3匹のポケモンの内、どれを選ぶべきかを話し合って下さい。

@asashinjam

5人の父親と3匹のポケモン

国内最高学府への進学率国内№1有名進学塾の大城戸塾。

入れば余程の事が無い限り国内有数の学校に入れるだけあって月謝は恐ろしく高い。

まさに富裕層御用達の塾なのだが、 この塾には特待生枠がある。

この特待生枠に入れば塾費は全額無料になると言う圧倒的な価格破壊を実現している。


当然ながら誰しも特待生枠に入りたいと我も我もとやって来る為

選抜をしなければならない、 大城戸宿では父兄と子供達に面接を行い

面接を考慮して特待生枠を勝ち取るのだ。




(てっきり子供と一緒に面接受けると思ったんだけどな・・・)


クラブマネージャーの金崎は少し戸惑いながらも案内された部屋で待機していた。

我が子は別の場所で面接を受けている。

如何やら子と家族は個別で試験を受けているらしい。


(母親も来ている所も有るな・・・俺一人だけで来たのは失敗か?)


そう考えながらも待機室で待っていた金崎。


「金崎さーん、 面接室へご案内します」


係の者に呼ばれて面接室に通された、 そこには4人の男が既に待っていた。

やや覇気の無さそうな男、 ガタイの良い男、 人当たりが良さそうな男。

この3人はそれぞれタイプは違うがスーツを着ていた。


だが一人だけ作業着の男が頭を抱えて座っていた。

明らかに場違いである。

金髪でピアスまで開けている。


(そういえば服装は貴方らしい恰好とか言ってたな)


前もって渡された資料には『服装は自由』と書かれていたが

まさか真に受ける奴が居るとは・・・


「どうぞ」


そんな事を想っていると面接官に着席を促された。


「失礼します」


金崎は椅子に座った。


「では面接を開始します、 まず自己紹介をお願いします、 着席したままで結構ですので

まずそちらから」

「はい、 金崎 サトシです、 よろしくお願いします」

「白井 ヒカリです、 年収は妻と合わせて800万円有ります」


覇気の無さそうな男が自慢を含めて言った。


「緑谷 シゲルです、 年収は言った方が良いですか?」

「何方でも結構です」

「そうですか、 では控えますね」


ガタイの良い男は思いのほか大人しく着席した。


「灰田 ヒロキです、 普段は営業をやっております」


にこりと人当たりの良い男は笑った。


「・・・・・青葉 ジャック」


作業着の男がこの世の終わりの様に言った

この中で一番派手な髪だが明らかにうんざりしている。


「服装は自由ですので気落ちせずに」

「すんません・・・気を使って貰って」


青葉は若干泣きそうになってる。


「では次に何故我が塾にお子さんを入塾させようと思ったのか志望動機をお願いします

金崎さんからお願いします」

「はい、 私の息子が良い高校に入りたくて良い塾に入れようと思いここを選びました」

「え? 高校?」


青葉が口を出す。


「大学受験の為に入塾させたかったんだけど? 部屋間違えた?」

「我が塾に入りたいと言う事でお子さんの年齢は関係無く一緒に面接をしています」

(随分変な事をするな、 普通は子供の年齢別にするんじゃないのか?

・・・・・いや、 待てよ)


金崎は4人の父親を見る、 良く見ると自分と同年代位だろうか?


「私は子供には若い頃から勉強をさせて東京大学に入れようと思っているんです」


白井が鼻息を荒くしながら言った。


「私も子供にはいい学校に入れたいと思っています、 まだ小学生ですけどね」


緑谷が言った。


「子供の頃に入った塾でカツアゲやらをしているのを見ましてね

治安の良い塾に入れたいと思いましてここを選びました」


灰田が笑って言う。


「えーっとですね、 ウチのガキ、 いや息子がですね

大学生になりてぇって言いまして、 それで塾に通いたいって言って

色々調べたらここの特待生って言うのがタダで通えると聞いたので応募しました」


もう何もかも駄目じゃないのかコイツと周囲から見られながら青葉は言った。


「はい、 では質問を続けます」


その後、 金崎達は質問を幾つか投げかけられた。

子供の勉強時間や遊ぶ時間、 睡眠時間等の子供の質問から

自分達の子供時代についての質問。

職業等の質問は予め書類に書いて提出したのでもっとプライベートな事を尋ねられていった。



「はい、 では質問は以上です、 最後にグループディスカッションを行います」

「グループディスカッション?」


青葉が聞き返す。

グループディスカッションとは複数人で特定のテーマについて討論する事である。

企業面接の一環で行う事は有るが塾で行うとは珍しい。


「後ろにホワイトボードや長机等やノート等の筆記用具がありますのでご自由にお使い下さい

また、 役職は必要ならば自由に決めて下さい、 最後に代表者が発表して下さい

制限時間は1時間ですが1時間より早く決まったらその時点で発表して貰って構いません」

(1時間より早く決まったらその場で発表?)


またしても妙なルールである、 そもそもグループディスカッションで1時間は長くないか?


「今回のグループディスカッションの議題ですが

【ポケットモンスター 赤で最初に選ぶポケモン

フシギダネ、 ヒトカゲ、 ゼニガメの3匹の内、 どのポケモンを選ぶべきか】です」

「「「「「え?」」」」」


5人の父親は聞き返した。


「もう一度言います

【ポケットモンスター 赤で最初に選ぶポケモン

フシギダネ、 ヒトカゲ、 ゼニガメの3匹の内、 どのポケモンを選ぶべきか】です

この3匹の内にどれを選ぶかを話し合って下さい」

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