この感情はフィクションです

@6kanoAyame

第1話 この感情はフィクションです

フエルトの口にくちびる押し付けて愛を感じているけだもの


シナリオを脱いで私のとこに来て明かりはちゃんと消しておくから


魂のないひとだから恋をした命をすこし分けてあげるね


ポケットのうえから君を撫でていた蛍光灯がぎらつく真昼


「セーブする?」「いいえ」を押してみたくなる君が忘れずにいる気がして


毒のない蛇がちろりとのぞかせる舌はマゼンタわれらはアルファ


姫林檎かじれば喉はざらついて夢小説の底で目覚める


いつまでも蝶になれないももいろの蜜をせっせと吸ってみたって


服を脱がされる瞬間#name#なまえって呼ばれ 黒点迫る夕暮れ


ドレスより白い視線にたゆたってまばたくひとりのウェディングフォト


遺伝子の鎖が脚に噛みついて君の温度を妄想にする


ことわりを分かったような顔するなたかが結婚届くらいで


中傷の通知が届くたび 振り子時計はきちんきちんと歌う


生まれるのやめておいたらベランダの蛹よここは恋ばかりだよ


幻聴にカウントされるかもしれぬ君の返事を今は無視する


人格のスポットライト切り替わるちょうどふたつに割られる柘榴


ほんとうは偏桃体のなかにあるあの遺跡からやってきたのね?


未踏など傲慢だった洞穴どうくつに雌を描いた人類もいた


川の字で眠れる夜はこないけどイコールでいられる私たち


ステーキのやわらかいとこ嚥下する 私を愛せますように、って


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