44.電話
今日は、陽葵さんが、家に、お泊りする事になった。
完全なる僕の不注意からなので、本当に、申し訳の無い事をしたと思っている。今度、陽葵さんの両親には、謝罪をしに行かないといけないと思う。
特に、西原父は、激おこぷんぷん丸だろう。
今は、夕ご飯を食べ終えて、2人で、まったりタイムを過ごしている。リビングで。
「陽葵ちゃん、寝る時に使う服なんだけど――」
静ばぁは、陽葵さんのお泊りの準備を進めている様だ。健じぃは、男性という事で、戦力外通告をされている。
「私のか、詩季のスウェット――」
「詩季くんのスウェットで!」
「やっぱり、そうよね」
陽葵さんは、即答していた。静ばぁもそれは、予想していたみたいで、僕のスウェットを陽葵さんに手渡していた。
「サイズは、どお?」
僕と陽葵さんは、身長としては、僕が、少し大きい位なので入らないことはないと思う。
「多分、ズボンは、ギリギリな気がするので、体操ズボン履いて寝ます」
陽葵さんは、スウェットの上だけを受け取った。
「えへへ〜〜彼シャツという奴ですかな?」
「――、多分、お風呂、もうすぐ用意出来るので、お先にどうぞ。あっ、お風呂に行く前に、体操ズボン回収忘れないでくださいね」
これは、ツッコミ待ちのボケだと思うので、反応を見せないようにする。
そして、膝枕の際に脱いで部屋に置きっぱなしの体操ズボンの回収を念押ししておく。
何となく、回収させないと、後々、嫌な予感がするからだ。
「あぁ〜〜そうやって、私の残り湯を堪能する気でしょう〜〜」
もしかしたら、祖父母に、膝枕をしている所を見られて、羞恥心が限界突破でもしているのだろう。
陽葵さんは、ストップを知らない。
「――部屋に戻ってますので、お風呂に入って来てください」
「ねぇ〜〜詩季くん。何か、ツッコミ入れてよ!私が、バカみたいじゃんか」
「えっ、違うのですか!」
「なによぉ〜〜」
仲良く言い合いをしながら、陽葵さんをお風呂場まで案内をして、僕は、部屋に戻る。
陽葵さんは、お風呂に旅立った。
というか、陽葵さんの荷物は、部屋に置きっぱなしなのは、何故だろう。
客間に、運ばないのか。
ブー♪
スマホが、1通のメッセージを受信した。
『 (うい) 詩季にぃ、今、電話大丈夫?』
羽衣からのメッセージだった。
可愛い、妹からの電話の誘いに乗らない兄は、居ないだろう。
羽衣は、あの後、イギリスに帰った。こっちに、転校するにしても色々手続きがいるからだ。
日本が、21時を丁度過ぎた辺りならイギリスは、13時辺りだと思う。
時差の問題もあっての確認のメッセージだろう。
『 (白村詩季) いいよ』
ブー♪ブー♪
返事を返したら、直ぐに、着信が入った。
「もっしも~しぃ~~詩季にぃ?」
スマホを耳に当てた瞬間に、羽衣から元気な声が耳に入って来たので、スマホを耳から離した。
「羽衣、そっちは、お昼かもしれないけど、こっちは夜なんだよ」
「あはは、ごめん、ごめん。久しぶりに、話せると思って嬉しかったの♪」
「なら、いいよ。それで、用事は?」
4月に、羽衣と話せたことがあるのだろう。羽衣には、砕けた口調で話せている気がする。
そして、羽衣は、元気そうだ。
「今度、詩季にぃさんの学校で、文化祭あるでしょ?実は、文化祭の翌日に、編入試験受けるんだけど、その前に、文化祭に参加したいの」
「ちょっと待って羽衣。情報が多すぎる」
何とか、羽衣に情報を整理させる。
テンションが、上がると早口になる癖は、相変わらずなようだ。
6月に文化祭があり、文化祭の翌日に、羽衣が、僕が通っている高校の編入試験を受けるようだ。
文化祭の2日前に、日本に帰国して、文化祭で学校の雰囲気を味わいたいそうだ。
「試験勉強は――って、羽衣なら大丈夫か」
「うん。それでね、文化祭に参加するために――入校証いるよね?」
「うん。居るよね。最大5人まで、申請出来るのかな。まだ、概要出てないから解らない」
「――それでね、保護者として、お母さんも一緒に帰国するんだけどね」
「大丈夫。今ので、言いたい事、ある程度察した」
なるほど、羽衣の言いたい事は、察した。
羽衣の編入試験のために、母親が保護者として一緒に帰国する事になったという事。そして、文化祭に参加するための入校証。
なるほど、4月の事で、母親が学校内でどうなっているかを確認したいのだろう。
他人の入校証を使って校内に入ると言う行為は、かなり問題になっていた。ちなみに、入学式当日に、守谷先生に生徒指導室に呼び出された事があったが、学校の生徒指導の先生にも任意に入校証に関して事情を聞かれた。
結局は、僕は、ただ巻き込まれただけと言う判断に落ち着き、幼馴染達は、厳重注意かつ次やったら問答無用で警察に被害届を出すと言われたらしい。
「正式な手順を踏めば、問題無いと思うけど――隠さずに言うけど、学校の要注意人物には、入っていると思うよ。あなたも傍で聞いているのでしょう」
「やっぱり、詩季にぃさんは、気づくよね。こっちは、スピーカーフォンで、隣でお母さんが聞いてる。どうする、話す?」
「う~ん。まだ、面と向かってじゃないと怖いかな。日本に帰って来るなら、そのタイミングで話せたら良いと思う」
「わかった」
面と向かってじゃないと、相手の感情を読み取れないので、怖い。だから、電話とかは、基本的に、自分と親しい相手が中心となる。
ただ、将来、社会に出たら顔も知らない人と電話で話さないといけないくなるので、慣れないといけない。
そこからは、母親は、別室に移動したようで、時間の許す限り、羽衣とお話した。
コン♪コン♪コン♪
「詩季くん、お風呂あがったよ~~?」
陽葵さんが、お風呂から上がったようで、部屋の扉をノックして来た。
「あれ、詩季にぃさん。家に、女の子連れ込んでるの?」
「ちょっと、言い方!」
「どうしたの?入るよ」
陽葵さんが、部屋に入ってきた。
「やっぱり、女の子だぁ~~。詩季にぃ、隅に置け無いねぇ~~じゃ、ハッスルし過ぎたらダメだよぉ~~」
「ちょっと?!女の子がそんなこ――」
プープープー
相手との通話が切れたことを知らせる機械音が流れたので、スマホを机に置く。
「詩季くん、女の子と電話?誰?」
一瞬にして背筋が凍った。
「妹です。妹の羽衣と話していたんです」
「あっそうだったんだ」
直ぐに、機嫌を戻してくれたので良かった。
「今度の文化祭に来るみたいで、その相談でした」
「へぇ~~いつか、羽衣ちゃんと話してみたいなぁ~~」
陽葵さんが、お風呂から上がった事で、入れ替わりで、僕は、お風呂に入る事にした。
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