第一部 序章 -始まりは放置国家-

プロローグ、あるいは……

 竜の時代ドラグエイジ九八一年、三月。


 ――目の前には、巨大なドラゴン。


 苦労の末ようやく追い詰めたそれに、俺は複雑な感情を覚えていた。


「レンドウ君、お願いします」

「やっちまえ! ――あ、これ使った方がいいんじゃねぇか!」

「レンドウならできるよ!!」

「頑張って!!」

「……こっちもお返しします! 頑張ってください!」


 投げ渡された二振りの短剣を、両手を使ってキャッチした。


「……わーったよ、とりあえずやってみる」


 ■■■■、ダクト、レイス、カーリー、まもるからの声援を受け、心中でため息を吐きつつ向き直る。

 グダグダしている間に■■が復活でもしちまったら、死んでも死にきれねェもんな。


 ――さっさと済まそう。

 ――終わらせるんだ、この戦いを。


「決めちまえッ!!」

「頑張ってー」

「ふんっ」

「レンドウ君、頼む!」

「決めてください!」

「油断しないで!」

「終わらせてくれ」

「……やれ」


 ■■■■、■■■、アシュリー、大生おおぶ貫太かんた、■■■、■■■、■■■■■■。


 殆ど重なっていたそれらの声を聴いて、思わず笑みが零れた。


 いや、でもこの状況で「ふんっ」は無くないか?

 どんだけ素直じゃないんだよ。俺が言えたことじゃないか。


 ――仲間たちの期待を背負ってんだ。


 最後くらい、俺が決めてやらねェと……なァッ……!!


 そうして……今までの人生で、最高の一撃を放つ。



 ――これは……記憶を無くした俺が人間界を訪れ。

 友を得て、愛を知り、呪われた■の龍を滅ぼすまでの物語だ。


 まさかこんなことになるなんて、一年前には想像もつかなかったよな。

 だってどいつもこいつも、最初は敵だったんだから……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る