第十七話 モフモフの赤ちゃん
丸くなっていた形状から、身体が伸びたことで長めの胴体に短い尻尾と手足。
目は丸くて毛色より青みがかった黒色をしていて宝玉のように輝いてみえた。
温かい風に吹かれていたのか、毛はフワフワして触ったら確実に柔らかいはず!
しかも、こんなにも愛らしいモフモフだなんて……!
「か、可愛らしいです……。レイ。
「駄目です」
「もう! レイは、意地が悪いです」
頬を膨らませて抗議する
そのやり取りを見ていた子供たちが、
「お姉ちゃんたち、パパとママみたぁい」
「えっ……? それは、どういう意味でしょうか……」
「――子供が言っていることです。深い意味はないでしょう」
喧嘩している
子供は可愛くて素直だけれど、
レイもこう言っているのだから、気にするような内容ではないのかもしれない。
「ちょっ……アンタたち、ルキディア様に向かって変なこと言ってるんじゃないわよー!」
「あの……。チャコラは、子供たちが言っている意味を理解しているのですか?」
「えっ……と。レイも言ってるとおり、大したことじゃないんじゃないかしら」
目をそらす仕草は完全に何かを誤魔化しているときのチャコラだ。
子供たちは、チャコラが追い立てたことで、楽しそうに逃げて行く。
取り残された
近くに親が居たら良いのだけれど……。人が居たら近づけないかもしれないと、触りたい衝動を抑えて
「はっ! とても今更なのですが、あの
「そう言われると……。幼体だったので、すっかり忘れてましたねぇ?」
「赤ちゃんだったからとか……? 何か、半径5メートルにも法則があるのかしら」
それが、モフモフの赤ちゃんは無効かもしれないという朗報!
でも、赤ちゃんは弱いと思う。
「ぐぬぬ。
「まぁ、良いんじゃないですかぁ? モフモフに変わりはないですし」
「あっ! 見て、アレ! お母さんじゃない?」
チャコラの呼びかけで
そこには黒い艶のあるモフモフの毛に、長い胴体をした紛れもない
本当に親なのかは判断がつかない。
さすがに別の成体が、赤ちゃんを見つけたからと美味しく食べたりはしないはず……。
胸の高鳴りに両手を握りしめる中、その成体は赤ちゃんの匂いを嗅いだあと、毛繕いをするようにペロペロと赤ちゃんを舐め始めた。
思わず
「ふふっ。問題ありません。あの行為は、
「つまり……親子ってことで良いのね。良かったぁ。これで一安心ね」
「あっ。母親が子供を咥えて走っていきましたよぉ」
器用に首根っこの柔らかい部分を口に咥えた
暫く物陰に隠れたまま、触りたかった気持ちが溜息として漏れた。
「うぅ……。残念ですが、これで良かったのです。魔物は、人間の匂いがついたら子供でも殺すと言う話を思い出しました……」
「あー……。良くある話ですねぇ。相手は、可愛くても魔物ですし」
「残念だけど、良かったのかもね。あっ、そろそろ時間じゃない? 日が沈む前に帰ってくる約束だし」
約二ヶ月後に控えている建国祭のため、遠出は夕刻前といわれている。
チャコラの双子さんにもモフモフさせて頂いて、
「とても楽しかったです! チャコラ、今日は有り難うございました。シャカさん、マカさんも、とても可愛かったです!」
「こちらこそ! でしょー! アタシの自慢で可愛い
「本当に、お嬢に食べられなくて良かったですよぉ」
――また、不敬なことを口にするレイに目を
それでも、
馬車が見えてきたところで、
それによって足を止める前方のレイと、後方のチョコラは首を傾げている。
「レイ。
「えっ……? ちょっ! お嬢ー!? それは、酷いですってぇ」
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