143.出席者名簿
車に乗り込み、パーティー会場に向かう。ホテルの中規模の部屋を貸し切って行うようだ。
社交界デビューとして、難易度を低く設定してくれたようだ。いきなり、大ホールに沢山の招待客が多い中に、放り込まれるのは勘弁だ。
「パーティー会場の入口でも、出迎えの人が待っていると思うから挨拶が必要になると思う」
「わかりました」
今日1日で、大分ストレスを抱えたと思う。
本音をぶちまけていいなら、この堅苦しい時間が早く終われと思っている。
歳上の大人が、この世に生を受けて、たかが15年、もうすぐ、16年になるガキにペコペコしてそれに受け答えする事。
本当に世の中は、金と地位なんだなぁと思わされる。
黒宮家は、貴族制が廃止された後も国にとって多大な影響力を維持しているのは、かなりの家として頑張って来たのだろう。
すると、信号待ちの間に助手席に座っている黒服さんが、カバンからファイルを取り出して、僕に渡してきた。
僕は、ファイルに入っている書類を取り出した。そこには、沢山の人の名前が並んでいた。一番大事なこの書類の種類を判別するための書類名が記載されていないのが、改善点だと思う。いや、書類名を記載しない事で、誰かの不手際で流出してしまった場合に備えているのかもしれない。
「こんな大事な書類は、タブレットとかに出来ないんですか?」
「基本はタブレットです。詩季様のタブレットは、明日に届くみたいです」
「スマホにタブレットと復縁したばかりとは思えない厚遇ですね」
「私の推測ですけど、清孝様は詩季様を黒宮にとってのキングメーカー的な存在にしようとしているんじゃないかな?詩季様は、基本的に2番手で陰から動くの得意でしょう」
「それは、面白いですね」
厚遇には、絶対に対価を求められる。それは、仕方のない事だ。
まぁ、話しを戻すとして。
「この書類は、人物名が並んでいますけど……どういう書類なのですか?」
この書類が、何なのかをハッキリして欲しい。
「そちらの書類は、これから出席されるパーティーの出席名簿となっております。上の方から、企業に属していて黒宮と関わりの深い人物となっております。最後の方に載っている人物は、黒宮と関りが深い人物からの招待となっております」
なるほどね。
今後、黒宮として社交界として黒宮と企業の関係の深さ加減を頭に入れて接していかないといけないという事か。というか、これをやってのける清孝さんは凄いな。それをした上で、自分の本心を探らせないんだから。すごいものだ。
そして、名簿の最後に見慣れた名前が書かれていた。
『 株式会社 姫原 西原政伸 桜 陽翔 陽葵 陽菜 』
「春乃」
僕は、名簿の西原さん一家の名簿を指差した。そして、僕はプライベート用のスマホで、春乃さんにメッセージを送った。
『 (白村詩季) 話さないといけないですね。パーティー会場のどこかで会うでしょうし。というか、僕は、出席者全員と挨拶するでしょう』
『 (はるの) そうだね。パーティー会場で会う事になるから話さないとね』
『 (白村詩季) 神様は、残酷だね。いや、
『 (はるの) 確かに。私たちで、完結して良い問題じゃないうもんね』
僕は、プライベート用のスマホをポケットにしまった。
「すみません」
「はい」
「パーティー会場で、個々でお話したい方が居るので、部屋の手配をお願いしたいのですけど」
「わかりました。どちらの方でしょうか?」
黒服さんに、パーティー会場で一室借りる事が出来ないかを尋ねたら、誰とお話するかを聞かれた。
「株式会社姫原から来られる西原さんですね」
「何か、目を見張る人材なのでしょうか?」
出席綾リストの中でも最後の方に載っていたので、黒宮家からして関りが少ない会社なのだろう。そんな会社の人物と会いたいと言うのなら何か理由が有ると思うのが普通か。
「特段、理由がある訳ではありません。私と春乃のご学友です。私の立場が、最近、変わったので驚くかと思いますので、説明をしたいのです」
「なるほど、ご学友なのですね。わかりました、ご用意いたします」
15分程移動すると、パーティー会場のホテルに到着したようだ。ホテルの入口で降りると、案内役の方が待っていたので合流して移動する。
僕達が到着してから人の動きが、活発になっている様に思う。
バレていないつもりなのだろうけど、バレバレだ。
本当に、学校内で先生にバレたら怒られる事をしていて、先生が近づいて来たら慌てて隠すような事に似ている。先生もその動きに気が付いているが、現行犯では無い事で黙っているのか、追及するだけ無駄だと思っているのか。
僕は、どっちなのだろうか。
そして、移動している最中に、僕たちを待っている人たちが居た。
あぁ、なるほど。
黒宮に入ったばかりの新参者に取り入ろうと言う算段なのだろう。今回も、適当に流そうと思ったが、その人たちの中に、政伸さんが先頭に立って西原さん一家が居た。
多分、陽葵さんは、隣に春乃さんを立たせて移動している事に嫌な感情を抱いているだろう。それは、陽翔くんもだろう。いや、陽葵さんの場合は、自分の仕事だった僕のサポートを春乃さんに取られたと思っているかもしれない。
ただ、今は説明をする時間ではない。
黒服さんが、部屋の準備をしてくれている最中だろうから、準備が済むまでは黒宮としての責務を果たすとする。と言うか、助手席に座っていた黒服さんとホテルに待機していた黒服さんが周りに居る状態で、いきなり学友に話しかけるのも不味い。
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