第28話 レッツ、マジック!(3)
属性判定機の玉がピカーッと強く光ったので、思い切り目を瞑った私。
「……ふむ。やはり全属性だな」
じいちゃんの満足そうな声が聞こえたので目を開ける。
透明だった属性判定機の玉が、何種類もの色に染まっていた。
一番広い範囲だったのが、緑色。玉の右半分くらいが緑色に染まっている。次に赤と青。茶、白、黒の順で小さい。
属性でいえば、緑は風、赤は火、青は水、茶は土、光が白、闇が黒、となる。
「翔ちゃんは風が一番適正があるってことだよね」
「そういうことになるな」
ちなみに、私は赤と青が玉の上半分を同じ大きさで染まっていて、次が白と黒、緑と茶が一番小さかった。
属性判定機では、使える魔法がわかるだけではなく、染まった色の範囲の広さで得意不得意がわかる。
ちなみに、平民だと一種類、貴族だと二種類、多くても三種類の属性を持つのが普通らしい。じいちゃんのように、何種類もの属性を持つ人は稀なのだそうだ。私と翔ちゃんも、その稀な部類に入るらしい。
一方で、まったく染まらない人もいるらしい。
獣人にその傾向があるそうで、その場合は属性魔法は使えないけれど、身体強化のような身体のほうに魔力を使う形になるそうだ。
残念ながら、まだ一度も出会ったことがないので、一度は会ってみたいところではある。
「風の魔法って、『ウィンドカッター』とか?」
「ほお、よく知ってるな」
翔ちゃんが目をキラキラさせながら言うと、じいちゃんは驚いている。
――たぶん、ゲームで出てきた魔法の名前だよね。
私も頭に浮かんだくらいだ。私の場合は、ライトノベルの影響だけど。
イメージは大きな風の刃が、大きな木とかを切り倒す感じなんだけど、実際はどうなんだろう。
「しかし、まずはショーは魔力のコントロールが出来ないとダメだな。エマみたいに、とんでもない威力になるかもしれんからな」
「じいちゃん!」
「ワハハハ」
魔法を習い始めた当時、加減を知らなかった私は調子にのって、とんでもない『ファイアーボール』を出してしまって、自分の前髪や服を焦がしてしまったのだ。
今はコントロールできるようになっているし、そんなことにはならない、と思う。たぶん。
つい、やらかしたことを思い出して渋い顔になった私に気付いた翔ちゃん。
「……わかった。ちゃんと練習するよ」
姉の失敗を糧にする弟。なんか、ズルいって思うのは私だけだろうか。
魔力のコントロールの練習をする翔ちゃんをよそに、 私は火と水の魔法の他、風の魔法の練習も始めた。
翔ちゃんが言った『ウィンドカッター』もやってみたかったけど、じいちゃんから、まずはもう少し威力の小さい『ウィンドボール』を練習するように言われてしまった。
……初めての『ファイアーボール』ほどではないものの、ちょっと大きくなってしまったのは、仕方ないと思う。
「よし、魔力の流れはいい感じだな」
「じゃあ、僕もやってもいい?」
「そうだな。エマの『ファイアーボール』は見たな?」
「うん」
「あれくらいの大きさを思い浮かべて『ウィンドボール』と言ってごらん」
翔ちゃんは、手を伸ばしてから、ごくりと喉を鳴らし、「『ウィンドボール』」と唱えた。
フォンッ ドゴンッ
小さな音とともに、小さな風のボールが飛んでいったかと思ったら、的の脇をすり抜けて壁に激突した。
「うわ! 失敗した!」
翔ちゃんが真っ青な顔で声をあげるけど、私からしたら十分成功だと思う。
それに、激突したはずの壁はびくともしていないのだ。
「ふんふん、ショーはコントロールはエマよりも上手いかもしれんな」
「でも、的に当たらなかったよ……」
「的に当てるのことよりも、『ウィンドボール』を大きくしすぎないことのほうが大事だ」
「そうなの?」
「ああ。エマは最初の年は、魔力の流れを感じとるのに苦労したものな?」
「うっ」
「そうなんだ……うん、じゃあ、僕、もっと練習する!」
翔ちゃんのやる気に煽られて、私も気合を入れる。
魔法の練習が出来るのは、
『ウィンドボール』の次には土の魔法の『アースボール』に挑戦する。『ウィンドボール』と違って、こちらはちゃんと小さめにできた。
「よしっ!」
思わずガッツポーズをした私。そこからは納得いくまで『アースボール』を撃ちまくる。
「ふぅ」
思わず出てしまったため息と同時に、
「エマ、一旦、ここで止めなさい」
「えっ」
じいちゃんからストップがかかった。
「なんで」
「今日は何発撃っている」
「え、えーと。『ファイアーボール』が20ちょっと、『ウォーターボール』も同じくらい、『ウィンドボール』は30くらい、『アースボール』はもうちょっと多かったかも?」
「はぁ……お前の魔力が多いのは知ってたが、少しやりすぎだ」
「あ、はい」
じいちゃんに指摘されて、ちょっと身体が怠く感じ始めてたのを自覚する。
「ショーも気を付けなさい。やりすぎると魔力欠乏で倒れるぞ」
「わかった」
素直に返事する翔ちゃん。
これまた、前にやらかしているものだから、私は何も言えずに練習するのを止めた。
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