Eastman VL80

オッサン

2年前の話

以前からバイオリンの演奏をしたいと夢見ていた私は、思い切って購入を決断した。

インターネットで検索しても値段の高さに決心がつかなかったのだが、とうとう注文してしまった。それは2年前の冬だった。

私は音楽の勉強などほとんどしたことがなく、楽器の経験もまるでない。そんな人間が悩んで悩んで迷った挙句にとうとう買ってしまった。

Eastman VL80 4/4 というモデルだ。

弓とハードケースが付属してお得な入門用ヴァイオリンセット。アメリカで企画設計され、中国の自社工場で製造されたものらしい。4/4と言うのはサイズを表しており、4/4はフルサイズ、大人用のものと言う意味だそうだ。ちなみに小さな子供用は1/4、そこから1/2、3/4と大きくなる。なるほど。

私にとってはとても良いお値段だったが、楽器としては安いものらしい。

だが、そんなことはどうでもよく、楽器が自分の手元にあるというのが現実なのだと思うとたまらなくうれしかった。


購入先は、地元の楽器店。昔は楽器だけではなく、音楽レコードやミュージックテープ、CDなんかも売っていたのだが、音楽配信が始まり、時代の波には逆らえなかったようで、CD販売はいつの間にか止めていたようだ。今は楽器や楽譜の販売と音楽教室に力を入れている。そんな感じなんで、お店に行くのは本当に久しぶりだった。

楽器が届いたとき、松脂と肩当て、クリーニングセットも一緒に入っていた。

必要なものは一通りそろっているみたいだ。とてもありがたかった。


楽器を買ったものの、バイオリンを弾くにはどうしたらよいのだろう。

当時、私は楽器を買うことばかりを考えていた。楽器があれば演奏ができるわけではないという単純なことに全く思い当たらなかったのだ。


わからないことはインターネットで検索すればいい。なんて気軽に考えていた。


当時の私は本当にバカだった。そして今もバカだ。

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