事故に遭いそうな幼女を助けたら新たな出会いがありました
噓真 蓮都
第1章
1. 出会い
目を覚ませば、見知らぬ天井が視界に入った。
状況が、全く理解できない。
身体に関して、右足の感覚が微妙なこと以外は、全身に痛みを感じる。
「
「あぁ〜〜良かった」
そうだ、僕の名前は、詩季。フルネームは、
今、僕に声を掛けてくれたのは、母方の祖父母だ。
僕の両親は、仕事の都合で、妹と共に、1年程前からイギリスで生活しているので、日本での保護者的存在だ。
「健じぃに静ばぁどうしたの?」
「ちょっと待ってね、今、先生呼ぶから」
先生を呼ぶと言うことは、ここは、学校の保健室なのか。
いや、保健室にしては、広すぎる気がする。
少し経つと、白衣を来た先生が部屋に入ってきた事で、状況を理解できた。
ここは、病院だと。
それと同時に、何故、僕が病院に居て祖父母が、血相を変えた表情になっていた理由も思い出した。
車に轢かれそうになっていた幼稚園年長さん位の女の子を助けた際に、車に轢かれたのだ。
公園で遊んでいてボールが、二車線道路に飛び出てしまってそれを取りに出たら車が来ていて動けなくなったみたいだ。
それにしても、全身が痛い。だけど、右足の感覚だけが殆ど無いのが不気味で、怖い。
「詩季、先生の言う事をよく聞きなさい」
静ばぁが、手を握って重苦しい空気をまといながら言ってきた。
最悪な展開を頭が過ぎる。
全身に痛みがありながら、右足だけ感覚が鈍い。
「詩季くん。君は、事故の影響で、右足が麻痺してしまった。今後、リハビリをしていくが、以前のように歩ける確率は、0に近い」
先生から言われた事は、瞬時に頭の中で整理される。
今後、普通に歩けない。
現実味が無い。
「あの先生、孫は、今後車椅子生活に――」
静ばぁが、感情を押し殺して先生に質問している。健じぃは、感情を押し殺すので精一杯なのだろう。
「リハビリ次第ですので、確証を持って話す事が出来ないのですが、杖を使って歩行が出来るようになれば――」
正直、頭の中を整理するので精一杯だったので、静ばぁと先生の話は、途切れ途切れ聞いていた。
○○○
翌日には、僕が助けた子どもの保護者が、病室に訪問してきた。
「この度は、
父親が代表して感謝の意を述べると一族皆で、一礼した。
静ばぁも健じぃも、慌てふためきながら、顔を上げるように促した。
「陽菜ちゃんに、お怪我は?」
気になった事を素直に聞いた。
「かすり傷程度で済みました。貴方のお陰です。本当にありがとうございます」
保護者からしたら、何度でも「ありがとう」を伝えたいだろう。
僕は、保護者の後ろに立っていた同い年位の二人の男女に見覚えがあった。
「ねぇ、人違いだったらごめんだけど。西原……
「――!知り合いなの?」
保護者が、子どもに尋ねていた。
「うん、白村詩季くん。俺は、同じ学年で陽葵は、同じクラスだったと思う」
「うん」
人違いでは無かったようで助かった。
西原兄妹は、両親と別れると、僕の方へやって来た。
祖父母は、西原両親とこれから大人の事に関して話し合うのだろう。
「白村くん、本当にありがとう。陽菜を助けてくれて」
「無事なら何より。若い命を助ける事が出来て誇らしいものよ!」
「初めて話すが、おじさんみたいなこと言うな!」
同じクラスの西原妹が、話し相手になり西原兄が、ツッコミ役に回っている。
「え、それは本当の事ですか!」
突然、西原父が大きな声を発してこの場にいた人物の視線を集める。
「親父、どうしたんだよ。ここ、病院だぞ」
西原兄が、呆れ顔で話すが、西原父はそれ所ではないらしく西原兄の肩を掴んでいた。
「詩季くん、陽菜を助けてくれた代償に……右足が麻痺して今後、今まで通りに歩けないて⋯⋯」
西原父に聞かされた真実は、西原兄妹には、重い話だろう。
僕に、何と声を掛ければ良いか悩んでいる。この場の空気を変えられるのは僕だけか。
「これから今まで通り歩けないって考えると恐怖しかない。正直、実感は無いけど感覚はあるんだよね」
「本当にごめんね」
西原妹は、今にでも泣きそうな様子だ。
こんな場面で、「気にするな」と言ったところで気にしてしまうので逆効果だ。
だったら、現実を突きつける形になるが、それを含めた話をしないといけない。
「でも後悔してない、陽菜ちゃんを助けられた事。その代償に右足の自由を失う事になったけど、今は、だからね。頑張ってリハビリすれば、杖を使ってなら歩行出来るようになるかもしれないから希望は残ってる」
「でも、白村くんの今後が――」
二人は、責任感が強い。
もしかしたら、僕が、今後、右足の自由を失わなければ稼ぐことが出来たであろう金額を一生振り込んでくれと頼んだら借金してまで遂行しようとするだろうが、僕自身、そんな偉い人間にも、傲慢な人間になった覚えは無い。
それに、他人のお金に頼って生きるなんて性に合わない。
「静ばぁ、西原さんの両親とは何のお話したの?」
「そうねぇ、今回の入院に関する治療費はこちらで持たせて欲しいと……」
やはり、西原さん所は、責任感が強い。
恩は、倍返しで返そうとしてくるだろうから、僕の治療費に関しては、ほんの一部という認識の可能性が高い。
「じゃ、治療費だけ払って貰ってその後は、大丈夫」
「詩季くん、せめて、君が本来稼げるはずだったお金の一部を――」
「大丈夫です。そのお金を僕に支払う余裕があるならお子様に使ってください」
「でも――」
「僕は、諦めてませんよ。生きている間は、足掻き続けたいです。寄生して生きるなんて、嫌ですよ」
僕の思いを伝えた。
右足の自由を失ったからと言って人生そこで終了ではない。
「僕は、天才なんだと思います。ずっと、人並み以上の事は、出来ましたし。ただ、努力を知らなかった。だから、これも神様からの試練だと思っています。なので、必要以上にご心配頂かなくても大丈夫です」
「強い子だね。二人にも、陽菜にも見習って欲しいよ」
西原父が、右手を掴んで握手をしてくれた。
「あ、陽葵さん。一つ、お願いがあるんだけど……」
「なに?」
「当分、学校に行けないと思うから学校のノートとか配布物とか届けてくれると助かる」
「……私で大丈夫?」
「うん、お願いしたい」
西原妹……陽葵さんは、私で大丈夫なのか不安そうにしていたが、学校のノートや配布物を持って来て貰わないと学習が出来なくなるので大変だ。
「わかった。予定がない日はなるべく来るよ」
――後書き――
新作連載、始めました♪
第2話は、17:30頃に投稿します( *´艸`)
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