57.浮気者?!

「詩季にぃさんの浮気者~~」


 羽衣は、そう言うと僕の頬にビンタをお見舞いして来た。


 まぁまぁ痛いので、まぁまぁの力を入れていたのが解る。


「羽衣、痛い」

「私は、心が痛いよ!」

「何で、逆切れしてんの?」


 陽菜ちゃんを膝の上に乗せて悦に浸っていた所、羽衣からビンタを喰らった。陽菜ちゃんは、僕の膝の上からおばさんの近くに移動して状況を観察している。


「ママ、どういう状況?」

「う~~んとねぇ……陽菜、あれが、修羅場と言う物よ!」


 おばさんは、説明を投げていた。お陰で、陽菜ちゃんが僕の方を注意深く見ているでは無いか。


「私と言う可愛い妹が居ながら、他の妹に浮気ですかぁ~~良いご身分ですねぇ~~」


 羽衣さん。


 朝の陽葵さんには嫉妬せずに、意味不明は同盟結成したのに陽菜ちゃんには嫉妬するのは、判断基準が不明すぎて、お兄ちゃん困っちゃいますよ。


 陽葵さんは、今朝に羽衣と対面しているが、予想の斜め上を行く行動に呆気に取られている。


「年齢か!年齢が若い方がいいんかぁ~~」

「羽衣、周りに人居るよ?」

「知るもんかぁ~~だって、あの子。私も妹にしたい位に可愛んだもん。そんな子が、詩季にぃの膝の上座ってるなんて……寝取られたよぉ~~私じゃ敵わないもん」

「んぐぅぅ~~」


 羽衣は、自身の胸に僕の顔を押し付ける形でハグして来た。


 本当に、周りに人が少なくて安心だ。


 にしても、イギリスに行っている間に、女の子らしい身体つきになったものだ。記憶にある頃の羽衣とは違う。


 羽衣は、着痩せするタイプの女の子だ。


 羽衣に胸に顔を押し付けられて、合法的に妹の胸に顔をうずめいていてよく感じる。


「ういぃ、胸~~」


 流石に、これ以上は恥ずかしいので、羽衣に解放してくれと頼む。何とか、解放してくれるといいのだが。


「むぅ~~堪能してたくせに」


 バレてた。


 羽衣は、渋々と言った感じで、僕を解放してくれた。


「……それで、あの子は誰なの?」

「陽葵さんの妹だよ。僕が助けた女の子」

「そうなの、陽葵!」

「そうだよ!」


 既に、呼び捨てで陽葵さんの事を呼んでいる羽衣は、陽菜が陽葵さんの妹と知って驚きと何かを感じ取った顔をしていた。


「確かに、似てる!」


 数時間前に、似た言葉を発している人を見たことがある。


 羽衣は、陽菜ちゃんの近くに行ってマジマジと顔を観察している。

 陽菜ちゃんは、どうしたらいいのか困っている様子だ。


「むっ、よく見たら可愛い。めっちゃ、可愛い!私じゃ太刀打ち出来ねぇ〜〜」


 羽衣は、陽菜ちゃんの頭をよしよししていた。陽菜ちゃんも悪い人ではないと認識したようで受け入れている。


「羽衣、自己紹介しなさい。陽葵さん以外は、初対面だから」

「はぁ〜い!白村羽衣、詩季にぃさんの実妹です!ちなみに、重度のブラコンです!」


 一応は、僕の前と他の人では、態度が違うのだが、もう、この周辺にいる人たちには、素を見せてしまったので割り切れているのか、素のままで居る。


 と言うか、自分の口で重度のブラコンと言うのはやめてくれ。周りからの視線が痛すぎる。確かに、僕も重度のシスコンだけど!


「イギリスに行っていた、僕の実妹です。こちらが、僕の実の母親です」


 西原両親に、母親を紹介する。


 すると、2人は、表情を強ばらせた。


「初めまして。息子が、お世話になっています。詩季の母親の白村しずかと申します。この度は、私どもの軽率な行いに巻き込んでしまい申し訳ありません」


 母親は、自己紹介の後に、おばさんとおじさんに向かって頭を下げていた。


 自分が、仕事を優先している間、祖父母と共に、親代わりをしてくれたお礼と謝罪を込めているように見える。


「頭をあげてください。謝らないといけないのは、私たちの方です」


 おばさんが、母親に近づいて肩を背中を摩っていた。


「おばさん、今日の放課後時間ありますか?」

「うん。あるけど」

「では、詳しいお話は、放課後に家でしましょう。今日は、折角の文化祭ですし楽しみましょう」


 折角の文化祭なのだ。


 そう言ったしんみりする話は、また別の場所ですればいい。


 瑛太くんや奈々さんや春乃さんは、各々楽しんでいるみたいだし、僕たちは、僕たちで楽しめばいい。


「静ばぁと健じぃは?」

「ん〜〜2人で文化祭回るみたいだぜぇ〜〜詩季の旦那」

「仲良いなぁ〜〜」


 祖父母は、結婚生活が長くなるに連れて仲良しになっている印象だ。

 今日も孫の文化祭見学デートと洒落こんでいるようだ。


「まぁ、珍しい組み合わせになるけど、楽しみますか」

「そうだね!」


 西原家と白村家(母親方)と言う珍しい組み合わせになったが楽しめればいいだろう。


 僕たちは、基本的に陽菜ちゃんの行きたい所に行くという形で時間が許す限り、一緒に行動した。






「それじゃ、私達は、帰るね」


 時間になったので、陽菜ちゃんにおじさんとおばさんは、家に帰る事にするようだ。


「詩季にぃちゃん、またねぇ〜〜」


 僕に向かって手を振ってくる陽菜ちゃんに手を振り返す。


 車に乗って走り去るまで、見送った。


「羽衣は、どうすんの?」

「私は、歩いて帰るよ」

「そっか」


 羽衣は、歩いて帰宅するようで1人で校門を後にして行った。

 母親は、中等部の職員室に寄って今後の手続きに関しての説明を聞きに行くそうだ。


「詩季くん、羽衣ちゃんと一緒の時が素なんだね」

「ごめんなさい」

「うぅん。詩季くんと過した時間的に、安心出来るのは羽衣ちゃんだってわかってるから」


 陽葵さんには、申し訳無いと思う。けど、まだ、陽葵さんに、素を見せることが出来ないのだ。


「頑張りますから」

「無理しなくていいよ」


 陽葵さんの優しさには、本当に感謝だ。


「2人とも行くぞ」


 陽翔くんに、呼ばれたので僕たちは、片付けに向かうとする。

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