48.ボロボロな組織体制

「いつも、いつも、偉そうに――何様なの?」

「本当に、私たちは、石川の部下でもなければ、道具でもないんだけど?」

「ほっんまに、何様なの。自分の事神様とでも思ってんの?」


 崩壊したクラスは、最悪を超えた言葉に出来ない空気だ。


 最悪を通り越した状態は、地獄とでも言うのだろう。


 今の状態は、正しく地獄絵図だ。


「なっ、何なんだよ。いきなり、掌返しかよ!」

「あぁ、人を道具扱いするような人間に、言われたくないんだけど?てか、岡も同罪だよね。石川の言うことに頷いてたんだからさぁ〜〜」


 このクラス崩壊は、石川くんと岡さんが起因になって起きている。

 クラスメイトの矛先は、自然と2人に向いている。


 こうなってしまっては、2人には、もう1年1組という組織を動かすことは出来ない。


 ただでさえ、低かったクラス内の求心力が、限界を突破して無くなってしまったのだ。


 にしても、面白いな。


 人の我慢の限界点が超えてしまうとこうなってしまうのか。


「私たち、もう、石川の言うこと聞けないから」


 こうなる事は、予想出来た。


 石川くんが、自分のクラス内の立ち位置や振る舞いの欠点を認識しないまま、トップダウン方式のような組織運営をすればこうなる事を。


 石川くんが、自分で決めた事をクラスに文句を言わせずにやらせる。


 僕は、あえて静観という名の放置をした。そして、この独裁体制は、今、崩壊した。


 僕も、大概、この文化祭を私物化している方だと思うが、僕以上に私物化していたのは、石川くんだ。


 とは言え、この状況を脱するには、文化祭準備の責任者を変えざるを得ない。


 石川くんと岡さんでは無理だ。


 そして、代理の責任者を務めないといけないのは、正副委員長の春乃さんと僕だ。


「皆さん、ご協力お願いいたします」

「「「「了解!!!!」」」」

「詩季くんに、一生ついて行くよ!」


 1人だけ、少し意味違いな答えが混ざっていた気がするが、僕と春乃さんは、皆が集まっている教卓の方に歩みを進める。


「皆さん、ここからは、僕達が陣頭指揮を執らせて頂きます」

「なっ、俺はまだやれ――」

「もう、無理ですよ。この状況を作った張本人が、どうやって立て直すのですか」


 僕は、石川くんに、今の状況を把握させる。


 石川くんは、正副委員長を選ぶ時から冷静さを失っている。


「そうだよ、石川。お前には、ついていけない。白村に変われ」

「そうだよ。変わってよ」


 やっと、自分がクラス内で置かれている状況を理解したのか、黙り込んだ。


「分かりましたか。今の君の――」

「本当に、引っ込んで。あなたの下で動けない」

「まずは、謝れよ」


 うん。


 ウザイな。


 自分たちに、流れがあると見るや怒涛の畳み掛けだ。


 プライドをズタズタに砕かれた、石川くんにとっては、オーバーキル過ぎる言葉のナイフを刺されている。


「謝れよな。お前のせ――」


 カァァン♪


 僕は、杖を力強く床に叩いた。


 突然の事に、さっきまでいきり立っていた人達は、僕の方を向いてきた。


「皆さん、うるさいです」


 さっきまで、自分たち側だと思っていた人間が、急に相手側に味方したと思うと人間は、最初、固まるのだなぁと思った。


「確かに、石川くんの文化祭準備の指揮を執り方には、大きな問題があるのは事実です。それとは、別に、僕は君たちにも怒りを覚えています」


 これは、事実だ。嘘ではない。


 怒りと言ったが、本当は、強い怒りと言っても良かったが、ギリギリでストッパーを掛けた。


 僕だって、今ここに居るためにした努力は誰にも負けない自信がある。


 天才だと自負して公言しているのは、努力を怠らないための自分への戒めだ。


 だからこそ。


 努力の仕方を間違えたとはいえ、努力をしていない人間が、努力をした人間を必要以上に叩く事は、許せない。


 例え、それが、自分にとっていい思い出がない人物だったとしてもだ。


「今、石川くんと岡さんに、抗議という名の罵声を浴びせていますが、共通するのは、クラス委員決める時に、面倒臭い、放課後の時間が無くなる、などと言って積極的に委員になろうとしなかった人だけです。何かしらの委員になっている人は、文句を言っていません」


 石川くんの指揮に、クラス中不満を持っている事は解り切っていた。そして、不満が爆発する事も。ただ、爆発した際の人間構成が、両極化するとは思わなかった。


 何かしらの委員に就いている人たちは、不満は有れど気持ちが解るから不満を表さず、委員に就いていない人達は、気持ちが解らずに、罵詈雑言を浴びせていた。


「君たちの中の内、2人が文化委員に意欲を見せていれば、石川くんと岡さんが文化委員で指揮を執る事も無かったかもしれません。貴方たちが、自分たちの時間を優先した結果でもある事を自覚しなさい」


 詩季の指摘は、最もな事だ。


 さっきまで、罵詈雑言を発していたクラスメイトは、黙り込んでしまった。


「では、皆さん。文化祭の準備を開始しましょう。展示物の作成に関して、委員長の春乃さんと陽翔くんに指揮を執ってもらいますので、2人の指示に従ってください。そして、調べ物担当の人たちは、僕と陽葵さんが指揮を執ります」


 石川くんの基で、ボロボロになった組織体制を展示物作成担当と調べ物担当(→終了後、展示物作成班合流)に、再度、役割分担を再認識させる。


 そして、指揮系統も明文化して見せる。


 展示物担当のリーダーは、春乃さんでサポートに陽翔くん。調べ物担当(→終了後、展示物作成班合流) 兼 全体リーダーが、僕でサポートに陽葵さん。


「では、始めますよ。時間が有りません。不平不満は僕が引き受けます。ですので、僕の指揮に従ってください」


 カァン。


 手を叩けない代わりに、杖で床を叩いてスタートの合図を出した。


 クラスは、僕の指示した役割通りに準備に戻った。


「たっ、助かったよ。ここからは……」

「何を言っているのですか、石川くん。こうなった元凶の貴方は、もう指揮を執らないでください。また、荒れます。陽葵さん、調べ物班に瑛太くんと奈々さんを合流させてください」

「……頼むよ」

「知らないですよ。貴方の家の事情は解りますが、石川くんは失敗したんです。現実を受け入れなさい。貴方たちは、僕が居ないと何も出来ないという事ですよ。過去を見てもそうじゃないですか」


 尚も、自分で指揮を執ろうとした石川くんに現実を突きつける。



〇〇〇


「何で、詩季の隣に、西原陽葵さんが立っているの?」



――― 後書き ―――


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