H氏のエッチ

ネプ ヒステリカ

H氏のエッチ

 職場にHさんと、呼ばれる人がいた。

 本当は、佐伯哲也という。

 でも、彼を佐伯さんと呼ぶ人はいない。

 だれもが、

 H氏、Hさん

 と、親しみを込めて呼んだ。

 佐伯氏がどうしてH氏になったかというと、会社で使う鉛筆は主にHBで、庶務係の事務員が一括で注文する。担当者は、筆記用具の不足が出ないように気を付け、少なくなったら補充した。

 あるとき、佐伯氏が、硬質の方が好きだからと、Hの鉛筆がほしいと担当者に頼んだ。

 担当者は、すぐに注文した。

 鉛筆が来ましたよと、佐伯さんと呼ぶべきところを、

「Hさん、鉛筆きましたよ」

 と、いってしまった。

 そのときから佐伯氏は、Hさんになり、職場の人たちは、親しみを込め、なにかと佐伯氏を、

「Hさん」

 と、呼ぶようになった。

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