第40話 ソロモン出世する
「見事であったソロモンよ」
玉座に腰掛けた魔王ゲリベーナ様が俺を褒め称える。謁見の間には魔族の幹部達が集い式典に参加していた。
そして魔王ゲリベーナ様に跪いているのは俺とホルヌスだ。これでホルヌスは四天王の中でもその地位を確固たるものにできたし、その部下である俺も出世を遂げるはず。
「ソロモンよ、お前は人間でありながら我ら魔族に協力し多大な貢献をした。そしてお前の策謀や立案を評価し、お前を魔族宰相として召し抱えることにする。魔戦参謀の肩書きもそのまま持つことを許そう」
「ありがたき幸せ! このソロモン、必ずや魔王様のご期待に沿ってみせましょう」
やったぜ!
これで俺の魔王軍での地位は絶対的なものになった。実質的に四天王と同格と言っていいかもしれん。魔戦参謀の肩書きもあるからホルヌスの配下であることは変わらないが、あいつとは今じゃ親友だからな。これからもあいつを支えてやるつもりだ。
「魔戦将軍ホルタヴィアヌスよ。よくぞソロモンを見出し、我ら魔王軍に勧誘してくれた。此度の戦役はお主の率いた軍の手柄でもある。お前にも褒美をやらねばならんな。魔戦将軍ホルタヴィアヌスよ、新たに四天王統括という役職を設ける。その地位をお前にやろう」
「はっ! ありがたき幸せ。このホルタヴィアヌス、魔王ゲリベーナ様のために全ての人間国家を支配領域に加えてみせましょう」
「うむ、期待しているぞ。2人とも、妾の横に並び立つがいい。ではこれからの人間支配のあり様について説明しよう。これは会議にて正式に取り立てられた案である。この発表をもって新たなる法の制定としよう」
俺とホルヌスはそれぞれ魔王ゲリベーナ様の両隣に立った。ちなみに俺が左側だな。さて、ここからは俺が説明することになってんだよな。
「まず人間は全て奴隷と支配階級に分けることとする。支配階級に据える人間は元領主などの要職に就いていた者、四天王に協力していた人間だ。勿論魔王様に忠誠を誓うことが前提だがな。そして四天王は特定の人間を支配階級に引き上げる特権を持つこととする」
そう。魔族が人間を支配するのにも結局人間の協力者が必要なのだ。特に政治力において魔族は人間には勝てないというのが俺の見解だからな。
そして支配階級に据えられた人間はその特権を保持するために保身に走る。元々貴族にいた奴らが殆どだからな。平民がどうなろうと知ったことじゃないと考えてる奴らばかりだ。
そいつ等にしてみりゃ上がすげ変わっただけの話で、地位を約束してくれるなら文句はないだろう。
そして俺は人間に対する新たな法案を次次と発表した。この法律は人間法という名前で近い内に施行される。クク、街の奴らが絶望の表情を浮かべる様を思うと笑いが止まらねぇな。
「素晴らしい法案だ!」
「人間どもには我らの受けた屈辱を倍にして受ける義務がありますからな!」
「魔王様万歳!」
俺の制定した法案はすこぶる好評のようだ。これから俺には薔薇色の人生が待っているはず。そして俺への本当の褒美は既に約束されている。
そう、俺はあの魔王ゲリベーナ様の褐色肌のナイスバディを味わう機会を得ることができたのさ!
寄生虫ダキムを使って身も心も俺のモノにしてやるぜ。
* * *
「ソロモン、上手くいったようでなによりだったな」
「ヌクートか。色々協力してくれて助かったぜ。お前は藤真と戦いたかったみたいだから悪かったな」
城の中庭にいるとヌクートの奴が話しかけてきた。ヌクートの奴は人間嫌いで残忍な奴だが、俺とは仲が良い。やはりナトリウム王国滅亡の立役者、っていうところで一目置かれたのが大きいな。
「まぁな。だが実物を目にしてお前に協力することにして良かったと思ったぞ。あれは化け物だ。正面から行けば俺は簡単に殺されていただろう」
ヌクートにそこまで言わせるのか。わざわざ演技まで仕掛けて奴らを嵌めたのは正解だったようだな。
「それほどか藤真悠。ま、如何にグランドマスターといえど腹の中までは鍛えられねぇからな。死ぬときの奴らの悔しそうな顔はなかなか傑作だったぞ。お前にも見せてやりたかったわ」
「それは俺も残念だったがかまわん。ホルヌスの奴はあの藤真悠のケツを味わいたかったとか言って笑っていたぞ」
そういや藤真悠の顔はホルヌスの好みなのかもしれんな。ケツマーンもイケメンだったが可愛い系の方が奴に刺さるんだろうな。
「ああ、そういやケツマーンはもう飽きたから処分したとか言ってたな。今は10歳くらいの人間の男を調教してるぞ」
そう。ケツマーンに飽きたホルヌスはやはり可愛い男がいいとか言ってたな。わざわざ街を散策して好みの男の子を3人くらいゲットしていたぞ。その3人には勿論寄生虫ダキムをプレゼントしてやったがな。
「あ、相変わらずだなホルヌスの奴は」
「まぁこれからはホルヌスも気に入った男を見つけたら遠慮なく掘れるからな。あいつの目標は1000人斬りらしいぞ」
「聞きたくなかったぞそれは」
さすがのヌクートもドン引きしたか。
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