ナトリウム王国壊滅?
第28話 クソメテオ
「なぁ、いっそのことナトリウムの王都を攻めたらどうだ?」
「いきなりだな。何か面白いことでも考えたのか?」
葬送を終えた後、アジトへの帰路の途中に俺はそう提案した。俺のクソ魔法のスキルは遂に10になった。そして得たクソ魔法はまさに街を壊滅させかねない破壊力を秘めていたのだ。
「まぁな。儀式魔法だが王都を必ず陥落させてやるよ。これが発動すれば俺達の勝ちは確定するだろう」
ただし俺の独壇場になると思うがな。割と離れた位置からも使える魔法なので気づかれる前に発動できるはずだ。
「ほほぅ、それは凄いな。一体どんな魔法なんだ?」
「ああ、それはな……」
俺はその究極のクソ魔法の効果をホルヌスに耳打ちした。するとホルヌスはマジかよ、っていうなんとも微妙な表情を返す。
「その後に街を攻めるの大変じゃないのか……?」
「狙いは敵の城だ。王国の騎士なんかはそこにいるだろうからな。そいつ等を始末することもできる。さすがに街全体は無理だろうからな。ピンポイントに機能を麻痺させてやればいい。城を落とすときは俺がキレイに浄化できるしな」
そこまで話すとホルヌスは真剣に考え始めた。俺としてはクソ魔法の対抗策がないうちに決着をつけたい。恐らく俺のことは向こうも知っている可能性があるから、というのもあるのだ。
「なるほど。しかし随分と急いでいる感じがするのはなぜだ?」
「まず俺の存在が知られることによりアドバンテージが失われることが一つ。そしてもう一つはグランドマスターの藤真悠が育つ前にケリをつけたいからさ」
ホルヌスの話ではグランドマスターといものは相当ヤバイクラスらしい。全ての魔法を使えて高い武力を誇り、アホみたいな魔力を有するという。
そんな魔王と同格以上のチート野郎なんか相手にしたくないね。恐らくはまだ力をつけている真っ最中なはずだから、あわよくば強くなる前に始末したい。
「なるほど、確かにグランドマスターは脅威だな。今はどの程度の強さなのかは知らんが、時間をかけると不利になるということか」
「まぁ、そういうことだ。それに本丸を落とせば後はずっと楽になるだろ?」
「なるほど、確かにな」
ホルヌスは俺の話にウンウン頷く。そして決意を胸に顔を上げた。
「よし、やるか。頼りにしているぞソロモン。帰ったら早速作戦会議だな」
ホルヌスはニヤリと笑い、親指を立てて白い歯を光らせた。
* * *
それから2週間後、俺達はナトリウム王国の王都スカトールを攻めるべく軍を進めていた。他の街には見向きもせず真っ直ぐに王都を目指したため、結構な強行軍だったがな。だがさすがは魔族。体力あるよなー。
「ここから数キロ行くとスカトールが見えてくるはずだ。本当にこんな距離からで大丈夫なのか?」
「ああ、任せておけ。魔法を手に入れたときに使い方もわかるからな。有効射程距離はばっちりだ」
俺は早速地面に魔法陣を描く。儀式魔法に魔法陣は欠かせない。この究極のクソ魔法は完成までにやや日数がかかるという欠点があるが、一度発動すれば誰にも止めることはできない。そう、仮に俺が死んでも魔法は発動するのだ。
「よし、できた。ではこれより儀式魔法の詠唱に入る。ブリブーリブリブーリ ゲリトーマ ランケード クソブーリクソブーリ ウンコーク エーヤー……」
俺は全神経を集中させ、魔法の詠唱を始めた。すると魔法陣が茶色く輝き俺の魔力を吸っていくのがわかる。
「全てのウンコよ巨大な星となり愚かなる者に鉄槌を与えよ。クソメテオ!」
詠唱が終わると魔法陣から茶色に輝く光が立ち昇り、柱となる。そしてその柱は遥か上空に消えていった。
「よし、成功だ! 3日後、スカトールの城に巨大なウンコが落ち、壊滅的なダメージを与えるだろう」
この魔法によって集められるウンコは人間のモノだけではない。ありとあらゆる生物からウンコを集め、大きな塊となって城に落ちるのだ。そしてもちろんこの魔法で集められたウンコには大量の様々な寄生虫が棲息することになる。
ゆえにこそ究極のクソ魔法なのだ。魔法は発動した。これでももう誰もクソメテオを止めることはできない。王都スカトールはクソまみれ確定だな。
「よし、全員この地に3日駐屯する。周囲の警戒は怠るなよ?」
ホルヌスがここに駐屯することを伝えると、キャンプや天幕の用意のため部隊が動く。俺は高みの見物だ。クソメテオはかなりの魔力を消費するからな。疲れるんだよ。
「俺はちょっと休ませてもらうわ。メルディナ、膝枕してくれ」
「はい、ソロモン様」
俺はメルディナに膝枕を頼むと木陰でゴロンと横になった。
あーちかれた。3日後が楽しみだぜ。
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