第三十四話 海に浮かぶ美しい女性の正体は?
青空のような水色の髪が、海の中を漂う女性は、同色の瞳で穏やかな笑みを浮かべていた。
ただ、
反射的に両手を伸ばして、身長差のあるレイの両目を可能な限り隠そうと試みた。
レイは仕事上すでに露出の多い女性の姿に見慣れているにも関わらず、なぜか勝手に体が動いてしまい、自分でも驚いている。
両目を隠されるレイはもちろん、
「ちょっ……。お嬢、一体なんのお戯れですかー。いましがた、危ない目に遭ったというのに……」
「そ、それは……そうなのですが! ハッ! そうでした。大変申し遅れました。
「レイと申します。私からも心より感謝いたします」
それから口をパクパクさせる女性は、何かを話したそうにしているけれど、言葉が話せないのか悲しそうな表情をしていた。
そして、水中にもぐって行ってしまい再び静寂が訪れる。
「えーっと、良く分からないんだけど……コイツ、どうするの?」
「海賊は、フェリス国の兵士に引き渡すとして……運ぶのは面倒だな。縄の代わりにならなさそうだが、漂流した海藻で縛っておこう」
「あの方は……海の中にもぐっていきましたけれど。海の妖精さんとかでしょうか?」
海藻でグルグル巻きにされた海賊は、どこか非日常に感じて笑ってしまった。
思わず動きが止まる
「まさか……。その真珠は、人魚族が友好国であるフェリス国に贈ったとされる、水中で呼吸が可能になる魔導具……?」
「えっ!? そんな魔導具なんて存在してるの? 世界は広いのねぇ……」
「つまり……? この方は、歴史上のおとぎ話に出てくる、人魚さん!?」
人魚という単語に反応した様子で、笑みを浮かべる女性は水面に同色の水色をした尾びれを揺らしてみせた。
――思考が追いつかない。
歴史上の人魚族は、悲しい結末を迎えて、この岬で亡くなった。友好国である、フェリス国も歴史の中でその事実について触れている。
不老不死の説が本当で、救われていたなんてことも……?
「いえ……。人魚族は、フェリス国と友好を結んでいて、会話も出来たはず。言葉を話せないことには、別な意図が……」
「ふむふむ。良い推理ね。でも、見てみて。あの真珠、二つしかないんだけど?」
「あっ、人魚さんも言葉が話せないことに対して頷いていますよ! だから、その真珠をつけて、海の中に来てほしいということでしょうか……?」
人魚さんは、首を縦に振ってから、
理由は分からないけれど、人魚さんは
「レイ……!
「そういうと思っていました……。チャコラ、その男を頼めるか? それから、このことをフェリス国王たちに知らせてほしい。構いませんよね?」
人魚さんに問いかけるレイに対して、彼女は頭を縦に振った。
人魚のおとぎ話に興味を示していただけに、チャコラの耳と尻尾は下に垂れ、明らかに残念そうな表情をしている。
「チャコラ、申し訳ございません。お土産話を沢山持って帰りますので……」
「うんっ! それよりも、海の中だから動きも鈍くなるんで、気を付けて!」
「俺の
レイの言いたいことをすぐに理解した
普段は、危ないからと攻撃魔法を使うなというレイが
レイが人魚さんから真珠を受け取ると、口に
思わず目を閉じてしまった
この魔導具は、呼吸ができるようにするだけではなく、海に適さない人間に対して空気の泡を作ってくれるのだと視線を横に向けて気がつく。
泡に囲まれていて、おとぎ話に入ってしまった感覚に目を細める
人魚さんの案内で
すると終点のようで、人魚さんが洞窟のような場所を指さして入っていく。
幻想的な海中とは対極的に、人工で作られたかのような黒くてゴツゴツした岩肌に、空の光を通さない暗闇に思わず息を呑んだ。
明らかに不釣り合いな行先に、レイも迷っているようで
そんな
『…………海中では、言葉を話せることを忘れていました。申し遅れました。私は、セレスティア。人魚族の長です』
衝撃的な事実を聞かされた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます