幕間 ジンジャー


 私は、割と完璧な存在ではないでしょうか。

 男女ともに評判のいい恵まれた容姿。

 天才的な頭脳にずば抜けた魔法センス。


 幼少期から神童だの、麒麟児だの褒めそやされてきたが、そんな言葉すらいつしか陳腐に感じるようになったのはいつの頃の話だったか。


 世界が私のために用意された劇場のようなもの。

 王妃様の寵愛を受けて、今では権力さえも手中に収めつつありました。


 金も愛情も全て、手に入れてきた。

 恋人? 私は誰か一人の手に収まる器ではない。

 結婚しなければ不貞を咎められることもない。


 しかし、私は完璧ではあるが、聖人ではありません。


 これでもいつも好き勝手やってきました。

 気に入らない奴は滅ぼし、都合のいい奴は取り立てる。


 法服貴族である私は、土地を持たず王都で金貸しも営んでいます。

 評判とは一度味方につければ、簡単なものだ。ひっきりなしに客が訪れ、今では法服貴族としての収入に匹敵するほどの稼ぎがありました。


 あくどいことにも、幾度となく手を染めてきました。

 最たるものは密かに屋敷に有している奴隷たち。

 チーブス王国では禁止されている奴隷を、私は数多所有しています。

 国民がこれを知れば、絶望する事でしょう。

 あの生きる聖人君子のような完璧超人の私が、人を人と思わない悪魔のような人間だということに。


 彼らは哀れにも私を前にすると、震えて言葉もでない。

 そんな彼らを見ながら、食卓を囲むのは実に気分がいい。


 そして、類は友を呼ぶ。

 古株のジャンは、かつてチーブス王国の裏社会でその名を鳴らした男。

 その迫力のある外見を夜に屋敷で見ようものなら、失禁まったなしです。


 そんな私にも悩みがありました。

「隣国のポトムどうにかならないものでしょうか」


 隣国のポトム王国が私の住まう国、チーブス王国へ攻め込んできたのです。


「そもそも、なぜ辺境伯もポトムに攻め込んだのでしょう……」


 事の発端は、チーブス王国の北西部の領主である辺境伯が無断で領軍を率いて、ポトム王国北東部へ侵攻。

 それに呼応した一部の西部領主たちと共に、一時期はマグヌス川一帯まで制圧。


 しかし、王国の援助もなく独力でそれだけの兵站を維持できるわけもなく、伸びきった戦線を分断され、逆に侵攻した西部貴族の大多数は討ち取られる始末。


 私は北部の田舎の出なので、あまり関係ない話だと考えていたら、あれよあれよとその後始末に駆り出されることになりました。


 私は、やるからには全力を出すタイプ――


「すべてお前たちに任せます」


 ――ではない。


 奴隷や私に付き従う者に丸投げである。

 私は細かい作業を少々苦手としていました。

 そう言うものは、下々の者にやらせておけばいいのだ。

 そのために、彼らを買ったようなものだから。


 案は私の可愛い部下たちが出し、成果は私が貰う。

 彼らが手に入れるのは、せいぜい私から出る給金ぐらいである。


「必要なものがあれば言ってください。私は外に出てきます」


 上司の命令を断れない部下に仕事を丸投げして、私は余暇を満喫する。

 なんて贅沢。

 今日はどこでのんびりしましょうか。

 久しぶりにいきつけの店に行くのも悪くないです。


 私は、奴隷の手で軽く変装を施してもらうと、昼間から歓楽街のある方角に足を向けた。


 歓楽街と言えば、夜の印象が強いが、昼には昼の顔がある。

 それはそれで味わい深い。


 まだ昼前とは言え、まっとうな人間が歓楽街にたむろすることはそうはない。せいぜい違う区画への近道として、通り抜けるぐらいだ。


 そして、時にそういう人達は、まっとうでない輩の餌食となる。


 ――例えば今の私みたいに。


「えぇ? 姉ちゃん? ……いや、兄ちゃんか? とにかく、お前がぶつかったせいで、俺の大事な一張羅が台無しになっただろうが、どうやって責任取ってくれんだ! あぁ?」


 色の入った眼鏡に、逆立てた髪。顔についた傷。色のついたシャツに皮の靴。

 因縁をつけてきた人物はまごうとこなく、完全に裏社会の人間であった。


 まだこういう輩がいたのか、典型的な子悪党って感じで逆にかわいくも感じる。

 そもそも私は、動いてすらいなかったのだが、酒にでも酔っているのか、彼からぶつかってきた上に、彼が手にしていた飲み物を彼の服に零したのが事の顛末であった。


 私は着ていた上着を脱ぐと、目の前の男に着せてあげる。

「すみませんでした。代わりにこれを着るといいでしょう。幸い貴方の今着ている服に似合う色をしています」


 服などまた買えばいいのだ。

 私は固まる男を放って、再びその足を進める。


 目的の店は、歓楽街の中心部にあった。 

 華やかな看板や、目新しい装飾が多い歓楽街の中でも、古びた外見をした老舗。


 中に入ると実は、なんてこともなく、外観同様に古びた内装である。

 そもそもここは夜の店ではなく、ただの喫茶店である。


「やぁ、ママ。お久しぶりです」

「よく来たねぇ。ジンちゃん。元気かい?」


 髪に白髪が混ざり始めた女性が、柔和な表情を浮かべて店の奥から顔を覗かせた。

 私は親しみを込めて彼女をママと呼んでいた。


 店はいつ来ても、閑古鳥が鳴いていた。

 なぜ歓楽街の一等地でやっていけているのが、私の頭脳をもってしても謎である。

 聞いたことはないですが、土地の所有者か何かなのでしょう。


 店内を見渡してみても、そこにはポツリポツリと無言で座っているいつもの常連客の姿しかない。

 いつ来ても、店にいるのは常連客である彼らだけである。


 私が改めてママを見ると、

「最近どう?」

「ボチボチですね。ちょっと西の件でバタバタしていますが。ママは?」

「ママはジンちゃんの顔が見れたから元気になったよ」


 これである。


 これが言える人間がどれほどいるというのか。

 普段腹の探り合いをしている貴族たちにも見習ってほしいものです。


「ちょっと待っておくれ」

 ママはそう言って、一度店の奥に引っ込むと数分後経ってから戻ってきた。

 薬缶とマグカップ、そして小さな壺を乗せたお盆を携えて。


「ジンちゃん。甘いのが好きだったよね。これ新しく手に入れたお砂糖。すんごく甘いんだよ」


 ママには白旗である。

 私は華やか自分が好きであるが、別に華やかなものが好きなわけではない。

 貴族の付き合いや、区画の会合に顔を出せば、せっせせっせと頼んでもないのに、酒やら嗜好品を積む輩がいるが、そうではない。

 宝は探している時が楽しいのだ。


 おや、このお砂糖。悪くない。


「これはどこで手に入れましたか?」

「西のお店だよ。色々あって安く仕入れることができたの」

「いいですね。お店の名前わかりますか?」 

「ほら、あそこよここから西の通りに沿って――」


 悪くない。

 屋敷に戻ったらママから教えてもらったお店へ、奴隷たちに買いに行かせましょう。

 ママの店か、屋敷で奴隷に命じて密かに甘々の牛の乳を飲むのが、数少ない休日の楽しみである。


 私がママの用意してくれたホットミルクに舌鼓を打ちながら、

「最近なにか変わったことはありますか?」

「そうねー。最近は風が変わって、砂がよく舞うからお店の前のお掃除が大変なのよー」


 確かに最近は季節の変わり目なのか、時折強い風が吹く。

 掃除を任せている奴隷の一人も同じようなことを、食卓で口にしていた。


「わかります。掃除は大変ですよね。よろしければ私も手伝いますよ」

「あら、本当助かるわ」


 屋敷に返ったら私の部下を何人か手配しましょう。

 それか少し前に買った奴隷でもいいですね。

 奴ら生意気にも身体を動かしたいとボヤいていましたから。


 店にはお客さんが入ることはなく、常連さんも追加の注文をしないため、それからも二人で他愛をない話を続ける。


 小一時間ほど話したでしょうか、あまり話し過ぎると営業の邪魔になるかもしれないので、話を切り上げる。

 常連客もママと話したいけど、私に気を使っているのかもしれませんし。


 お会計を済ませようとするが、

「ジンちゃんからお金は取れないわ。その代わり、またね?」


 ママは子供がもう家を出て久しいと言っていた。

 また来て欲しいのでしょう。そんなことしなくても来るのに。

 しかし、ここで断ると常連客の手前、ママの面子を潰してしまうことになる。

 

「……ありがとうママ。お代が浮きましたよ」

「お金に困ったらママに言うのよ」


 私は背を向けると、何を言うでもなく後ろでに手を振ってママとは別れた。


 ママの店を出た私は、少し空腹を感じていた。

「こんなことならママの店で何か頼めば良かったですね」

 

 さすがにご馳走になった店に戻るのはカッコ悪いのでなしです。


 昼食を求めて、歓楽街の通りをあてもなく歩き始める。

 時間は昼を迎え、ママの店に入る前より人通りも増えていた。


 しかし、気になる店がないまま、歓楽街の終わりまで辿り着く。


「うーむ。今日はお外で食べたい気分ですね」

 私はそう独り言を漏らすと、歓楽街の通りを出て、街中の商業区画をブラブラとする。


 しばらく歩いていると空腹が本格化を迎え、もう何でもいいや、という気分になってきた。

「次に目に入ったご飯を食べられる場所で頂きましょう」


 そう自分に言って聞かせた後に、最初に目に入ったご飯が食べられる場所は、

「配給でーす」

 チーブス王国のとある宗教の一派による慈善事業であった。


「うーん。まぁいいでしょう。お腹も空いていることですし。すみません。私も一杯頂けますか?」

「あっ、はいッ!」


 配給を貰いつつ、話を聞いてみたが、彼らはあまり見かけない宗派であった。

 とは言っても、私の故郷は土地神を新興していたため、そもそもあまり王都の宗教に馴染みがない。


 お椀一杯の配給と一緒に、一本の煙草を貰った。

 私は非喫煙者なので、屋敷にいる喫煙者にでもあげるとしましょう。

 せっかく貰ったものを捨てるのももったいないですし。


 その後も街をブラブラしていると、魔法協会のチーブス支部に辿り着いた。

 法服貴族の仕事柄、魔法協会の役員たちと話す機会は多いが、直に支部に足を運んだことはなかった。


 魔法協会支部は王都の中でも王城に次ぐ高さを誇る建屋。

 宿泊施設も併設している支部は、見上げるほどの高さを誇っていた。


「……いい機会だから足を運んでみましょう」


 支部の前で建屋をジロジロ眺めていると、支部の中から一人の職員が駆け寄ってきた。


 職員は私の前まで来ると恭しく頭を下げて礼をする。

「魔法協会へようこそ。本日はどういった御用で? 何かご依頼でしょうか? 良ければ別室でお話をお伺いしますが……」


 そう言って、正面の入り口とは違う場所を示す職員。

 どうやら入口は複数あるようで、目的に合わせて使い分けているようだ。


 別室というのも興味が湧くが、初めてのこの機会、せっかくなので一般入口から入りたい。


 冒険者たちの世界を覗いてみたい。


 そう告げると、職員は額に浮かぶ汗を拭いながら、

「さ、左様でござましたかッ。閣下は――」

「――今回はお忍びです」


 どういう訳か目の前の人物には、私の正体ばれていたようだ。 


「し、承知しました……。そうッ! お、お客様におかれましては、魔法協会チーブス支部の成り立ちをご存じで? それは王国が建国して間もない話と伝わっております――」


 いきなり始まった王国とチーブス支部の成り立ち。

 語り手の熱意に負けて、建物の前で聞き入ってしまう。


「――という経緯で、今の魔法協会チーブス支部があるのです」

「なるほど。勉強になりました。ありがとうございます」


 語り部が熱意というものは大事ですね。

 語り部には物語を良くも悪くもさせる力があります。


「いえいえ。お耳汚しを……。あ、それでは中をご案内いたします」


 支部の一階は、王城の一室のように豪華絢爛であった。

 さすが高級宿泊施設の一つに数えられていることはある。


 どういうカラクリか扉は自動で開閉する。

 足を踏み入れた先では、シャンデリアがフロアを照らしていた。

 職員の服装も、世間の魔法協会のイメージからはかけ離れたカッチリした服装を着こなしている。


「ただ一度ここへ来てみたかっただけなんだ。協会っていうのはもっと冒険者たちでごみごみしていると思っていたよ」


 周囲を見渡しても冒険者らしき者たちがまばらにいるだけである。

 ただ、職員と思しき人たちが忙しなく動き回っていた。


「ははは、よろしければあちらの別室でお茶でも……?」

「お構いなく。それよりこの時間は、冒険者たちはあまり協会にいらっしゃらないのですか?」


 魔法協会と言うのは、いつも冒険者たちで溢れていると聞いていたのだが。

 この時間帯は人がいないものなのか。

 視線を窓に向けると、外の景色はオレンジに染まっていた。


「もう少しお待ちいただけたら、冒険者たちも戻ってくると思いますので、その間、あちらでお茶でも――」

「――あの扉の先はなんでしょう?」


 ひと際大きな扉。

 扉を遮るように二人の職員が立っていた。

 額には汗が浮かんでいて、顔色がよくないようにも見える。

 心なしか扉の向こうには、大勢の人の気配を感じた。


 額の汗を拭いながら目の前の職員が口を開く。

「あちらは、控え室で、ございます」


 何か大きな催し物でもあるのでしょうか?


 好奇心から一歩を踏み出そうとした私へ、後ろから声がかけられる。

「――閣下。こちらにいらっしゃるなんて珍しいですね?」


 振り返った先に立っていた人物は、

「ウーニ特級冒険者ですねッ! よく来てくれましたッ!」

 目の前に立つ職員が興奮気味に口を開いた。


 冒刹那を生ける冒険者に階級は名前以上の意味はないが、冒険者には四つの階級に区分されている。


 下級、中級、上級、そして特級の四つである。


 上位の階級に上がれば、上がるほど魔法協会に厚遇され、その権威が及ぶ範囲でも同様の扱いを受けることができる。

 冒険者の七割が下級、下級と中級が冒険者の九分九厘の割合を占めている。上級ですらほんの一握りの存在で、王国中の羨望を集めていた。


 特級にいたっては雲の上の存在である。

 その数は大陸全土でも両の指で数えられるほどだ。


 ウーニと握手を交わしながら、

「久しいですね。息災でしたか?」

「閣下のおかげさまで」


 遠慮がちに微笑むのは、薄いオレンジ色と白のが入り混じった髪型の魅力的なウーニ。

 女性にしては短めであるボブへアーの彼女は、目が覚める美人である。

 その可憐な容姿に似つかわしくなく、チーブス王国の冒険者の頂点の一角に立っていた。

 彼女の首にかかる魔法協会が発行する認識票は、一般の認識票とは異なり、それ自体が希少な魔法金属で作られていた。


 素朴な彼女の性格は好ましく、ときおり彼女に指名依頼を出していた。 


「それより閣下はどうしてここに――」

「んんー。すまないねウーニ。私は今日はプライベートなんだ」


 私の言葉にキョトンとした顔を見せるウーニであったが、

「ではなんとお呼びすれば?」

「ジン、とでも呼んでください」


 私の言葉にウーニはコクリと頷く。


 話が早くて助かります。

 法服貴族が来ているということで、周囲にいらぬ心配をさせたくはありません。


「わかりました。ジン、様」

「敬称はいりませんが、まぁいいでしょう。好きに呼んでください」


 私たちが話している間にも、次々と冒険者たちが支部の扉を跨いで入ってくる。


 物々しい恰好の者が多い。

 日没が近いというのにこれから竜でも狩りに行くのでしょうか。


 ただ一つ言えるのが、誰も彼も只人ではない。

 私も有事の際は軍を率いる身。

 それなりに武の心得もありますが、ここにいる者たちには手も足も出ないのでしょう。


 昨今王都で名を馳せている者たちの登場に、なんだか気持ちが上がってくる。


「おっ、彼らは最近売り出し中の――、それに向こうの彼女はこの前難題を解決してくれた――」

 私が興奮を隠せないでいると、後ろから袖を引かれた。


 振り返った先には、上目遣いのウーニ。

「ジン。ジンはこれからもウーニを指名してくださいね」

「ん? えぇ、もちろんですとも」


 とても特級冒険者とは思えない愛らしさである。


 その後は、ウーニと他愛ない話に花を咲かせていたが、

「おっと、そろそろ屋敷に戻らないといけませんね」


 ふと窓の外に目を向けると、いつ間にか外は薄暗くなっていました。


「ジン。私が屋敷まで送ります」

 ウーニの申し出を快諾し、魔法協会から出る。


 そう言えば、集まった冒険者たちは誰も依頼を受けていなかった気がするが、それはきっと気のせいでしょう。


「ありがとうございましたッ!」

 腰を深く折り曲げた職員に見送られ、魔法協会を後にした。


「初めて協会に訪れましたけど、楽しかったです。また足を運ぶのも悪くないですね」


 魔法協会支部から屋敷の帰り道に、口を突いて出た言葉。


 それまで隣を歩いていたウーニが、私の言葉を聞いて一歩前に躍り出る。

「じゃあ、その時は私が――」


 しかしその時、ちょうどウーニの言葉を遮るように後ろから声が掛かる。

「――閣下。今からお屋敷へお戻りですか?」


 振り返って先にいた人物は、

「おや、ジャン。貴方も今お帰りですか?」


 私の側近の一人である。短髪を短く刈り込んだ強面の男――ジャン。

 その鍛え上げられた肉厚な体と相まって、見る者に与える迫力が凄い。


「はい。――どころで特級冒険者ウーニ。ここまで閣下の警護をありがとうございます。ここからは私たち・・・の家に帰りますので、これ以上の警護は必要ありません」


 ウーニの表情が、一瞬ピキッとした気がするが気のせいだろう。

 なんかギスギスしていませんか? そんなことない?

 それとなく、二人の仲を尋ねると二人とも首を振ってそれを否定する。


 ウーニと別れを告げて、ジャンと共に屋敷に戻ると、奴隷たちが私を盛大に迎え入れた。

「お帰りなさいませッ!!」


 毎度思うのだが、いつ戻るともわからない屋敷の主人に振り回される奴隷たちを見ていると、彼らには憐憫の情が湧きます。

 次から給金をもう少し弾んであげましょう。


「そう言えばジャン。貴方は煙草を嗜んでいましたよね。――こちらを差し上げます。とある教会で煙いたものです」

 懐から教会で頂いた煙草をジャンへと差し出す。


 ジャンは恭しく両手で私の差し出した煙草を受け取ると、

「これは……。承知しました」

 しげしげと見つめ、その匂いを確かめた後に、懐に仕舞い込んだ。


 気に入ってもらえたようで何よりです。


 その後は、奴隷たちに湯浴みを手伝わせ、部下と奴隷たちと食事をとる。

「そろそろ食卓も手狭になってきましたね……」

 食卓に集まった面々を見渡して零れた言葉。


 最初は一人で始まった王都での生活。


 それが今や部下と奴隷たちを含めて、百人に届こうかという人数である。

 人が増える度に左右に改築を加えてきた屋敷も拡張に限界を迎え、最近では上に改築し始めている。


 屋敷では私は神のようである。

 すべてが私の思いのまま。

 やはり世界は私のために用意された劇場であった。


 あとはこの劇を喜劇とすることが、主演である私の役目。

 そのためには、ポトム王国。

 私の劇場を脅かす貴方達には、早々にご退場願いましょう。


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