第10話 女子のスカートを短くしてくれ!――相談⑨ 丸平 一馬

 「先生、相談があるんだ…」


丸平まるひら一馬かずま君は真剣な顔をしてるものの、相談内容はスケベな事だろう。それでも私は教師だから、差別したりはしない。


「何かしら?」


「校長に掛け合って、女子のスカートを短くして欲しい!」


とんでもない事を言い出したわね…。って、いつも通りか。


「念のため理由を聴いても良い?」


「今の俺におっぱいを揉む事は絶対無理だとわかったよ。その思いをぶちまける事も出来なくなったし…」


“おっぱいたい”は、運営から警告されて消されると言ってたわね。今の話を聴く限り、本当に消されたのか…。


「だから見るだけで楽しめる事は何かを考えたんだよ。それが…」


「スカートを短くするって事なのね」

本当に自分勝手だわ。


「そう。いつパンツが見えるか楽しみじゃん! 階段の下とか最高だよな~」


だらしない顔をする丸平君。彼が行動を起こす前に言わないと!


「あのねぇ、スカートの中を覗くのは犯罪よ? わかってる?」


「もちろんわかってるよ。でも校長が『スカートを短くしろ!』って言ったら、短くするしかないよね? それが理由で見えたら、悪いのは校長になるんじゃないの?」


だから校長と掛け合うように言ったのか。それよりも、校長に罪を擦り付ける図々しさは凄い。誰も思い付かないと思うわ…。


「スカートを短くするなんて絶対無理よ。諦めなさい」


「そこを何とか! 『夏は涼しくなる』でイケるでしょ?」


代わりに下着が見られやすくなる。代償があまりにも重すぎるわ。


「それでもダメ!」


「ダメか…」


これだけ言ったんだから、いい加減諦めてくれるはず。


「だったら、下にハーパン穿いて良いから! これならOKだよね?」


「ハーフパンツを穿いたら、下着は見えなくなるわよ?」

丸平君がこれに気付かないはずがない。


「仕方ないから譲歩した。短いスカートがめくれそうになったり、ヒラヒラする様を楽しむ事にするよ」


それでも最低な行為に変わりない。ため息しか出ないわ…。


「譲歩しようがダメ!」


「先生、俺はどうすれば良いの? おっぱいは揉めないし、パンツも見れないなんて…」


「最初に言ったわよね? 『頑張って彼女を作って、その人の許可をもらうしかない』って」(1話参照)


「それができたら苦労しない!」


確かにそうね。今日初めての正論かも?


「やっぱり“急がば回れ”ってやつなのかな~?」


「そうよ、まずは立派な男性になりなさい。私が言えるのはそれだけね」


「…わかりました。真面目に考えてみます」

そう言って、丸平君は教室を出て行く。


変にこじれないと良いけど…。そんな不安が残り続けるのだった。

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