ジャンプ組曲

原寛貴

ギア1 ロマンシングサド

「海賊王に……おれはなる‼」

 高らかにどこかで聞いたような台詞を爆発させるのは、マンコ・ポーロだ。マルコ・ポーロではなく、マンコ・ポーロだ。ルではなくンだ。いきなり下ネタを言うなと思うかもしれないが、これが彼女の名前なのだから致し方ない。マンコは金髪ショートに修道服という、ルフィのイメージからかけ離れた容姿をしている。原寛貴作品によくいる、ナイチンタイプのキャラだ。

「よし、まずは仲間集めだ。10人は欲しいなあ」

 それは前の台詞の前に言っておくべき台詞だろう。順序が逆転裁判だ。海賊が裁判で逆転できる訳がないだろう。海賊版の逆転裁判でも海賊が被告人になることはない。上手い。

「まずはゾロが欲しいなあ」

 何で指名しているのだろうか。欲しいからといって貰えるものでもないだろう。

「ゾレト?」

 ゾレトが来てしまった。ガチャ的には外れだ。しかし、されど一人目だ。マンコ海賊団の。マンコの一味の。剣士だ。剣豪だ。戦闘員だ。

「よし、ゾレトさん。ロマンシングサドに行きましょう」

「ロ、ロマンシングサド⁉ 海賊の墓場、新潟の孤島ですよ⁉」

 海賊の墓場は分かるが、新潟の孤島だと何か悪いのだろうか。赤坂アカの出身地ではないか。しかし、赤坂アカの作品には郷土愛を感じるものはなく、新潟県民からそこまで親しまれていない。推しの子がヒットしなかったら赤坂アカなど、新潟の恥でしかなかっただろう。新潟のごみでしかなかっただろう。岡山のごみさんみたいになった。彼女はまだ漫画を描いているだろうか。

「金山にある宝を手に入れる」

 ロマンシングサドなどと大それたネーミングの割に、金山の宝とは捻りがない。

「ゴールドマウンテンサド⁉ あそこには金狼がいますよ‼」

 ゴールデンカムイなのかドクターストーンなのか。銀山もあるならそこには銀狼がいるのだろうか。まあいたとしても金狼の方がボスとしては格上だろうが。名前的に。

「ああ、俺とお前なら余裕だろ?」

 急にルフィスイッチが入るから困る。それほどまでにルフィという主人公は、我々の人格に深くゴムゴムの銃乱打を捻じ込んできたのだ。

「無理ですよ‼ むりむりむりむりかたつむりですよ‼ むりむり‼」

 無理しか語彙がないのだろうか。ゾロかと思ったら完全に初期のコビーではないか。マンコもナイチンではなくほぼルフィだし。

「大丈夫です。神のご加護を信じるのです」

 急にナイチンスイッチが入るから困る。しかし、ナイチンはこのようなことを言うキャラクターだっただろうか。ここまでコテコテのシスターキャラでもなかった気がする。

「はいー♨」

 やすこになってしまっている。ゾレト君やすこになってしまっている。余談だが、やすことよしこは名前が似ているから混同しがちだ。そもそもこの作品は余談だらけだし、やすことよしこを混同するのも作者くらいだとは思うが。

「ゾレトさん」

「何すか?」

「ちょっと太った?」

「うるせい、知るか」

 軽口を叩きながら、マンコとゾレトはロマンシングサドを目指す。目指すといっても、まずは船を手に入れなければならない。そう、夜桜家全員が乗れるくらいの船を。上手い。どれほど残酷な運命ちゃんでも、マンコとゾレトを止めることは出来ない。運命ちゃんがいくら攻撃してきても、それらは決して留まることはないのだから。上手い。

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