第三章
第三十話 外来モフモフ来日?
慌ただしい記念祭から数日後。
チャコラの自室も内装は特に変わらないけれど、家族写真や、関連する物が棚に並べて飾られている。
それだけで、チャコラが暖かい家庭で育ち、離れている家族を愛していることが伝わって来た。
「二人を呼んだのは他でもないわ! 最近、ギルドに行く機会があったんだけど……。何やら、外来のモフモフが船で紛れ込んだとかで。その討伐依頼が出てたの!」
「えっ……? ”外来のモフモフ”……。海を渡った先から来た子は、外来種なのですか!?」
「ハァ……。お嬢は、相変わらず勉強不足ですねー」
あの日から数日経ったことで、レイは言葉通り元に戻って、変わらず接してくれる。
ただ、自分の気持ちに蓋をしてしまった気がして、原因は
多分、婚約者が出来たらレイは実家に戻ると最初に言われたからだと思っているけれど、この気持ちが良く分からない。
「生まれた場所が違うだけで、その土地から別の土地に移動してしまうことは悪いことなのですか?」
「俺たちのように人間なら言葉もありますし、生態系を崩さずに和解出来ます。ですが、モフモフたちは弱肉強食です。まぁ、弱者ではありますが……その中でも縄張りや、食事をする必要もあります」
「つまり! モスフルに住んでるモフモフが縄張りを犯されて、ご飯が食べられず、数を減らすことで外来モフモフが増えて生態系を脅かすということです!」
二人の話を聞いてすぐに理解した
モスフルにいるモフモフが数を減らしていなくなるのは由々しき事態だから。
備え付けのソファーに座って飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置くと、おもむろに立ち上がる。
「これは、
「えっと……どういうことですか?」
「以前、お二人にお話しがありますとお伝えいたしましたが……。普通なら止められることを、外来モフモフの登場によって、理由付けが出来るのです!」
二人に相談しようとして出来ていなかったことを
当然、レイは険しい表情で否定する。
「海を渡って、外を旅したいなど言語道断です! そんなこと、許されるはずがない……」
「ルキディア様って、思ってた以上に大胆よねぇ……」
「ですから! モスフル王国代表として、外来モフモフを元の場所に帰すという立派な名目が出来るのです」
とても真面目な顔を作って見せると、二人は呆れながらも提案に乗ってくれた。
外来種はモフモフでなくても、国家の問題だとレイは指摘する。
だから、殺さずに元の場所に帰せるのなら、他国との交流も生まれるかもしれない。つまり、これは外交だ。
その外来モフモフがいる相手国が、モフモフについてどこまで好意的であるかも重要になる。
「それでは、調査を開始したいと思います! レイは、外来モフモフについて調べて他国がどのような扱いをしているかを探ってください。チャコラは、外来モフモフを見つけて、可能でしたら無傷で保護をしてください」
「了解しましたー! ほら、レイ行くわよ」
「……承知しました。ですが、俺は海を越えた先の旅は認めてませんからねー」
ひとまず、外来モフモフについて行動することにした
「ルキディア様の左腕、チャコラ。報告します! 外来モフモフは全部で三匹であり、うち二匹は協力者と共に保護しました! ですが、見た目が小さくすばしっこいので、残り一匹が港町で逃亡中です」
「……チャコラ、おとぎ話の読みすぎじゃないか? こちらは、チャコラに外来種の情報を与えてから、他国について調べました。結果は、モフモフについて好意的であり、外交可能かと思います」
「二人とも、有難うございます。それでは、あとは残りの一匹を保護して、お父様に認めてもらえたら海外に進出できますね!」
目を輝かせる
レイはお父様と同じく頭が固いのが残念な部分だった。
もちろん、メイドは連れて行けないから、またチャコラに頑張ってもらうことになる。
そこはチャコラも了承してくれて
心配してくれているのは分かっているけれど、
「それでは、お父様に進言して参ります。何か進展がありましたら報告してください」
「ルキディア様、ファイトーですよ!」
両手を握りしめて下に落とす仕草をするチャコラに
◇ ◆ ◇
それから数日後。
当然、外来モフモフは
遠目から見たモフモフは、愛らしいつぶらな瞳に、お腹はモチモチしているのに、表面に沢山の針を持ち、普段は毛として撫でられるのに、怒ったり危険を感じると逆立って凶器になるという恐ろしさ。
ただ、レイはモフモフなのか疑問を抱いている。
とても羨ましい……!
「だけど、ルキディア様の説得による
「ハァ……お嬢には、みんな呆れますよ。執着心の塊です」
「不敬ですよレイ。
レイとは対照的に拍手をする好意的なチャコラに笑顔になる。
「本当に可愛らしいです……いまは、針の部分も寝ているみたいですし。見てください! こちらを見ていますよ」
「本当ねぇ。あの針を魔法で飛ばして攻撃してくるなんて思わないわよ」
「本当に弱いモフモフじゃないですよねー。あと、外来の方が気性の荒い個体が多いようですよー」
興味無さそうに辺りを警戒するレイが説明してくれた。嫌々ながらも、きっちり仕事をこなすレイのそういうところを尊敬している。
「あっ……。もう出航するようですよ!? 初めての海を渡った
「アタシも、海の外は出たことなかったから少しドキドキしてるわね……」
「俺は、後学のために何度か渡ったことがあるので……。興味津々で眩しい目を向けないでください」
だけど、このときはまったく考えもしなかった……波乱万丈すぎる海外進出が
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