第9話 おっぱいを吸って下さい!――相談⑧ 早乙女 由美

 「…これで終わりね」

私は早乙女さおとめ由美ゆみさんの胸から手を放す。


「今日もありがとうございます、先生」


今回も相談時間に、彼女に“バストアップマッサージ”をした私。効果が見込めないのは早乙女さんもわかってるみたいだけど、マッサージが気持ち良いらしいので続けている状況だ。


「先生。今日はマッサージの他に、もう1つお願いしても良いですか?」


「良いわよ。何でも言ってちょうだい」


「では…、わたしの胸を吸って下さい!」


「……えっ?」

聞き間違いじゃないわよね?


「ですから、わたしのおっぱいを赤ちゃんのように吸って下さい!」


「ちょっと待って早乙女さん! どうして急にそんな事言い出すの?」

彼女はこんなキャラじゃないのに…。


「わたしなりに色々調べたんですけど、胸を大きくするには“母性”も大切だと思うんです」


「母性ねぇ…」

全然ピンとこない。子供どころか男性と付き合った事がない私に分かる訳ないわ。


「そうです。お母さんが赤ちゃんにおっぱいを与える時って、大きいサイズになってますよね? いわゆる“イメトレ”も大切だと思いました」


イメトレが大事なのは同意できるけど…。


「早乙女さん。姿勢や生活習慣の改善は取り組んでる?」

これらも胸の大きさに関係ある事は以前伝えた。


「はい。猫背にならないように意識してますし、夜も早く寝てます」


偉いわ…。神様は何でこの子の胸を大きくしないんだろう?


「マッサージも先生にお願いしてる以上、残ってるのはイメトレだけなんです」


彼女も最後の手段だと思って言ってるわね…。


「おっぱいを与えるのに、男の子・女の子は関係ありません。こんな事、先生にしか頼めないんです。お願いします!」


「頭を上げてちょうだい」


扉は施錠してるし、カーテンもしてる。だから他の人にバレる心配はないけど…。


いくらお願いでも、やって良い事と悪い事がある。これはどっちに入るの?


「先生がどんな吸い方をしても、わたしは絶対文句を言いませんから」


…ここまで言うなら、1回だけやってみようかしら? 説得しても応じてくれなさそうだ。


「わかったわ」


「ありがとうございます先生!」


私は早速、童心に帰って吸う事にした…。



 いつものマッサージとは比べ物にならないぐらい、早乙女さんは可愛らしい喘ぎ声をあげる。気持ち良いのは間違いないみたいね。


…赤ちゃんになりきってる今、「バブー」とか言ったほうが良いのかしら? って何を考えてるの私!? 無心でやった方が良さそうね。


「先生、もう大丈夫です…」


早乙女さんの言葉を聴き、私は吸うのを止める。


「えーと、どうだった?」

気になったので訊いてみた。


「すごく気持ち良かったです♡」


「そうじゃなくて、イメトレはできたの?」


「そっちでしたか、すみません。一応できました…」


「良かったわね」

お願い! この話はこれで終わって!


「先生。これからは、マッサージとイメトレを両方お願いしても良いですか?」


やっぱりこうなっちゃうの!? 早乙女さんの視線が私の良心に訴えかける。


、誰にも言わないでちょうだい。わかったわね?」


「はい約束します!」



 こうして日課の内容が増えた。乗り掛かった船だし、早乙女さんが納得するまで付き合うしかなさそうね…。

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