幻魔少女物語〜神様の失敗で人間から異界人になった8人の話〜

@jovanni

全ての序章

 ジジジ・・・ジジジ・・・

 さっきから、けたましいアラームがなっている。

「ん・・・んん」

 平和なほどに、外で鳥が鳴いている。

 太陽は、私に朝だということを教えてくれる。けれども抗い続ける、一日の始まり。

 一応時間は見るか。そう思って時計を手に取った。まだ眠い目をこすり、半開きすると。

「ああっ!!」

 七時四十分、もう学校に行かなければならない時間だ。私は跳ね起き、洗濯していないままのブレザーを身に付ける。カバンを取り、急いで一階におりる。早くも夏美が朝ごはんを食べ終わっていた。

「姉ちゃん、おはよ」

「ああ」という、短いやり取りをすまし、白飯とみそ汁をかきたてる。たくあんを流し込み、サケを突っ込んだ。

母に「ゆっくり食べなさい 」と言われたが、無視した。

 朝食がすむころには、五十分になっていた。

「行こう」ととなりの夏美に言って立ち上がる。

 妹はそれに応え、ランドセルを背負う。

 互いに靴を履くと、皿洗い中の母に同時に

「いってきまーす」と声をかける。

「はーい」という声を背に、玄関を閉めた。中一の私と、小五の夏美。通学路は一緒だった。私は夏美に聞いてみる。

「今日の晩ご飯何がいい」と。

すると、

「お父さん帰ってくるから、豪華じゃない方がいいなー」という答えが返ってきた。

 父は単身赴任で、二週間に一度帰ってくる。

 父が帰るときは、焼き肉や寿司など豪華なものを口にする。この土日もきっとそうだ。私もそう思うというと、夏美は笑みをこぼした。

 友達を見つけたらしい。じゃあねとだけ言い残し、友達の方へ走っていく。

 妹と別れた私は、じきに一つのプレートを見つけた。(名古屋市立花実中学校)とある。

 ここが私の中学だ。校門の先に、見慣れた男子の後ろ姿を見つける。

「浩介ーっ」

 私は彼に駆け寄った。向こうも気づいたらしく、立ち止まる。

「おはよーっ」

「うっす」と挨拶し、肩を並べる。

 そのまま一緒に歩いた。

「お前さあ、いい加減あいつに話せよ。いつまでウジウジしてんだよ」

「うん・・・」

 その話題をふられて気持ちが沈んだ。

 実は私には仲直りしたい子がいる。しかしまともに話すこともできない。

「仲直りしたいんなら、きちんと話せよ。俺、応援してるから」

「ありがとう」

 景気のない返事をする。気持ちが沈んでいた。

 私はまだ知らなかった。この後、いやこの先あんなことになるなんて。

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