第二十八話 建国祭は大忙し ~モスフル王国50周年~
早朝から慌ただしく動き回るメイドたちによって、
もちろん、
「ちょっと、アタシはここまで着飾る必要はないと思うんですけど!?」
「いけません。チャコラさんは、ルキディア様のすぐ傍でお役目があるのですから、国民の目にもさらされます」
「へっ!? こ、国民の目にも触れるんですか!? ルキディア様……!」
強張る表情でこちらを見てくるチャコラに
チャコラは求めている応えじゃないというように騒いでいたけれど、見違えるような姿に変身していた。
チャコラの灰色の大きな耳とモフモフの尻尾が強調されるような、青いドレスに蝶があしらわれている。
中のレースが少なめのため、
「まぁ、こんなドレスなんて着ることは一生に一度しかないって、両親にも言われましたけど……。あっ! アタシの村にも招待状をいただき有難うございました。特に弟妹が喜んでいました」
「それは何よりです。お二人とお話し出来ないのが残念ですが、楽しんで頂けたら幸いです」
すべての支度が終わった頃合いを見計らったかのように扉がノックされる。
近くにいたメイドが扉を開けると、正装姿に立派な
「ルキディア様、お時間前となりました。すでに国民は集まっておりますので、心構えのご準備を」
「かしこまりました。それでは、参りましょう」
「……き、緊張するわね」
先導するレイと他二人の騎士に、後ろからチャコラが歩く。大きな扉を開いた先には、国民に挨拶をするバルコニーがある部屋に足を踏み入れた。
すでに国王陛下のお父様に、お母様が待機していて
耳を澄ますと外から国民だろうざわついた声も聞こえてきた。王国楽団のラッパ音を合図に、二人の後ろからついてバルコニーに出る。
「皆の者、この素晴らしい晴れの日に集まってくれたこと感謝する」
「国王陛下ー! 万歳!!」
「王妃様、第一王女様、万歳!!」
大声で声援を送る国民たちに応えるように
「今年で、モスフル王国も50年の時を迎えられた。これも、国民あってのことだと自負している。皆の者、私たちを支えてくれて有難う。今日は祭りを存分に楽しんで行ってほしい」
「国王陛下、万歳!!」
「……す、すごい熱気……」
微かに聞こえるチャコラの声は風に消えていき、10分ほどの挨拶を終えた
「
「冷静に笑顔で手を振られていただけでご立派でした。本日、一日仕事ですので気を引き締めてくださいね」
「……ルキディア様。ファイトー。影ながら応援してますね」
レイに忠告されながら玉座へ向かうと、今度は椅子に座って訪れる国民たちの声を聞く役目があった。
昼食はもちろん取ることは出来ない。
国民の話を聞き終わったのは、夕暮れの頃。
今日は一日晴れているようで、大きな窓から覗く空にはうっすらと星が見えた。
「ルキディア。今年も良く頑張ってくれた。晩餐会まで、一時間はある。軽食をとってきなさい」
「国王陛下。
「ルキディア……あまり無理はしないでくださいね? 貴方は、今年で成人した身とはいえ、まだ成長期なのですから」
お父様とお母様に労われ
すぐに自室に戻ってお色直しを済ませた頃には晩餐会の時間、20分前になっていた。
「ルキディア様、本当に何も食べないんですか? 国王陛下も、王妃様もおっしゃっていたじゃないですかー」
「一日くらい問題ございません。チャコラは、しっかり食べてくださいね? 夜も長いですから」
「それでは、ルキディア様。水分補給をされてください」
レイに
朝は、薄紅色のドレスを着込んでいた
頭は三つ編みのハーフアップで、細かい宝石が散りばめられていた。
「モスフル王国の友人である各国の王、並びにご子息、ご息女。重臣たちも集まってくれたこと感謝する。
国王陛下であるお父様の話が終わって拍手が起こると、それぞれ食事や
まだモスフル王国は出来て浅い国であり、基本的に友好国は少ない。海を渡らない範囲の数か国だ。
ただ、今年は
「ルキディア様のご趣味は?」
「
「モフモフとは? もしや、魔物のことではありませんよね? ペットの犬猫などでしょうか」
痛いところを突かれてしまった。確かに、モフモフした生き物はペットでも多くいる。
嘘は言っていない。
「レーイ。ルキディア様、王子様たちに囲まれてるけど、いいの?」
「……当然だろう。建国祭の晩餐会は、そういう場でもある。モスフル王国は他国と比べたらまだ歴史は浅いが、力を強めている。それに、ルキディア様は将来女王になられるお方だからな」
「なるほどねー。でも、アタシから見た限りでは……あの中で、ルキディア様を守れる男はいないわね」
横目で近くに
「そろそろお開きとなる頃合いで、将来この国を背負って立つ、我が娘。第一王女であるルキディアの花婿を、このときをもって正式に候補者を募りたい」
「はわわ!? お――国王陛下。そのお話しは存じておりませんでした」
「うむ。ルキディアは立派に責務を果たしてくれると信頼しているが、それを支えてくれる相手は早めに見つけておくことに越したことはない」
思わず口を押えた
横から驚く声がして、そちらに視線だけ向けると
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