005 ムー文明ノ眠レル幼女王

 「へぇ。核戦争起きたってのに、意外と残ってるもんだね。」


 「あらほんとね。でもちょっと不気味ね。」


 一息を終えトーマと01ゼロワンは森を抜けた。


 そこには大きなクレーターがあり、そのクレーターの中心には大きく聳え立つ、今にも倒れそうなお城。


 お城を囲うように街ができている。


 「ここが原爆落下地で、その後もここでで街づくりをしたのが分かるわね。案外馬鹿な文明ね。」


 「どうかな、理屈よりも愛を選んだんだと思う。」


 「愛・・・?」


 「うん。死ぬとわかってても生まれて育った愛する故郷。生まれた場所で散る・・・美しいと思わないか?」


 「トーマはそういう厨二病な所あるよね。」


 彼女がそう言うと、トーマは少し頬を膨らませて悲しげな顔をした。


 「ほいっと。」


 2人はクレーターへ飛び降り、お城の方へと街を潜る。


 地面には人の影の跡が無数に残っている。そして全ての建物はそれらを避けるように建てられている。


 「トーマの説が正しいみたいね。焼けた同胞をそのままにしている。」


 さっきまで不貞腐れていたトーマの顔には今や笑みが浮かんでいる。


 サイコパスと言われても仕方がない程に。


 「いい眺めだね、01ゼロワン。」


 「そうね、少し手入れすれば拠点にできそう。」


 「でも人手が欲しいよね。『オベリスク』だっけ?を倒すのにもさ。」


 「うーん、相手が『オベリスク』なら、うちらは『オシリス』でどう?」


 「冥界を司るってやつ?」


 「そう。」


 「いいと思うよ。ぶっちゃけなんでもいいよ。」


 「こっちで人を集めてみるね。」


 「はーい、頼むね。」


 彼らを監視するように、クレーターの外で輪をつくって集まる動物達。しかし、踏み入れようとはしない。


 どれだけ長い年月が過ぎたとしても、ここを生きる生命体は皆、このクレーター内の危険性を遺伝子レベルで記憶している。


 「さっきの巨人は入ってくるかな?」


 「デカすぎてそもそもおさまらないんじゃない?」


 「あ、そっか。そうだよね。」


 すると何処からか、不可解な音が鳴り響く。それは鯨のような鳴き声だが、背筋がゾワッとする程とてつもなく低い音色だった。


 「たまげたな。」


 空を見上げると、遥か上空を飛んで通り過ぎる巨大な生物。


 いや、この形はドラゴンだ。陰になってることもあるが、それは漆黒。


 そのドラゴンと目が合った気がする。何かを警告しようとしているのかもしれない。


 「あの方角は巨人の方ね。」


 「喧嘩か!」


 トーマがドラゴンの進行方向に走り出したとき、01ゼロワンがその袖を掴んた。


 「どうしたの?面白そうやん、行こうよ。」


 「おかしいのよ……」


 「おかしい?……何がだ?」


 彼女は周囲を見渡した。


 「見て、こんなでかい、食物連鎖の王に君臨する伝説上の生物がいるのに、動物達は微動だにしないどころか、気づいてもいないかのようなの。」


 「確かにそれは妙やね。悪かったよ、もう行かないよ。」


 「いい子。さぁ!お城に行こ!」


 「え、待って、城に行きたいだけじゃない!?」


 るんるんスキップする01ゼロワンを見つめて呆れたのか笑うトーマ。


「あれ、なんかイメージと違うな。」


 彼らはお城に足を踏み入れた。


 しかし、外見の割には、内装はほぼない。まるでレプリカのようである。


 「油断しないで、恐らく誰かがいる。」


 「01ゼロワンがそう言うなら。」


 きっと能力使ったんだろうね。ほんと面白みに欠けるというかなんというか……


 「でも、それはそうとして、歓迎されないのもなんか余計に不気味だ。」


 「まぁ、いいんだけどさ。」


 「でもやっぱり、おもてなしはしようよな。」


  「別にいいんだけどさ。」


 「一応お客さんなんだしな。」


 「全然気にしてないからさ……痛ッ!?」


 01ゼロワンはトーマ乗った頭を拳で1発殴ってみせた。


 「うるさい。」


 「イテテ、ごめんなさい。とんがりみみのくせに……」


 さらに強烈な一撃を食らわせ、彼は3メートルは軽く飛ぶことに成功した。


 「ま、参りました……」


 「はぁ、子どもね。行くわよ、登ろ。行く宛て、これしかないし。」


 「へい……にしても、どこまで続いてるだろう、この螺旋階段?」


 「多分たけど、最上階よ。想像するだけで酔っちゃうわね。」


 彼はこの天まで届きそうな螺旋階段を一段一段駆け上がっていく。


 「848…849.…850段目…!」


 「足元に氷柱を創造して一気に登れないの?」


 「というか、翼を創造できるよ。」


 「しなさいよ……」


 「それじゃぁつまらないでしょ?せっかくラスボスが用意してくれたステージ…863……」


 「あ、そう……」


 

 見るからに限界がきている|01(ゼロワン)。でも仕方ない。これもまた僕が彼女に教えられるものの一つ、人生の楽しみ方だ。


 これを乗り越えた時、彼女は少年……いやこの場合は少女か…?の心を見いだすだろう。


 まぁ、実を言うト僕も飽きた。


 うん、いくつかの階級を設定して、上位に登るにつれ強敵なモブキャラをは用意しようよ。


  「やっぱりつまらないんでしょ。」


 「うるさい。」


 トーマは紫に輝く氷の大きく逞しい翼を創造し、01ゼロワンを腰を掴んで羽ばたいた。


 その姿は天に返る天使としか言葉が喉をとおらないものだろう。


 そして、やがて2人は最上階に足を着く。


 そこはまるで映画のワンセットのようである。


 「すごいわ……」


 とてつもなく広く、辺り一面が眩しい程の白に覆われている。


 その奥には、大きなゴージャスなベッドがポツンと存在している。


 「あのベッドで寝てみたい…」


 「え、そこ!?」


 ツッコまずには居られない01ゼロワンだった。


 ベッドを囲う少し赤っぽいヴェールの向こうに見えるは、少女の影。


 「呑気な娘だね。攻められてるというのに。」


 「別にそういう訳でもないでしょ。馬鹿トーマ。」


 「馬鹿トーマ……」


 「とても綺麗な子ね……可愛い。」


 赤髪の幼い少女。


 「ベッドの端にホコリが被っていることから、恐らく長いこと動いてない……でも息はしてるみたいね。」


 「 厄介な能力を持ってしまったかもね。」


 「そうね……」

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