第27話 レッツ、マジック!(2)
私と翔ちゃんは、観客席のない、細長くて広い運動場のようなところに立っている。ここは、屋敷の地下1階にある訓練場だ。転移の間のあった右側の棟ではなく、左側の棟の地下にあたる。
ラジオ体操を終えた私と翔ちゃんは、じいちゃんの目の前に、ビシッと立っている。
「よーし、まずは魔力の流れを確認するぞ」
「はいっ!」
「はい!」
私は目を閉じ、身体の中を巡っている魔力の流れを感じ取ろうと集中する。
ゆっくりと流れている魔力は、最初は細い流れだったのが、徐々に太く感じられるようになってくる。
これ、同じことをやっても、
「よし、エマは出来てるようだな。ショー、どうだ。これが魔力だ」
私を褒めたじいちゃんは、私の隣に立っている翔ちゃんの両手を握りながら、魔力を流し込んでいるようだ。
初めて
「む……ん、ん? あ、これかな」
「ほお(随分と、感じ取るのが早いな)」
じいちゃんが感心したように声をあげているのが聞こえたけれど、今の私は自分のことで精一杯。
「よし、エマはそのまま、目を開けろ」
身体全体を流れる魔力を意識した私は、じいちゃんに言われた通りに、ゆっくりと目を開けた。
視線の先には、訓練場の一番奥、地面から浮かんでいる円い的が浮かんでいる。弓道の的のように、白と黒の円が描かれているのは、じいちゃんが魔法の訓練用に作った魔道具の的だ。
それも、じいちゃんの上級魔法でも壊れない、とんでも魔道具なのだ。
「エマが得意なのは、火属性の魔法だったか。じゃあ、ファイアーボールをあの的に撃ち込め」
私は火属性も水属性も使えたけれど、火属性のほうが魔法での攻撃のイメージがあったから、得意といえば得意かもしれない。これは、ラノベやアニメ、ゲームの存在が大きいと思う。
私は右手を伸ばして掌を上に向け、「ファイアーボール!」と呪文を唱えた。
音もなく、ぶわっと掌の上に、小さな火の玉が浮かび、シュンッと、勢いよく飛んで行く。去年と違って、最初から小さな火の玉だったこと。
ボンッ
――よし!
的に見事に当たって、思わず小さくガッツポーズ。
「おお、上手じゃないか!」
じいちゃんの誉め言葉に、調子にのった私は、ドンドン続けてファイアーボールを投げ続ける。すべて、命中して気分がいい。
「じいちゃん、僕もやりたい!」
まだじいちゃんと魔力を流す練習をしている最中だというのに、翔ちゃんが声をあげた。私がボンボコ音を立てて魔法を繰り出したものだから、翔ちゃんもやりたくなったらしい。
「そうだな……魔力の流し方は問題なさそうだから、どの属性が向いているか、確認してみよう。魔法を使うのは、それからだ」
一応、翔ちゃんも黒髪に金目だから、私やじいちゃんと同じように、全属性が使えるはずだけれど、その中でも得意、不得意がある。
私の場合は、火と水だったけれど、翔ちゃんはどうなんだろう。
じいちゃんは、運動場の壁に手を触れると、そこに開き戸が突然現れた。
「うわー」
翔ちゃんが驚きの声をあげる。
私も初めて見た時は同じように反応したのを思い出して、クスッと笑ってしまう。
じいちゃんは開き戸の中から、ボーリングの玉くらいの大きさの真っ白い球体を取り出すと、翔ちゃんの目の前に持ってきた。並べたら、ショーちゃんの頭と同じくらいかもしれない。
「じいちゃん、これは?」
「属性判定機だよ」
この属性判定機は、所謂、プロトタイプというヤツ。今ではもっと小型化されたものがあるらしい。
これは、じいちゃんが若い頃に開発した物で、冒険者ギルドや学校など、登録や進学の時に属性の検査をするときに使う物らしい。
じいちゃんの属性判定機が出来る前には、属性判定ではなく魔力の有無を判定する大型の物があったらしい。それは王都の学園に今もあるそうだけど、他の魔道具と一緒に倉庫に所蔵されているそうだ。
私の場合は、10歳で『神の祝福』を受けた後に、じいちゃんの属性判定機で調べてもらった。一応、全属性の反応は出たけれど、中でも火と水が強かった。
ちなみにこの国では、貴族は12歳から王都にある学校に通わないといけないそうだ。
ただ、私と翔ちゃんは魔法伯であるじいちゃんの孫。じいちゃんは貴族だけど、一代貴族? とかいうらしく、私たちは違うのだそうだ。
そもそも、
『
じいちゃんが球体に小さく呟くと、白い球体が掌から少しだけ宙に浮き、透明に変わった。
「ショー、これに両手の掌をかざしてごらん」
「うん」
「その掌から、身体の中で感じた魔力を押し出す感じで、流してごらん」
「……やってみる」
翔ちゃんは口をへの字にしながら、属性判定機へと手をかざし、「ふんっ!」と気合を入れた。
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