アルティメット・オルガニズム〜究極生命体ウオ〜【毎週土曜21時更新】

加賀倉 創作(かがくら そうさく)

第一話『アルティメット・オルガニズム襲来ッ!』

 暗黒宇宙に浮かぶ奇跡の星、地球に、光り輝く謎の球体が急接近!

 直線軌道上を、目にも留まらぬ速さで突き進む。

 隕石だろうか? 流星だろうか? はたまた……

 とにかく、その球体は、地球の真横に突っ込んだ。

 衝撃波の影響が心配されたが……


 なんと、地面に衝突はしなかった。


 エジプトの広大なサハラの砂砂漠すなさばくの上空。


 鳥たちの羽ばたく、空高いところで、静止した。


 不気味に浮かぶ、巨大な……


 金色の球体。


 その近くに、一頭のラクダに乗った若い男女の観光客が居合わせた。

「ねぇ、あなた、上を見て!」

 ラクダの背の後方に乗る女性が、球体を仰ぎ見る。

「……なんだありゃ? ピカピカに輝く、金の玉じゃあないか! にしても美しい……もしや太陽神ラーが顕現けんげんされたのか……」

 男性は、玉の眩しさに思わず手綱を離して、両手で光を遮る。

「そんな、大袈裟よ! 私にはただのパチンコ玉くらいにしか見えないけれど」

「おいおい、感受性が低いんじゃないのか?」

「そんなことないわ。たぶん、私乱視だから、見えにくいのよ……あ、今ちょうどピントが合った。確かにつるつるてかてかで、立派な金の玉だこと!」

「おい待て、なんだか金の玉の様子がおかしいぞ!」


 金の玉はブルブルと震え出し……

 カパッと、上下真っ二つになって貝殻のように開き始める。

 半球と半球の隙間から、五本指の腕が伸び……

 そしてその中からは、人影のようなものが!


「確かに、動き出したみたいね……って、キャー!」

 女性は、目元を両手で覆い隠す。まるで、見てはいけないものを見てしまったかのようだ。


 だが、女性がそう反応するのも無理はない。


 なぜならなんと!


 金の玉から出てきたのは!!


 全裸の、つるっ禿ぱげの、ムキムキの集団だったからだ!!!!


「あいつら、全裸じゃないかぁ!! しかも、古代ギリシアの彫像のような、筋肉モリモリマッチョマンの……変態だ!! かっちょええっ!!」

 男性は酷く興奮している。

「あれ、でもよく見たら、アレがちっさすぎてほとんど良く見えない……というか、ついてないわ!」

 女性は変態集団のうちの一人の股間を指差す。

「ははぁ、ギリシア彫刻ってのは、アレが控えめなサイズで作られるとは聞いていたが、ここまでとはな!」

「でもあいつら、一体何者なの?」

 

 筋肉モリモリマッチョマンの変態どもが、割れた金の玉から、ゾロゾロと、飛び降り……

 

 軽々と、着地。


 大地を踏み締め、歩み始めた。


「はぁ!? あんな高さから身一つで飛び降りて、怪我もしないだと?」

 男性は驚愕する。

「ちょっと待って……ひょっとしてあいつら、こっちに向かってきてない?」

 怯える女性。


 筋肉モリモリマッチョは……


 陸上選手顔負けの美しいフォームで全力疾走の大行進を開始した!


「まずいっ! 狙われているっ! 逃げるぞ!」

 男はラクダの手綱を引く。

 

 ラクダは、ゆっくりと踵を返し歩き出す。


 女性の背が、マッチョメンの方に向く。


 その無防備な背中は、格好の的。


「もう! せっかくのバカンスが台無しだわ」

 女性がそう言って後ろを振り返ろうとすると……

 目の前には、とりわけ筋肉モリモリで、頭がテカテカな個体。


ダイDIE・ナ・?卍

 その個体は、単調な声で女性の言葉を鸚鵡返しする。


「キャー! もう追いつかれ——」

 次の瞬間、豪速の手刀が……

 

\ブシュゥーッ!/

 女性の頸部けいぶを一刀両断。


\コロッ/ \コロッ/ 

 転がる生首。


\ボゴッドサァッ!/

 地に堕ち、叩きつけられる首無しの死体。


 男性が異変に気づき、振り返る。

「ギャーッ!! 死んでるっ!!」

 遠のく女性の死体を確認。

 そして筋肉超モリモリ個体と目が合って……

「殺されるっ!!」 

 と叫ぶが……

 

\ブシュッ!/ \ブシュゥーッ!/

 二つの手刀が、男性の胴体を、ラクダもろとも、割いた。


\バラバラバラッ/

 無惨に転がる死体。


 筋肉モリモリマッチョマンが、標的の抹殺を完了したので、立ち止まると……


 黄色い砂の上に、ドス黒い血溜まりが広がった。


 それを見て、他の筋肉モリモリマッチョメンも走るのをやめた。


 総勢百五十体の筋肉ダルマたちは、狩りを成功させた筋肉超モリモリ個体の元に集合し、何やら会話をし始める。

 今、口を動かしているのは、確かに筋肉超モリモリ個体なのだが……


卍もう! せっかくのバカンスが台無しだわ。キャー! もう追いつかれ——ギャーッ!! 死んでるっ!! 殺されるっ!!卍


 なぜか、寸分違わない、死体となった男女の声が聞こえてくる。


 彼らは、さっきの男女の声を正確に記憶しており、真似ているのだ。


 つまり、彼らは、地球人の言語を学習可能、ということだ!


 それはもちろん、彼らの高い知能を証明している。


 加えて、そのたくましいボディと、走っていた姿からも自明だが、運動神経も申し分ない。


 一体、何者なのか!?


 そう。


 彼らこそが……


 宇宙よりの刺客、『究極生命体アルティメット・オルガニズムウオ』だった!!


〈第二話『ヒューマン・ウオ戦争勃発ッ! が、瞬く間に終結ッ!』に続く〉

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