第14話 小手調べ

 勇者に勝つには、Sランクのモンスターに勝てないと無理だろうな。

 Sランクと言うとドラゴンクラス。

 いきなりそれは無理なので、とりあえずAランク・モンスターとやることにする。


 口の中の傷はまだ治ってない。

 モンスターと小手調べしたら、激辛ラーメン一気食いにレッツチャレンジしよう。

 逃げるぐらいはできるはずだ。


 ランク不問の掲示板に、オーガの依頼がある。

 やってやるぜ。

 俺は掲示板から依頼を剥がした。


『戦いの神:良い覚悟だ。結果の判る勝負はつまらん』

『鍛冶の神:ふむ、それでこそわしが剣を打った男』

『愛の女神:勇者の称号を奪い取るなら、これぐらいは潜り抜けるのが、とうぜんでしてよ』

『試練の神:先にレッツチャレンジして欲しかったが、これもまた試練』


「馬鹿ですか?! 死にますよ!」


 受付嬢に怒られた。


「駄目だったら逃げ帰る」

「依頼破棄は罰金ですよ。ランク不問依頼ですから、Aランク依頼より罰金は安いですけど。無駄にするなら、受付嬢に貢いだほうがましですよ」


「生きて依頼を達成できたら、依頼金の半分は受付嬢達に何か買ってプレゼントする」

「貢げは冗談だったのに」


「良いんだよ。可愛い受付嬢がいるから頑張れる」

「可愛いだなんて。でも、みんなに貢ぐのは減点です」


『戦いの神:金はぱーっと使わないと戦士ではない』

『鍛冶の神:装備に金を使わないのは、神剣が愛剣と決めておるのか。その心意気よし』

『愛の女神:オーガ討伐ができたら、愛が生まれるかも知れないですわね』

『試練の神:俺の試練ではないが、試練を頑張れ』


 なぜか死ぬという気持ちが湧かない。

 なんだろうな。

 自信はないが、そんな気がする。


 オーガの出る村まで、行商人の馬車に乗せてもらった。

 手配してくれたのは受付嬢。

 普段はここまでしないのは知ってる。

 まだプレゼントしてないけど、お礼かな。


 オーガが出た村までは3日ほど掛かった。

 口の中の傷もかなり良くなっている。

 村人に訊いて、オーガが来た方向に向かう。

 縄張りに入ると、入ったとはっきりと分かった。


 生き物の気配がしないのだ。

 息をひそめて生きている感じ。

 錯覚だと思うけど、強敵がいる圧力がひしひしと感じられる。


 草を身に纏って、足音をなるべく立てずに歩く。

 遠くで吠え声が聞こえた。

 たぶん、オーガだろう。


『戦いの神:胆力が付いたな』

『鍛冶の神:素手で勝てるのか』

『愛の女神:愛を勝ち取るのです』

『試練の神:良い顔つきだ。試練に挑む顔はこうでなくては』


 オーガの足音が聞こえる。

 さて、弱点だけでも掴みたい。


 ゆっくりオーガに近づいて地に伏せる。

 歩いて来るオーガがでかい。

 3メートルは超えていそう。

 このぐらいの距離なら良いか。

 俺は立ちあがると、果汁の入った素焼きの瓶を投げた。


 ストライク。

 オーガの顔は果汁まみれになった。


「ウガアアア!」


 オーガが手で顔を撫でる。

 そして、俺と視線が合った。


 やばい、しばらく痛くて目が開けられなくなるって計算だったが、手のひと撫でで終りか。


『戦いの神:小細工は強敵には効かん』

『鍛冶の神:そうかのう。小細工で勝った神もおるぞ』

『愛の女神:愛は簡単に手に入らないものですわ』

『試練の神:ここからが本番の試練だな』


 仕方ない。

 俺はまた素焼きの瓶を取り出して投げた。

 当たった瓶から出たのは蜂。


「ウガ?」


 オーガは俺のことは忘れたみたいだ。

 手で向かって来る蜂を追い払っている。

 俺は全力で逃げた。


 オーガは追い掛けてこない。

 全力で逃げながら、考えを巡らす。


 蜂がオーガを刺してもたぶんノーダメージだろう。

 でも虫に飛び回られるとうっとうしいのは人間も同じ。

 追い払いたくなるよな。

 ただ、人間なら脅威の度合いを考えて、順番を決める。

 オーガが馬鹿で良かった。


 オーガの弱点は知能。

 ただ、生半可な罠とかでは無意味。

 名剣ですら、傷を与えられない。

 魔法にも耐性がある。

 良く燃える液体を掛けて、火を点けてもたぶん駄目。


『戦いの神:撤退も良いが、負け犬になるなよ』

『鍛冶の神:知恵で勝負か。まあ、今回は仕方ないことかの』

『愛の女神:武と知の両方をそなえるのは魅力的ですわ』

『試練の神:今回は知の試練になりそうだな』


 果汁の瓶の木の栓を抜いて、一気飲み。

 うん、染みない。

 痛みもないから、チャレンジできそうだ。


『試練の神:いよいよ、レッツチャレンジするのだな。期待してるぞ』

『戦いの神:つまらん。スキルを得たら、簡単にオーガに勝てる』

『鍛冶の神:いや、知恵を絞らないと無理じゃろ』

『愛の女神:そうですわね。非力なことを考えたら、スキルを得ても厳しいですわ』

『試練の神:焦らすな。早くやれ』


 慌てるなよ。

 もらえるスキルは戦闘スキルらしい。

 俺は対オーガの作戦を考えた。

 スキルが判明したら、作戦の詳細を詰めよう。


 今回は綱渡りも良いところだ。

 でも今のところ死ぬ気がしない。

 やれそうな気しかない。


 たまにこういうことがあるよな。

 やる前から上手く行くって気がする。

 錯覚の時もあるけど、半分ぐらいは当たる。

 上手く行かない予感の逆の時もあるけど。


『戦いの神:こいつ、調子に乗ってるぞ』

『鍛冶の神:作戦が読めん』

『愛の女神:結末が分かるなんて、詰らないですわ。こういうのもよろしくてよ』

『試練の神:そうだな。成り行きをみよう』


 強く考えないと、神は心が読めないらしい。

 神にも限界があるってことだな。

 村へ帰還。


「よし、レッツチャレンジ!」


 どんぶりに入った真っ赤な煮えたぎったラーメンと箸と砂時計が現れた。

 食い始めたら砂時計が動作するらしい。

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