笑顔の人

海星

第1話 みたいなもの

―――夜の海。


「さみーなら帰っていいぞ」

「ううん。いる。いたい。」

「別に求めてねーし。」

「歳だから余計に冷えるって?気使ってくれてる感じ?」

「そんな変な気の使い方しねー。」


「……ねぇ侑海ゆうき。」

「ん?」

「いつまであたしを突っぱねるの?」

「……別にそんなわけじゃない。」

「じゃあなんでそんな冷たいの?来たくてきたのに。」


「別に呼んでない。」

「……あたしが嫌い?」

「『嫌い』なんて言ってない。でもさ、俺がさ、極力近付かないようにしてるのは知ってるよね?」

「分かってる」


「『ここに来たい』って言うのも『社交辞令』『建前』だと思ってた。」

「なんでそこまで距離作るの?」

「……俺の『親』じゃない。」

「でも私は『息子』だと思ってる。」

「口だけ。」

「なんで?」

「いい。言いたくない。帰って。」


「言って!!」

「…キレる意味がわかんねーから。」

「私はこんなに気にかけて、心配もしてる。これも迷惑?!」

「……所詮あなたは『他人の親』。俺に行ったよね?『息子』って。たった一回かもしれない。でも俺は覚えてる。……だから、俺はあんたが嫌い。所詮俺に『母親は居ない』って叩き付けた。だからあんたが嫌い。」



「いつそんなこと言った?覚えてない」

「都合いいね。俺は覚えてる。」

「傷付けたならごめん。」

「別に。所詮『他人』だから。」



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