災厄の目覚め~古代に封印された僕が急に起こされてからやらかしたこと録~

やよってんぞ

プロローグ

 ズガーン……。


 ドゴーン……。


 絶えず破壊の音が鳴りやまないそこはさながら世紀末の都市であった。


 確認できる人影はほぼなく、人の形を模したが無秩序に暴れているだけだった。


 どんな悲劇よりも残酷で恐ろしい景色がそこには広がっていた。


 希望を紡ぐ人類という存在はその脅威に消し炭にされ、残ったのは絶望すらないであった。


 ……。


 ……否。


「もう、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ひとりだけ。


 ひとりだけ抗い続けた男がいた。


 散っていった希望、蓄積した絶望、万感の思いをのせた最期の1刀はそのに確かに届きえたのだ。


 直後、まばゆい閃光ととどろく轟音の中まるでいなかったかのように消失した


 その跡には倒れ伏す男の姿があった。


「これで……おわった。やっと終わったよ皆……。僕もみんなのもとに……」


 彼にはのいない世界など考えることができなかった。


「はははっ……」


 まるで初めておもちゃをもらった子供のように無邪気に笑った彼は手に持った剣をのど元に突き付けた。


 あわや一人の英雄の命が絶たれようとしたとき、あたりは暖かな光に包まれた。


「あなたが死ぬことが罷り通ることはありません。あなたはすでに人としての因果を自分の手で曲げてしまったのです。再びまで眠りにつきなさい」


 思わず膝をつきたくなる威厳のある声とともに不思議な力が降りかかった。


 しかし、絶望の顔をした彼は何とか逃れようとはいずるも逃げられるわけもなくその力の餌食になった。


「あなたは最悪な災厄。絶望の権化。しかし希望にもなりえる。時に流されたあなたの判断はどうなるのか、楽しみです」


 謎の声が響いたそこには……青い水晶の中で眠る一人のの姿があった。


 その悲劇……のちに言う『ダルシアの悲劇』は破壊と再生の伝説として知らぬもののない有名な出来事になっているのだ……。





(ってなんか変な伝説になってるっぽいけど~!?)


 もだえてる俺の名はキロ。苗字はあいにくない。


 800年まえに女神の野郎に封印されて300年前に意識だけ戻ってきてからひとり寂しく水晶の中で独り言を漏らすだけの存在。


 たまにメルシア教とやらの教皇とやらが外界の情報を話しに来てくれるのだがその時に知ったんだ。


 なぜか過去の過ちというか黒歴史が壮大な物語のありそうな伝説になっていることを。


 一応話の内容としてはあってはいる。あってはいるんだけど脚色がすごいというかドラマチックすぎるというか……。


 とりあえずいえることはひとつ。


(はずがじいいいいいいいいいいいいいいい)


 今日も今日とて絶好調である。

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