大人運動会

第1話 通知書

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通知書

拝啓 小坪 守様

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

つきましてはこの度、貴殿が第3回 全国大人運動競技大会 鹿児島県代表に選出された事をここに通知致します。

尚、この決定はいかなる理由でも、辞退は認められません。

全日国大人運動競技連盟

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何だこれは。全国大人運動競技大会？？そんな大会に応募した記憶もなければ、存在すら知らない。おまけに勝手に選んでおいて、いかなる理由でも辞退不可とは何とも甚だしい。新手の嫌がらせか？でもだとしたら、誰がどういう目的で俺のポストに入れたんだ。

俺はスマホを取り出し、全日国大人運動競技連盟と検索をかけた。ヒットしたのはどっかの企業が、社内で大人運動会をしたというだけの企業PRのサイトのみ。

くそっ、やっぱりイタズラじゃないか。

フルネームを知ってるってことは、俺自身も知ってるやつか？どこのどいつだ。

自分で言うのも何だが、俺は誰かの恨みを買うような人生は送ってきていない。真っ当に生きてきた。

今日だって、3時間のサービス残業を終え、半ば瀕死状態で帰ってきた所だ。逆に恨みがあるのはこっちの方だ。

俺は通知書をグシャグシャと丸めてゴミ箱に捨てた。

風呂にでも入るか、ゆっくり湯船にでも浸かって早く寝よう。だが、お風呂に入っている間もさっきの手紙の内容が頭の中をグルグル埋めつくしていた。

俺は小坪 守。27歳。鹿児島県志布志市出身。

現在は、鹿児島市内で一人暮らしをしながら、金融系の会社に勤めている。父と祖父は既に他界しており、母と祖母、そして姉が今も実家で暮らしている。弟もいるが今は都内でIT系の会社に勤めているそうだ。

俺の性格は自他ともに認めるTHE真面目くん。

学生時代はとにかく勉学に励んだ。そのおかげもあって、成績優秀な優等生として卒業し、一流企業にもこうして就職することが出来た。

友達もそれなりにいるし、高校生の時には生徒会長も務めたことがある。

唯一の欠点をあげるならば、運動が大の苦手という事だ。いわゆる運動音痴ってやつ。

自慢じゃないが、俺は体育会系の部活はもちろん、文化系の部活にすら所属したことの無い万年帰宅部だ。

足も遅ければ、力もない、おまけにカナヅチときた。俺以外にここまで運動が出来ない奴はいないんじゃないだろうか？いたら教えて欲しいぐらいだ。

そんなやつが鹿児島県代表に選ばれるはずがない。

でも、イタズラだとしても、こんな変な手紙を送る意図が全く分からない。

運動音痴な俺をからかって反応を楽しんでいるだけか？

あぁ、考えすぎて頭が痛い。

仕事の疲れもあり、脳の疲労がピークに達していた。

俺は風呂から上がると、全裸のままベッドに倒れ込んでそのまま気絶したように眠ってしまった。