ピンポイントで特定出来る。試行錯誤の結果、30分以上、同じ場所にいると(DDバッジが動かない)と本人または本人に連絡が取れる相手に確認することになっている。

 高峰の会社も、それを承知で、EITOから要請があると、無線またはスマホで連絡を取る。

 渡は、夏目の指示より前に、高峰の会社に連絡を取った。

 暫くして、連絡が返って来た。「無線もスマホも通じません。スマホは電源を切っているようです。」

「渡。場所をEITOガーディアンズに連絡しろ。草薙は、大文字君に連絡だ。」

 午後3時。廃ビル屋上。

 遠くに、やすらぎほのかホテル東京が見える場所だ。

 ビルの屋上に、急旋回でホバーバイクが上がってきた。筒井のホバーバイクだ。

 ホバーバイクとは、民間会社が開発、EITOが採用して運搬や戦闘に利用している、『宙に浮くバイク』だ。

 筒井は、いきなり、ホバーバイクからライフルマンのライフルと、ライフルを握った手をフリーズガンで撃った。フリーズガンとは、文字通りの冷凍銃だ。EITOは銃火器の携帯やナイフの携帯を許可されていない。警察でも自衛隊でもないからだ。その代わり、オリジナルの、変わった武器が多い。フリーズガンは変わった武器ではない方だ。

 筒井は、すぐにホバーバイクから飛び降り、ヌンチャクで相手を倒した。

 そして、長波ホイッスルを吹いた上で、インカムからオスプレイを通じて本部に連絡した。

 長波ホイッスルとは、犬笛に似た、特殊な笛で、簡易通信連絡に用いる。

「こちら、筒井。廃ビルになった三宅ビルのライフルマンを捕獲。」

 EITOは警察と違って、『私人逮捕』は出来ても、連行取り調べなどは出来ない。そのために長波ホイッスルを用いて警察にリレーする。長波ホイッスルを受信したオスプレイは警視庁にリレーして、最寄りの警察官が『公人逮捕』に向かう。連携した逮捕なので、110番通報などはしない。

 因みに、『捕獲』は警察用語ではない。伝子が言う『悪い趣味』だ。筒井警部は、警視庁からの出向だが、いつしか、そんな『冗談』を言うようになった。正確には『確保』である。

 間もなく、愛宕警部が率いる『片づけ隊』がやって来た。

『片づけ隊』は、伝子が名付けたあだ名で、駆けつける警官隊に正式名はない。

「筒井さん、大文字先輩のカンが当たりましたね。やっぱりピスミラでしょうか?」

「うむ。自殺しようとしたから、ハンカチ噛ましといた。愛宕。やっぱりと言えば・・・だな。」

 筒井が、含んで言ったのは、警視庁管内のスパイの存在だ。

 須藤桃子医官は陸自の人間だが、天童晃は、一般人だ。EITO準隊員待遇ではあるが、彼が武術師範であることは公にはされていない。週刊誌記者が取材を申し込んで来た、というのは、あり得ないことなのだ。来賓が決まったのは直前で、取材の申し入れがあった後である。本来なら、副総監も総理も知事も来ない結婚式なのだ。

 伝子は、闘いの後だから隊員に休息を与えたいが、いつ何時のことがあるか分からないから、バックアップを整えた上で式披露宴を敢行させた。

 筒井は、伝子の元カレであるが、今は指揮官と部下の関係だ。

 筒井は伝子に友人関係としての会話をするが、上司として尊敬している。

 こんな優秀な指揮官はいない。

 彼女を取り巻く人間関係は多岐に亘る。今や、『後輩思いの先輩』だけではない、『畏怖』から尊敬に変わった、反社や敵幹部も味方にする、強烈な個性には、肩書きや階級など必要無い。

「何者だ?」と問われた敵に「平和への案内人」と臆面も無く言えるのは、それだけの貫禄があるからだ。

 今や、一児の母でもあるが、最大限の自己犠牲を強いてまでEITOに奉職している。

 将来、EITOの総合司令官になっても、誰も文句を言わないだろう。

 気がつくと、愛宕達もライフルマンも消えていた。

 原田のホバーバイクが上がってきた。

「先輩。他の所には狙撃手は現れなかったようですね。新婚さんは、このまま泊まるそうですね。」

 そこに、伝子の乗るホバーバイクが上がってきた。エマージェンシーガールズのユニフォームを着ている。

「今日は、闘いはお休み、じゃなかったのか?総合隊長さん。」

「たまには、『おそと』の空気も吸いたいのだよ、元カレの筒井くん。」

 原田が唖然としているのを見て、伝子はわざと言った。

「知らなかったのか、原田。私に『セ〇クス』を教えたのは、こいつだ。」

 原田は、気絶した。

 ―完―


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