6 自己紹介
作戦室——それは、教室のようなもの。特別措置の作戦を計画する段階から、実際に特別措置を行なう時まで、司令塔として利用する部屋だ。すべての特別措置は、作戦室から始まり、作戦室で終結する。
塚原組が利用することとなるその部屋の扉を開いたところ、廊下よりもさらに薄暗い室内に八人の姿が見えた。ほとんど真っ暗なこの部屋は、例えるならば、航空母艦などの戦闘指揮所(CIC)のようなものだ。
「お、おはようございます。今日からよろしく……」
一斉に視線を受けた私は、ひとまず挨拶をするに努めた。後ろから続いて部屋に入ってきた歌恋も、同じように挨拶をした。
八人がいるテーブルに歩み寄りながらそれぞれの顔を眺めてみれば、国立清和中学校の同じ校舎に通っていた知っている顔もちらほらある。
しかし、そこで会話に花を咲かせる前に、再び作戦室の扉が開かれた。
「おはよう。今日からの君たちの担当教員、
そう言いながら私たち十人がいるテーブルに歩いてくる塚原の姿は、どうも
◇◆◇
私たちは、テーブルの周りに置かれた椅子にそれぞれ座っていた。
テーブルに書類をまとめたファイルをバサリと置いた塚原も腰を下ろし、生徒たちの顔を一周するように眺めた。
「よし、まずは自己紹介だ。あまり時間がないから、名前と所属係だけ言っていこう」
じゃあ、と言って彼が最初に顔を向けたのは、彼の隣に座っていた、その女。
「はい、
「彼女は第二実行係だ。では、次。時計回りで」
梓のことは、中学時代には同じ校舎に通っていたため知っている。
彼女は少しプライドが高く、だから「第二実行係」とは言わずに、単に「実行係」と言ったのだろう。しかし、塚原の補足によって感情が害されたようで、少しきまりの悪い顔をしている。
なお、第二実行係とは、第一実行係と同じように現場には向かうが、第一実行係の補佐をするのが役目だ。実際に特別措置対象者を殺害することは多くない。
時計回りだと、次は梓の隣に座っている美人。
「
毛先のまとまったショートヘアの彼女は、きっちりとしている感じの印象だ。組の筆頭でもあり、作戦の立案や計画書・報告書の作成などに携わる企画係という肩書きが、とてもよく似合っている。
「
梅本のことは、中学の頃から知っている。……といっても、名前と顔ぐらいで、人柄などは何も知らない。
いずれにせよ、悪い噂を聞いたことがないので、普通の人なのだろう。
「
お見合いの場のような挨拶で、全員の視線が彼に集中した。
とはいえ、表情は柔らかく、心は穏やかなのだろうと察した。
次は……。
「連絡係、
非常に端的かつ明瞭な自己紹介。嫌いじゃない。
ちなみに、連絡係とは、企画係と実行係とのやり取りの仲介を行うのが役目だ。特別措置中に実行係と企画係が直接連絡することはなく、連絡係を通すのが決まりだ。
「えっ、えっと、……
思わず大丈夫かと声をかけたくなる。
しかし、同じ第一実行係だというのだから、うまくやっていかなければいけない。少し心配するところはあるが、それでも仲間としてやっていこうと心を奮い立たせた。
次とその次は男二人、そして、最後に私と歌恋だ。
「
「次」
好きな食べ物の話に移行しそうになったが、塚原がバッサリと切り捨てたので、うるさい……元気な藤堂の隣に座っている男が顔を上げた。
「っチッ、
なんだコイツ。
ってか、最初の「っチッ」って何だよ。絶対に集団生活不向きだろ。
と思いつつ、次は私なので。
「山瀬瑠璃香です。第一実行係でした、よろしくお願いします〜」と笑顔で。
「山瀬、しっかりしろ」
えっ! どうして私だけ「しっかりしろ」って言われたの。語尾が伸びたから? せめて、直前の山下にも言ってほしかった。
そして最後は。
「大嶺歌恋です。同じく、第一実行係です。よろしくお願いしますね」
歌恋がすぐに自己紹介したので、私に視線が集まったのはほんの短時間で済んだ。ありがとう、歌恋。
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