91.生徒会長

「私、望月が、会長補佐として、生徒会長である柏木かしわぎ倖白こはくの会長代理を務めています」


 柏木倖白さん。


 藤宮高校の現生徒会長の名前だそうだ。


 しかし、この場には居ない。両校の生徒会主催のイベントを行うと言うのに、こっちはTOPが出席して相手側は、出席しないのは、下に見られていると言っても過言では無い。

 だが、2年生の先輩方は解らないが、古河先輩と松本先輩の言動を見るに、かなりの余程の事態がある事は確かだ。


 そして、同じ会長補佐でも両校で意味合いが違っている。


 僕の会長補佐は、古河先輩と松本先輩の何かしらの意向によって、この役職に就いている。でも、望月さんは、柏木さんの会長職を代理で行っているようだ。


「では、柏木さんが、出席できない理由が有るという事ですか?」

「はい。柏木は、現在、入院中です。ですので、彼が入院中の間は、私が会長の代理を務めます」

「ありがとうございました」


 僕は、柏木さんが来ない事に関する理由に関して、納得出来た。


 入院中か。


 入院は、かなり辛いんだよな。


 慣れない場所での寝泊まりは、かなりのストレスを覚えてしまうんだよな。


 そこから、クリスマスパーティーに関しての話し合いが進められていき、内容に関しては、以前の話し合いで僕が提案した事が、桜宮から提案されて、藤宮も同じ考えだったようで、僕の案が採用される事になった。


 そして、その事の細部を詰めた辺りでこの話し合いは終了した。


「いやぁ~~古河さん。面白い、1年生を生徒会に入れましたね。倖白に会わせたがった理由が解りましたよ」


 望月さんが、古河先輩に僕に関しての感想を述べていた。


 そう言えば、僕は、柏木さんの事を何も知らない。


「白村くんと、倖白が会えばお互いに、良い効果を発揮すると思いますね」


 正式な話し合いが終了したからだろう。望月さんは、柏木さんの事を倖白と下の名前で呼んでいた。


「白村くん、これ、倖白の写真」


 すると、有隅さんは、自身のスマホで柏木さんの写真を見せてくれた。そう言えば、有隅さんも柏木さんの事を下の名前でよんでいた。


 僕は、顔写真を見て驚いた。


 藤宮高校の生徒会は、顔面偏差値が高いと思った。


 有隅さんがガールズ部門のアイドル級のルックスなら柏木さんは、メンズ部門のアイドル級のルックスだ。


 同じ男として嫉妬してしまう程に、かっこ良かった。


 それと同時に、陽葵さんには会わせたくないと思ってしまった。一瞬で、陽葵さんを持って行かれると思ったから。


 そして、柏木さんの写真を見てふと思い出した。


「すみません。柏木さんは、桜宮の文化祭に足を運びましたか?」


 有隅さんに質問すると、僕の顔をマジマジと見て、何かを思い出したかのように望月さんの肩を叩いた。


「ねぇ、この子、倖白が、興味持った男の子じゃない?今は居ないけど、可愛い女の子と2人で楽しそうにしていた……」

「あぁ、確かに。倖白が、興味津々だった子だ。なるほどぉ~~ある種の両想いかぁ~~。あぁ、安心してね。倖白は、君の大切な女の子には、興味は持ってないから」

「……陽葵さんは友人です」


 少し、安心した。


 柏木さんの近くに居る人から、陽葵さんに興味は無いと言われて、さっき抱いた感情が落ち着いたように思える。


 柏木さんは、文化祭に来ていた。


 彼の写真を見た時に、陽葵さんと文化祭を回っていた時に、感じた雰囲気を写真越しでも感じた。そして、有隅さんと望月さんは、柏木さんが、僕の事を文化祭の時に認識していたと言うから、あの時に感じた雰囲気の人は、柏木倖白さんで、間違いない。


「へぇ~~陽葵ちゃんて言う女の子も苦労してるなぁ~~」

「でしょう。白村くんを追って生徒会に入ったんだけど、彼は、自分のサポートだと思っているみたいだし……」


 松本先輩は、有隅さんに話しかけていた。


 すると、有隅さんは、何か面白そうな目線で見て来たが、すぐに、目線を逸らした。その表情は、何か面白そうだ。


「それで、古河さん」


 望月さんは、古河先輩に向かって話しかけていた。しかも、かなり険しい表情で。


「彼も貴方の後継者候補ですか?」


 望月さんの発言に、橋渡先輩と星川先輩も大ぴらかに表情は変えないが、顔を古河先輩に向けた。


 もしかしたら、僕や陽葵さんと春乃さんは、体育祭に向けた人材補充の意味合いが強いと考えていたのだろうか。


 普通に考えて、残り任期が2カ月の段階で、新たに人員を補充するだろうか。学校行事で人材が不足していて1年生を入れたいなら入学して、学級委員が決定する前に声を掛けるべきだ。


 何より、文化祭という学校行事は、1年生以外の生徒会メンバーで回っていたのだ。余程の事が無い限り、こんな中途半端な時期に元々、2人だった定員を1人増やしてまで生徒会に入れないだろう。


「そうですね。選ぶのは、桜宮の生徒達ですが……白村が僕の次の生徒会長になった場合は、面白くなりそうですね」


 古河先輩は、否定しなかった。


 その事に、次期生徒会長を狙っているであろう橋渡先輩と星川先輩は、僕と古河先輩の顔を交互に見ている。


「あぁ、俺は、次の生徒会長選挙に関しては、静観するつもりですので、候補者誰も応援しませんよ。まぁ、この場に居る後輩3人が、次期会長の席に近いのは違いないと思いますけど」

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