生徒のHな悩みに振り回される私

あかせ

第1話 おっぱい揉みたい!――相談① 丸平 一馬

 今年の4月に共学校の教師になった私、小川おがわ早苗さなえ。人手不足の影響で、なって早々“1-A”の担任を受け持つ事になった。


そんな私には目標がある。それはクラスで悩んでる生徒を0にする事だ。そのために教師になったんだから、何が何でも達成したい!


それを校長に話したところ「空き時間に空いてる教室で“お悩み相談”でもやってみたらどう?」というアドバイスをいただいた。


校長の善意に感謝してから、入学式から数日後のホームルームで“お悩み相談”の事をクラスのみんなに伝えた。始めるのはもちろん今日からだ。誰か来るかな…?



 空き教室に椅子を2脚、向かい合わせて置く。準備完了したので、私は座って誰かが来るのを待つ。


来なければ平和な証拠だから問題ない。警察は暇そうにしてるほうが良いのと同じ理屈よね。


「せんせ~」


勢いよく扉が開き、1人の男子生徒が入ってくる。


「初めての相手は、丸平まるひら 一馬かずま君か」


彼に抱く印象は“お調子者”になる。それでも悩みは出るものよね。


とか意味深だな~。…そこ座れば良いの?」


「ええ」


丸平君は空いてる椅子に座り、私達は向かい合う。



 「丸平君。悩みを教えてちょうだい」

一体どんな悩みなんだろう…?


「その前に確認したいんですけど良いですか?」


「もちろん」


、どんな悩みでも良いの?」


「当然よ。私に解決できない悩みはその時次第ね」


新人教師の私に出来る事は限られている。“一人で抱え込むな”と校長に言われてるから、その点は安心できる。


「そっか…」


わざわざ前置きしたんだ。普通の悩みじゃないのはわかりきっている。私も覚悟を決めたほうが良いかも?


「おっぱい揉みたくて悩んでるだけど、どうすれば良い?」


「はっ?」

高1男子らしい、Hな悩みね…。


「やっぱり引いてるじゃん! だから確認したのに…」


女の私からしたら馬鹿馬鹿しい話になる。けど丸平君が悩んでるのは事実みたいだし、力にならないと。


「頑張って彼女を作って、その人の許可をもらうしかないわ」

これ以上の回答が思い付かない…。


「それはわかってるよ。でも揉みたいの!」


彼の目線が私の胸に向かう。わかりやすいわね。


「…私の胸は揉ませないわよ?」


「やっぱダメか~」


「当たり前でしょ? そんな事したら通報するから」

いくら何でも、生徒に体は売れない。


「それは勘弁して~」


これだと悩みを聴いただけで、解決に繋がっていない。どうすれば良いかな?


「丸平君。アイマスクとかで視界を遮ってから、柔らかいものを触って気を紛らわせると良いわ。今はそれで我慢しなさい」


「……」


この程度では納得しないか。もう一押ししよう。


「今の内に男を磨いておくと、これから彼女を作りやすくなると思うわ」


「男を磨く? 何をすれば良いの?」


「生徒の本分は勉強ね。後は筋トレをして体作りをしたり、バイトして社会経験を積むのが良いかも」


立派な男性になれば、多くの女性を惹き付けるはずよ。


「なるほど~。良い男になれば、たくさんの女子が俺の元に来てくれる…」


丸平君はニヤニヤしている。言うまでもなく嫌らしい事を考えてるわね。


「先生ありがとう。俺、将来のために今は我慢する!」


「そうしてちょうだい…」

この流れで良かったのか、後で自己反省しよう。


「じゃあ俺はこれで!」


丸平君は立ち上がり、教室を出て行った。



 私の空き時間が終わり、職員室に行く時間になった。空き教室の施錠をしてから早速向かう。この道中に自己反省をしようかな。


丸平君の悩み、あれで良かったかしら? 一時しのぎのような気がするけど、その間に色欲に惑わされない立派な男性になる事を願うわ。


…職員室前に着き、私は扉を開ける。

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