015 世ヲ終焉ヘト誘ウ英雄
「なるほどね、飛んだヘマをしたね。」
「そうなんだよね。」
少しして落ち着く。そして一通りの出来事をトーマは語った。
「全てを知ることができる智天使と全てを書き換えることができる熾天使。この法則性から要するに天使の能力は、何かしらの分野で絶対的な能力。がベースだしょうね。」
「だしょうね……」
「いちいち揚げ足取らないで、馬鹿馬鹿しいわ。」
なんか久しぶりな感じだなぁ、こういうの。
「はい……」
「にしても、能力が使えなくできる現実改変能力は厄介ね。聞くからには、
世界中の富裕層の間で配信されていることを、彼らはこの時まだ知る由もない。
「神々のゲーム第3段の開幕です……見よ、これぞ智天使『ケルビム』。 今こそエルフの姿だが、4つの顔を持ち、8枚の翼を隠している神聖な生物……いや、醜い化け物ぞ。」
画面越しに唖然とする視聴者ら。
実況者と思われる人物は一息吸い、また続ける。
「実は少し前、移動中に襲われ姿を消していた。その襲った厄災は他でもない、この青年なのだ!こいつは氷帝という、神に抗うとされる帝の能力を所持している……全ては必然なのだァ!」
どうやらこの宗教的なモノは神を信仰するもの達による活動の一種のよう。
キリスト教や仏教とかの次元のモノでは無い。それだけは確かである。
すると、配信画面の右上に表示されているバーに動きが見える。
「おっと、ここでスパチャが飛んできました。金額は350ドル……えっと、匿名の方からですね。コメント読み上げます。」
そうして、そのコメントをコンピューターが女性の声で読み上げはじめる。
「エルフトカ男トカドウデモイイカラ、ロリヲ脱ガセロ。」
「なんて非人道的なコメントでしょうか……好きですよ、そういうの。しかし、指示が出せるのは1万ドルからです。」
「お……続きまして5ドル、またも匿名です。」
「ケチナ輩モ居ルモンダナ。」
「……えぇ、自己紹介に感謝します。」
これを起点に、コメントバーは笑いを表す文章のスパチャで絶え間なく流れる。
ここしかないとばかりに、実況者が自身の面白いエピソードを語る。コミュ力は凄まじいものである。
語り続けて30分が経過した頃、雰囲気が変わる。
「ハハハッ……今回も賑やかなですね、さて、脱線しましたがそろそろ指示を。」
一方、神々のゲームの中のトーマ達は……
「それぞれが自身の時間制限を解除しているだろうから、私達に追加されたルールは分身の数……つまり4つ。トーマは
「だろうね。」
「残りの2つ……合理性の面で考えるなら動けなくさせるとか、質問したことを誠に話すとかだと思うけど、無さそうね。」
「ないね。」
「となると、見ものとして扱われていると考える方が良さそうね。エンタメ的なルール……抜け道を与えたってのもこれに当てはまるわね。」
「そうだね。」
「真面目に考えて貰っていい?」
「あ、はい……すいません。」
そうしているうちに、コメントバーは荒れる。
「おっとぉ、ここで来ました!1万ドルジャスト!!えっとぉ……」
「サッサトコイツラノ服ヲヌガセ。」
「ちんけな指示ですなぁ……支払いが済んでる以上、実行しますがね。」
実況者が待機していた黒服らに視線で合図をおくると同時に、彼ら言いなりのロボットのように出動した。
やがて配信画面越しの神々のゲームに黒服5人が突然現れる。
ワープである。
「只今、入場してもらったのは黒服です。1人1人がトップ10ヒーローに入れる程の実力を持っています。」
「なんだ!?あんたらもここにおくられてきたのか?ようこそ!」
「にしては様子がおかしいわよ……?ちょっと!
そして、黒服らは彼らに身を寄せ、
「やめて!!……ッ」
止めに入った
「おい貴様……」
トーマは彼女を殴った黒服に寄りかかった。と同時に、その黒服は腹部を抑えるようにして倒れこむ。
血だ。血が流れている。
視聴者は短気なのか、コメントバーは再び荒れ出す。
「まずは1人。」
「貴方は……」
「
それも、トーマの左手には紫色の氷で創造されたナイフが見えているのだ。怒りを露わにするのも不思議では無い。
「……ったく、荷物検査はしなかったのか?まぁいい……ん!?」
コメントを見て凍てつく実況者。
「紫色の氷……」
そう、ここで世界はことの重大さをその瞳に焼き付くこととなる。
「
能力を駆使する黒服4人に裏を取られない、能力が扱えないトーマの華麗なら激闘の中、実況者は続く。
「日本でエルフを誘拐し、ヒーローを2人殺害した挙句、ブラジルで姿を現し、そこでもヒーローを2人と罪なき国民を10人程無惨に殺したこの男がぁ!……かつて我らが崇め讃えた英雄……オマケに当然浮上した島、ダンジョンもこの男、別名、
荒れ狂うコメントを背景に眺める真紅の髪の女性が小さな笑顔を浮かばせる。
「やっぱり君は面白いね……ルールが間に合わかったら、私は敗れていたのかもしれないな。」
トーマにつけられた切り傷を撫でるように触りながら彼女は続ける。
「さぁ、正体が世界に知れ渡ってしまった訳だけど、君ならどうするんだい?」
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