異世界のじいちゃん家に行こう
第9話 こんにちは、ブラウニーさん(1)
白い光が消えたと同時に、目の前に現れたのは、がらんとした薄暗い石造りの部屋。窓一つないその部屋全体が、薄っすらと青白く発光している。閉めきられているせいか、少し黴臭いニオイがする。
足元の石の床には、あちらと同じような大きな円形の魔法陣が白く描かれていて、その真ん中に、じいちゃんを中心に私と翔ちゃんが立っている。
急に、ガチャリと、ドアが開く。
『旦那様、お帰りなさいませ』
黒いスーツを着て、焦げ茶の髪に浅黒い肌に口髭を生やしたおじさんが、オレンジ色のランタンを手に立っている。そのおじさんは、私や翔ちゃんよりも小柄で、ちょっと頭と体のバランスが微妙な感じ。
彼はじいちゃんの家の管理を任されている、
「うむ、戻った」
あちらにいた時にはカタコトだったじいちゃんの言葉が、急に活舌がはっきりと聞こえるようになる。じいちゃんは転移をして
その言葉を、私もきちんと聞き取れるようになるし、相手に言葉も伝わるから不思議だ。
「えっ? じ、じいちゃん?」
「ああ、じいちゃんだぞ」
驚く翔ちゃんにニカリと笑いかけるじいちゃんの姿は、ガラリと変わっている。
今、隣に立っているのは、30代後半くらいの姿のじいちゃんなのだ。
猫背だったはずなのに、シャンと背筋が伸びて、ぐっと背が高くなった気がするし、オールバックの白髪は黒髪に変わり、ダークブルーだった瞳の色が金色に変わっている。
若い頃の写真のじいちゃんの髪色は金髪だったけれど、こちらに来ると黒髪と金色の目に変わる。
これは、
髪の色と、瞳の色は、この魔素が変換されて生み出される魔力の属性に影響されるのだそうだ。
水の属性が強い人は青、火の属性の人であれば赤になるという。複数属性になると、混ざった色合いになる。だから紫なんていう色もあるのだそうだ。
黒い髪と金色の目は、全属性(水・火・風・土)の魔法が使えることの証として、ほとんどいないらしい。
この変わりようは、私も初めて見たときには、びっくりしたものだ。翔ちゃんが驚くのも理解できる。じいちゃんだと知らなければ、まったくの別人にしか思えない。
ちなみに、
じいちゃんは
『エマ様も、お帰りなさいませ』
「こんにちは! ロイドさん!」
『……(呼び捨てでいいんですけどねぇ)』
にこりと笑ったロイドさんは、私の隣に立っている翔ちゃんへと目を向ける。
『そして、そちらはもしや』
「うむ、もう一人の孫のショーだ」
『初めまして。ショー様』
ペコリと頭を下げるロイドさん。
じいちゃんは翔ちゃんの背中を軽く押したんだけど、肝心の翔ちゃんのほうは、
「ショー?」
「じ、じいちゃん、だよな」
「ああ、そうだよ」
ニヤリと笑うじいちゃんの顔は、悪い人みたいだ。
「ショー、聞いているか?」
「へあっ!?」
じいちゃんに声をかけられて、変な声をあげて驚く翔ちゃんの姿に、私も思わず、クスクス笑ってしまう。
「ね、姉ちゃんも、笑うなっ……って、姉ちゃんの目! え、髪の色も!?」
「あ、うん。そうなんだよねー」
実は、私も
では翔ちゃんはどうかといえば。
「翔ちゃんも、目の色が変わってるよ?」
元々黒髪なので髪の色は変わっていないけど、目の色は金色の目になっている。
「ふーむ、ショーはエマほどの魔力はないが、属性は全て使えそうだな」
私にはわからないけれど、じいちゃんには、人を見ただけで魔力量がわかるらしい。
翔ちゃんの顔をのぞきこんでいるじいちゃんの顔は満足そうだ。
「ぼ、僕も魔法が使えるの?!」
「そうだな。その素質はある」
『んんっ、旦那様、そろそろ……』
「ああ、そうだな」
じいちゃんは、ロイドさんにせかされると、大きなスーツケースをひょいと持ち上げた。
「えっ!?」
驚きの声をあげるのは、これまた翔ちゃん。
山の中にあった転移の小屋まで、ひーこら言っていたじいちゃんが、今は片手で持ち上げて、肩にのせているのだ。
これは、『身体強化』という魔力の使い方なのだけど、私はまだうまくできない。
一方で、そんな魔力の使い方を初めて見た翔ちゃんは、すげー、すげーと、呟き続けている。
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