第10話 便失禁野郎再び

 俺は採取を終えてギルドに戻り、受け付けに集めた薬草を提出した。


「はい、数えますのでお呼びするまでお待ち下さい。番号で呼びますのでこちらの木札をどうぞ」

「あ、途中ゴブリンに遭遇したからやっつけて魔石回収したんですけど」

「なら一緒に査定しますね。お預かりいたします。もしオークなど素材の取れる魔物を持ち込む場合は隣の解体場に提出お願いしますね。そちらでも魔石の査定はやっておりますし」


 そういや隣のやたらと大きい建物は解体場だったな。まだ討伐は受けられんからしばらく世話になることはないか。しかし素材となると魔界ぎょう虫は使えんな。オークなんかは食用の肉になるから寄生虫入れるのはさすがにアウトだろう。あんなもんが人に寄生でもしたら大変なことになる。


「わかりました」


 俺は番号の書かれた木札を受け取り、そのへんに座った。俺のクソ魔法はレベルは5と高いが、直接戦闘に使えそうなのは寄生虫召喚くらいしかない。他にもウンコでゴーレムを作ったり、相手を便秘にしたりできるが戦闘には向かないだろう。ウンコで作ったゴーレムなんてパワーはないだろうしただの歩く汚物でしかない。しかも大量のウンコが必要だから使い時もないよな。


 待てよ、強制大脱糞を使えば足りるかもしれんな。ふむ、それでも魔物討伐に使える代物じゃないか。マジでろくでも無い魔法しかないな。


「3番でお待ちのソロモン様ー」


 色々考えている間に俺の番号と名前が呼ばれた。査定が終わったようだ。俺は期待を胸に受け付けへと赴く。


「お待たせしました。薬草10リータとゴブリンの魔石一つで銀貨3枚と銅貨5枚になります。ここから税金を引いて銀貨1枚と銅貨7枚、銭貨5枚ですね」

「1リータってどのくらいなんですか」

「この箱一つ分ですね」


 受け付け嬢が見せてくれた箱は1リットルの紙パック程のサイズだった。


「この箱一つ分で初級ポーション1回分の材料になるんです。これ1杯で銅貨3枚ですね。ゴブリンの魔石は1つ銅貨5枚の価値になります」


 薬草採取は見つけられればそこそこの収入になるのか。それでも雑貨屋なんかの1日の日当の方が多いな。まぁ店員やるには計算とか接客マナーが必要だからこの世界の基準だと教育を受けた人間の就ける職業ということになるらしいが。


「はい、確かに」


 やはり税金半分はエグいな。これだけだと宿代にもなりゃしない。もっと稼げる方法はないものか。


 俺は報酬を受け取ると一旦ギルドの外に出ることにした。時刻は昼の3時だからまだ金を稼げる時間だ。もう一度森に行って薬草でも集めるか。


「おい、お前。また会ったな。俺を覚えているか?」


 ギルドの建物の外で怒鳴りつけられるように荒々しく声をかけられた。そいつの方を見てみると革鎧を着込んでいるおっさんが立っていた。おっさんは俺を睨みつけると乱暴に俺の左腕を掴んだ。


「いてぇな、なにすんだよ」

「うるせぇよ。この間はよくも俺様に恥をかかせてくれたな。ヤキを入れてやるからこっちに来いや」


 おっさんは強引に俺の腕を引っ張る。こいつの力は俺よりあるようで仕方なく俺はおっさんに引っ張られるままついて行った。そして着いた先は人気のない路地裏だ。そういやヤキを入れるとか言ってたな。ならこちらもそれ相応の反撃をさせてもらおう。


「覚悟はいいかこの野郎。今なら金貨2枚払うなら許してやるぞ?」

「やだね。つかなに? 人を暴力で脅して金を巻き上げようってんの? なら俺は自分の身を守るために精一杯の抵抗をさせてもらうけど恨むなよ?」


 よし、せっかくだしこいつにあの寄生虫ダキムを使うとするか。


「言ってろガキが」

「寄生虫召喚、寄生虫ダキム!」


 おっさんが拳を振り上げると同時に寄生虫ダキムを召喚する。すると俺とおっさんの間に魔法陣が生まれ、そこから現れたのはひょろ長い人間サイズの生物だった。その姿はまるで小学生の落書きのような人体と言えばいいのだろうか。頭は細長く、身体は針金のように細い。人間みたいに5体そろっており腕や脚もあるのだ。


「ウヒョヒョヒョ!」


 頭には顔のようなものがあるが、口しかない。それが変な笑い声をあげ、その細い身体をおっさにからませる。そしておぅさんの身体を這いずり、鎧の下に着込んだ服の中へと侵入する。


「な、なんだこいつは!? き、気色悪いから取ってくれ!」

「やだね。こいつは寄生虫ダキム。こいつに寄生されても死ぬことはないから安心してくれ。生き地獄は味わうけどな」


 そう、この寄生虫ダキムはとてもおぞましい寄生虫でもある。とにかくこいつの能力がエゲツナイのだ。


「うひぃっ!? お、俺のケツの穴に侵入してきやがった。頼む、もうお前には突っかからないから許してくれ!」


 おっさんは涙目で訴えるが却下だ。こいつの能力は是非とも一度この目で見たかったってのもある。


 俺は半笑いを浮かべ、寄生虫が動き出すのを待った。おっさんは顔を真っ青にしているが、その顔が今度は赤くそまることになるんだろうなきっと。


 さぁ、動き出せ寄生虫ダキムよ!

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