第17話 アジトの人達


なんとも形容し難い感覚に戸惑っていると、戸棚を整理していた女性と先程から今にかけてもずっとゲラゲラ笑い続けている女性がこちらに近づいてきた。


「そんな顔するのも無理ないわ。どうせまた団長さんが強引に引っ張ってここに連れて来ちゃったんでしょう?」

「もう〜ブラッドちゃんってば、前にも女の子には優しくしてねって教えたばっかりなのに〜!まぁ、すっごく面白かったけど〜!」

「そう責めるなて。あと、ちゃんとニコラちゃんには許可取ったよ。」


いいえ、アジトには行くとは言いましたが裏路地を爆走し、更にはマンホールの下に滑り落ちる事は許可していません。

なんて、そんな言葉を言える筈もない。言いたい気持ちは山々だが、混乱している今の頭ではそれすらも面倒だ。沢山走って沢山情報を詰め込まれて身も心も疲れてしまった。


「この様子だとこの団体の説明もまだっぽいわね。」

「ロマン戦士団ではないって事はちゃんと伝えてあるよ?」

「当然だよ〜!あんな奴等と一緒にされたらたまったもんじゃないもん〜!」

「分かった分かった、ちゃんと説明するから!二人共ニコラちゃんにお茶出してあげて。あ、自分は茶葉濃いめで、お茶菓子は甘い物がいいな。」

「それブラッドちゃんが食べたいだけだよね〜?」


あれよあれよと言う間にお茶とお茶菓子の用意が始められた。

どうするべきなのかとオドオドしていると、先程までソファに座って本を読んでいた青髪の男性が立ち、お客様用なのであろう綺麗目の座布団をその場に敷くと、ニコラに座る様にと施してくれた。


「あ、その、そんな!」

「僕の座った後でごめんね。でもここでまともな椅子はこのソファしかないから我慢してほしいな。」

「いいえ!誰かの座った後が嫌とかじゃなくて、折角本を読んでいらしたのに邪魔をしてしまって……!」

「気にしないで。この本はもう五回は読んだ後だから。」

「は、はぁ……。」


ここまで言われて断り続ける方が失礼だろう。ペコリと頭を下げると恐る恐るソファに腰掛けた。すると自然と彼の正面に座っていた黒髪の男性と向かい合う形になる。

当然と言えば当然だが、向かい合って座ってしまうと嫌でも目が合ってしまう。バチリと視界に入ったその真っ黒な瞳の深さに思わず目を逸らしてしまいそうになったが、こちらが逸らすよりも彼が立ち上がって壁際へと移動するのが先だった。

あからさまに避けられたと少しショックを受けたが、その後彼と入れ替わる様にドサリとブラッドが座ったので、恐らく避けたというよりも彼に席を譲ったというのが正しいのだろう。


「ちょっと〜、別に壁に背ぇ預けんでも少し詰めれば一緒に座れたじゃんか〜!」

「貴方と隣同士に座るなんて御免なんで。」

「相変わらず冷たい男だなぁ〜……ごめんねぇ、ニコラちゃん。彼、グレイっていうんだけど、口数少ないし女の人にモテないけど悪い人じゃないんよ?」

「モテないとか小粒のアンタに言われたくないです。」

「撤回するわ、アイツめっちゃ悪い奴だから関わらん方がいいよ。」

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