行ったことがないのに夢見る場所

夕日を手の平にのせるようにして

三本の大樹が枝を広げている


オレンジ色の木洩れ日が

静かに降り注ぐ森の中


天上からの光雨を浴びながら

生まれたての息をして

耳を澄ませる


岩陰に潜んでいるのは岩の影だけ

聞こえるのは自分の呼吸音だけ


孤独よりも更に独りきりの世界では

存在が幻であり

幻が存在でもある


何かの鳴き声が聞こえたようで

顔を上げると

風が葉叢はむらを抜けていった


あれは鳥だったのだ

そう思った瞬間に

鳥は出現するのだろう


縄文時代よりもずっと昔の

誰もいない森の記憶


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16817330656810949455

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