第5話 覚醒とあるしがないおっさんの記憶(3)


その波の中にあっておっさんは事業企画部部長に、


ズラッチ頭竹は最大派閥を誇り役員人事権を握る専務に昇進を果たし持ち前の営業力を遺憾なく発揮していた。


そしてある日おっさんはズーラー頭竹に呼び出されることになる。




「よく来たね、桂廻君。」



「はい。先輩がお呼びと伺ったのですぐに参りました。」


(上を見ちゃダメだ・・・上を見ちゃダメだ・・・)




「実は君の昇進について話があったのだよ。」



「昇進ですか?部長になってまだ2年、ありがたいですがまだ早いような気もします。」


(上を見ちゃダメだ・・・上を見ちゃダメだ・・・)




「いや、君は実際よくやってるよ。現状我社は事業拡大に焦点を置いて動いているのは事業企画部の君なら知ってると思うが、今後海外に拠点を構える事になりそうなのだよ。」



「海外ですか?」


(上を見ちゃダメだ・・・上を見ちゃダメだ・・・)




「そうだ。そこで君に臼井商事の役員権を与えると同時に現地法人の取締役をやってもらいたい。」



「なるほど。。。それで私はどこの国に向かえばいいんでしょうか?」


(上を見ちゃダメだ・・・上を見ちゃダメだ・・・)




「A国だね。そこで事業用地の確保から動いてもらいたい。」



「A国って、紛争地帯じゃないですか!?そこで地上げからはじめろと?」


(ゑ!?あっちょっと上見ちゃった)




「そうだ。君も知っての通りそういう極限的な環境こそ我社が求めるビックビジネスのチャンスは転がっているものなのだよ。君用の住居の確保と現地スタッフと通訳、安全確保の為のガードマンはすでに手配済みだ。」



「・・・・・・」


(あれ?これガチで命がやばいんじゃね?)




「この人事は君にとっても飛躍できるチャンスでもある。引継ぎ期間は3ヶ月与える。それまでに事業企画部を下の者に引き継いでおいてくれたまえ。」



「承知いたしました。それでは一旦失礼いたします。」


(あっ!またちょっと上見ちゃった)








・・・・・もはやこの時のおっさんに会社を辞めるという選択肢は存在していなかった。



就職氷河期・圧迫面接・奨学金返済・リーマンショック・パワハラ・モラハラ・アルハラ・ズラハラ(最重要)と


サービス残業のダークネスをすべて経験して死にそうになりながらもなんとか生き延びてきた。


最近では年を重ねたこともあってか鬼嫁の射精管理の回数も減ってきた(まだある)分だけ体の調子も前よりもよくなってきた気がする。


足腰の痛みはコ○ドロイチンで誤魔化しながらもなんとか楽チンになった気がする。



26歳になる娘は大学卒業後に我社の業務部に籍を置いて(コネ)OLとして日々頑張っている。


おっさんにとって大切な家族を養う為に娘の輝ける未来の為に、どうしても今の仕事を手放すわけにはいかない。



言うなればスーパー社蓄人に進化を果たしていたのである・・・・・





そしておっさんが退室した後、ブラインドを指で開け窓の外を見ながら頭竹は独り言ちする。



「すまないね、桂廻君。私の頭頂部に気がついたかも知れない君を手元においておくのは私にとってかなりリスクが高いのだよ。悪く思わないでくれたまえ。」



その頃おっさんは引継ぎ業務をしながらスレ立てをしてズラハラのストレス発散をしていた。



【悲報】未カミングアウトのズラ上司がワイにばれたと思ってワイを紛争地帯に飛ばす段取りをつけてた件について【ハゲ】







・・・・・それにしてもこのあたりからどんどん情景がはっきり浮かんでくるな・・・・・







そして3年の月日が経過した。


頭竹はおっさんがA国に入った1年後に取締役社長に就任。



この頃にコネ入社してた娘の舞子は同期入社の営業部のジャクソン君と結婚、寿退社をすることになった。


ジャクソン君は黒色人種の方だが、幼い頃から日本で育った為に日本語は普通に流暢に話せる。



黒色人種特有の鋭い眼光で相手の目を見た後に、



「実は僕、イグサめっちゃダメなんですよね。アレルギーっていうのかな?もっそかゆくなっちゃうんですよ。」



とか言うと取引相手から笑顔がこぼれる。


このギャップで営業部の現在のエースになっている。


彼になら舞子を任せても大丈夫だろう。



問題は日本風にジャクソン舞子と呼ぶか英語風に舞子ジャクソンと呼ぶかだが、


このあたりは帰国した時にでも本人に確認するしかないだろう。






そしてこの度ズーラーが会長に退いて会社の経営の第一線から『外れる』事になっていた。


それに伴っておっさんも本社に帰還できる運びになったのだが・・・それにしてもこの3年本当に色々あった。



ここで現地法人への襲撃関連に関してのおっさんが本社に提出した投げやりな報告書を見てみよう。



施設被害


商談時襲撃回数 12回 内訳:政府軍5回・反政府組織5回・現地住民2回


法人襲撃回数  14回 内訳:政府軍2回・反政府組織6回・現地住民6回



邦人被害


桂廻被弾     3回



現地スタッフの被害まとめ


死亡       7名 内訳:ガードマン4名・事務員2名・通訳1名


戦傷      24名 内訳:ガードマン16名・事務員5名・桂廻3回分



備考:拳銃?持ってても全く役に立ちませんね。最低でも小銃がいりますね。


   ただ私が小銃を持ってても全く脅しにもならないし

   ガードマンさん達の連携の邪魔にしかならないんで、


   すぐに退避出来るようにぶっちゃけ手ぶらが吉です。


   どうしても相手を脅さないといけない場合は

   ガードマンさん達をたくさん雇いましょう。


   ガードマンさんの腕?全く関係ないですね。数の確保が重要です。


   ああ、資金に関しては問題ないです。こちらの余剰で賄えます。


   ただ、3型の防弾チョッキは超重要、あとヘルメットも。

   これだけはいいやつがいりますからね。


   そちらから送ってください。


   安全確認・足元確認・指差確認最優先。それでも3回アバラが折れました。


   あと、汎用型の積載量多目の日本製ドローンをB国の支部に送ってください。

   いくらでも買い取れますよ。


   戦闘化改修はA国の地下工場がすでに稼動してますので

   そちらで安価に改修出来ます。


   それではよろしくお願い致します。


  



こんな感じで数々の襲撃を掻い潜り、政府軍と反政府組織の間で絶妙なバランスを保つことで商売を成立。


莫大な利益を上げるに至っていた。


おっさんは、現地の人間にはいつの間にか東洋の死の商人と呼ばれるようになっていた。







そして運命は残酷にもその時を迎える。(ヒストリーー)


桂廻 勇三朗 48歳 夏の事であった。



「取締役、お迎えに上がりました。」



「やっとニッポンに・・・ニッポンに帰れるんですね。。。」




「そうです。取締役。。。一緒に・・・一緒にニッポンに帰りましょう!」



「~~~~~っ」




「そういえば娘さん、とてもお綺麗でしたよ。」



「ん?娘になにかあったのかい?」



「取締役はご存じないんですか?こちらです。」




『兄嫁との情事 義弟に剥かれて割烹着に隠れる黒乳首 濡れて…おりまするね? 


昭和枯れ薄シリーズ 大型新人デビュー 29歳 桂廻 舞子』




「マイコーーーーーーッ!!!!!なんで旧姓で出たーーーーーっ!!!


たしかに、舞子ジャクソンでは出にくいだろうけれどもーーーっ!!!


インパクト的にはそっちの方が絶対いいじゃん!?

っていうか相手は誰だ?花○じったか!?」



「えっ?そこ?っていうか、じ○たさん結構前に引退してますよ?」




「うぅっっ!!!」



「取締役っっっ!!!」




刹那に突如走る胸の痛み。


そしておっさんの意識は闇に沈んでいくのであった。





・・・ところでこのどうしようもなく哀れなおっさん、、、俺でした。。。



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