第46話 ベスト8
「二回戦突破おめでとう、アリス」
「ジル様、ありがとうございます。あの、コレットは?」
「コレットなら換金に行ったよ。大儲けだってはしゃいでいたね」
「まあ!」
アリスがクスクスと笑いながら、オレの隣に座った。やっぱりアリスが隣にいると落ち着くなぁ。
「いやー、大量大量! 財布がこんなに重いなんて初めてだぜ! あ! アリスおつかれー」
コレットがにやけた笑みを浮かべてご機嫌で帰ってきた。
「はいこれ。ジルの分な。約束通り倍にして返すぜ。俺は約束は守る女だからな」
「ああ。たしかに受け取った」
オレは重くなった革袋を受け取ると、コレットが不思議そうな顔でオレを見ていた。
「どうした?」
「いや、数えないのか? 俺がちょろまかしてるかもしれないぜ?」
「オレはコレットを信じているからな」
「よせやい、照れるじゃねえか!」
コレットがオレの背中をバシバシ叩きながら隣に座った。
「コレット、お前の番そろそろじゃないか?」
「おっと、もうそんな時間か。ちょっくら行ってくる。俺に賭けてもいいんだぜ?」
「オレは賭け事はしない。金に困ってないしな」
「わたくしも賭け事は……。コレット、がんばってくださいね」
「おう!」
コレットは意気揚々と歩いていった。さて、コレットはどこまで進むのかな。
ゲームでは、選択肢次第ではコレットが優勝するルートもある。コレットは優勝できるだけのポテンシャルがあるということだ。
だが、コレットはアリスの二回戦の相手に勝ったことがないと言っていた。
実戦には運もからむとはいえ、コレットの実力はそこまで高くないことになる。
本当にコレットは優勝できるのか?
今回の新人戦では、いわゆる主人公補正があるのかどうかも注目すべき点だな。
「ジル様、コレットが出てきましたよ!」
「ああ」
コレットの相手は知らない奴だな。オーソドックスに片手剣と盾を持った相手だ。
「では、始め!」
「うらあ!」
試合開始と同時にコレットが吠えた。
コレットが相手目掛けて右手の片手剣を振るう。相手の男は冷静に盾でコレットの片手剣を受け止めた。
しかし、コレットは止まらない。今度は左手に持っていた片手斧を男の盾に叩きつけ、突き飛ばした。
コレットは片手剣と片手斧の二刀流だ。武器の選択に迷っていたコレットに、オレが助言した結果だ。
「薪割り!」
コレットがスキルを発動する。片手斧の攻撃スキルだ。相手の男は盾で受け止めようとする。それがコレットの狙いとも知らずに。
バキバキッ!
盾の砕かれる音がここまで聞こえてきた。
斧は相手の防具への攻撃補正があるからな。スキルを使えば、木の盾を割るくらい簡単だ。
盾を失った相手の男は、それでも善戦した方だろう。しかし、最終的な勝者はコレットで動かなかった。
「やったぜ!」
「よくやったコレット」
「コレットすごいです!」
会場の拍手に応えるように両手を振っているコレットは、拍手を送るオレたちに気が付くとニカッと笑って親指を立ててみせたのだった。
◇
昼食を挟んで、試合はどんどん進んでいく。このまま順当に三回戦、四回戦を勝ち進んだオレたちは、気が付けばベスト8まで勝ち進んでいた。
ここまでくると、ゲームで登場した名前のあるキャラばかりが残っているな。
まずはこの国のお姫様。エグランティーヌ・パラディール。【聖騎士】のギフトを持つ回復魔法も使え、強固な防御力を誇る騎士だ。敵の目を引くスキルも持っており、タンクには最適なキャラだな。巷では姫騎士と呼ばれているらしい。
そして、この国の騎士団長の息子。コルネリウス・アッヘンヴァル。【槍聖】のギフトを持つ槍のスペシャリスト。アンベールの槍版だと思えばいいな。……そう思うと急にザコのように思えるが、本人はいたって真面目な好青年のドワーフだ。
次に、この国の宮廷魔法使いのエルフ娘。エヴプラクシア・マカロヴァ。【賢者】のギフトを持つ魔法のスペシャリスト。回復魔法を除くすべての属性の魔法に適性があるかなりのレアギフト持ちだ。本人は高飛車で負けず嫌いなキャラだ。
次に貧乏騎士の息子。ヴァルラム・ブーゾフ。【弓士】のギフトを持つ弓のスペシャリスト。気弱そうなエルフ少年だが、弓の攻撃力は全武器中最も高いからな。注意が必要だ。
最後に豪商の娘、カロル。【魔剣生成】というかなりヤバいギフトの持ち主だ。この魔剣だが、魔力による制限があるが、まるでガチャのようにさまざまな効果の魔剣を生成することができるギフトだ。彼女の親は、魔剣を売ることで店を大きくした。まぁ、本人にはギフトによる剣士の適性がないのが救いだな。
そこにオレたち三人を加えたメンバーが、新人戦のベスト8だ。
対戦カードは、オレとエヴプラクシア、アリスとエグランティーヌ、コレットとヴァルラム、コルネリウスとカロルという組み合わせになった。
オレはエヴプラクシアに勝てる自信があるが……。アリスとコレットは大丈夫だろうか?
まぁ、なるようにしかならんな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます