30歳の恋愛経験のない恋愛ゲームマスターの私が、美少女恋愛シミュレーションゲームの中の悪役令嬢に転生するって? しかも「攻略不可」のヒロインとして君臨?

@Song1

プロローグ

私の名前は堀内俊。 自己紹介で私を一言で表現すると、全国どこにでもいそうな平凡な人一人。 そんな私には幼い頃から必ず叶えたい夢があった。 それはまさに彼女を作ること。 自分で考えても夢というにはあまりにも突拍子もない言葉であり、また男に生まれたやつがそんなことも夢と言えるのかとあざ笑うかも知れない。


しかし、私もそれなりにもっともらしい理由があった。 私も今までなぜこのように生きてきたのか理解できず、絶えず理由を再確認して探し出したのだ。


我が家は私が幼い頃から両親が共働きをしていた。 2人が仕事で家を出ると、いつも私一人であり、このような環境で自然に誰かと一緒にいたいという気がした。 そう、寂しさだった。 最初はただ私がいつも一緒に過ごせる誰かが必要だという考えだったが、このような私の欲求はいつの間にか執着に変わり、この強烈な感情を解いてみようと努力することがいつの間にか私の人生の大部分になってしまった。


私の家は両親が共稼ぎをするおかげで経済的に不足していない環境であり、私が個人的に何をしているのかあまり気にしなかった。 いや、二人とも仕事を終えたら疲れて私に関心を持つ余裕なんてなかったんだ。 とにかく、ただ毎月小遣いだけをきちんと握りながら、「自分でうまくやっていけ」という言葉だけだった。


このような条件は、彼女を作るのに最適な条件だった。


学生時代にちょっと人気があるという奴らの中で大部分は二つのうちの一つだった。 お金がなかったり、時間がなかったり。


いつも聞こえてくるのは、彼女にプレゼントを買ってあげるお金がなくて、そしてデートをするお金がなくて、そしてそのお金を稼ぐためにアルバイトをしていて時間がなくて恋人関係を維持できなかったという便りだった。


あいつらはいつも私のことをうらやましがっていた。 両親が共働きなので干渉もないし、お小遣いも十分だからアルバイトなんてする必要もないし、彼女がいないから時間やお金も余裕があるし。 嘲弄か嘲笑かは分からないが、いつも同じ言葉だった。


今考えてみれば、どちらかはそれほど重要ではないが、その時は私には虚しい自信と勇気を与えてくれた言葉だった。 うん、お金もあるし、時間もある私を嫌いになる人は誰もいないよ? 私が少しだけ努力すれば彼女くらいならすぐ作れるよね? 女一人を味方につけるのがそんなに難しいの? 全然違うじゃん?


そして現実の女はこんな私の妄想を無慈悲に踏みにじった。


特に望んでいたわけではなかったが、経験から得たものがあるとすれば、この世の中には拒絶を表現する方式が多様だということ。 これはまるで温度計のようだった。 0度から100度まで全部胸に響く程度が違った。 冷たいね。涼しいね。 暖かいね。 熱いね。時間が経つにつれてゆっくり染み込む苦痛から、一度にひりひりするほど強烈な苦痛。


私がどうしてあなたみたいなやつと付き合わなければならないのかと火のように怒る人。


私が男に見えないと落ち着いて淡々と詠む人。


ただすまないと言って席を立つ人。


ただ顔をしかめては何も言わずに去ろうとして、私がぱくりと腕をつかむと、すぐに私の手を振り切って頬を殴る人。


特に気に障った言葉は私よりもっと良い人に会えるでしょう。 私と付き合うにはとてももったいない方です。


いや、誰が考えてもその反対ってことでしょ。 今自分自身に言いたいことは私に言うんじゃないの? 私はあなたよりもっと良い人に会える。 あなた 同じ人間と付き合うにはとてももったいない人だよ! まさにそのように聞こえるって! 嘘をつくなら、目立たないようにしないと。 私も知ってるって!


表現と同じくらい理由も多様だった。 声がいやになる。 顔が不細工だ。 背が低い。 そう、理由だけでも教えてくれる人は天使だった。


何の理由もなくただ嫌だと言う人もいた! 何それ!


それでも優しくしてくれた女性に、もしかして私のことが好きなのかと聞いたりもしたが、帰ってくる返事は別段違いがなかった。 いや、むしろもっと私を惨めにする返事だけだった。 ただ、いつも断られるのが可哀想だということだった。 このように優しくしてくれれば、あきらめるかも知れないという考えだった」と話した。


無駄な期待と希望を植え付けることが放棄だというのか?


人は何の理由もなく恋に落ちることはないと言うが、現実でその反対は自然に成り立つものだった。 何の理由もなく誰かを嫌うことができるという極めて当然な世の中の道理を、私は今まで生きてきて凄絶な経験を通じて悟った。


そして、このように苛酷な現実でぼろぼろになるほど踏みにじられた私の心を治癒する方法を悩んで関心が生じたのは、まさに仮想の女だった。 まさに美少女恋愛シミュレーションゲームと呼ばれる物。


たとえ実際に生きている女ではなかったが、すでに満身創痍になった私にとってこれは救援のような存在だった。 現実なのか仮想なのかはそれほど重要ではなかった。


そして、現実の女性に振られると、すぐにその痛みを癒すために、美少女恋愛シミュレーションゲームをつけるのが極めて当然の日常になった。 痛い現実から抜け出すための逃避先であり、私の個人的な欲求を満足させてくれる楽園。美少女恋愛シミュレーションゲームをしようと現実を生きていく人間になっても、これで十分だった。


これはゲームだった。 そう、ゲーム。 ここに出てくる女は典型的なパターンで行動が決まっていて、ただその順序にじっとついていけば自然に味方にすることができた。 そして、私の本棚の片隅に美少女恋愛シミュレーションゲームがますます積もるほど、その行動パターンということも簡単に予測された。


そう、簡単だよ。 すごく簡単だよ。 こんなに簡単じゃないと。 私が望んでいた恋愛とはまさにこういうものだったの!


私は満足感にとらわれずにはいられなかった。


時間が私を待ってくれるはずがなかったから、私は当然高校を卒業して、東京に来て就職をしたが、このように環境が変わる中でも、これだけは変わらなかった。


1年… 2年… 年を取るにつれ、周辺から結婚のニュースも聞こえてきた。


もうこうなったのかな?


30歳の私は18歳の私と変わったことが何もないようだが、この世の中は私に無理な責任だけをたくさん要求した。 就職しないと。 お金稼がないと。 家を探さないと。 恋愛しないと。 結婚しないと。 子供を産まないと。


夜明けの空気を吸いながら会社に出て、日が暮れると家に帰ってくる生活の繰り返し。 そして、息をする余裕すらない中でも聞こえてくる恋愛と結婚に対するプレッシャー。


私が一体何の罪を犯したの? 私がどうしてこんなふうに生きなければならないの?


私はすでに知っている。 ただ「恋愛経験無し 」という言葉では、私の人生の全てを表現できないということだ。 まだまだ足りないということを知っているから、私がこうしているんだ。


漆黒の闇に覆われた午前0時に、まるで夢の中でも歩くようによろめきながら家に着く。


やはり暗い居間にどっかり倒れては両手で顔を一度掃くと、今日会社で食べたあらゆる悪口が頭の中でちらつく。 頭がずきずき痛むので、わざと無視しようと周りを一度見回してみる。


大まかに散らかっている美少女恋愛シミュレーションゲームがいくつか目に入る。 片付けられなかったピザの箱とコーラの瓶。 そして大きなテレビ画面が光っている。


森の背景にそびえる城がある。


私が幼い頃からやってきた王子と王女、そして勇士が出てくる中世風の美少女恋愛シミュレーションゲームだ。 古いシステムとオールドな画風のイラスト。 そして食傷的なパターンのストーリー展開。 今見ればただ古物と変わらないが、思い出はそのような短所を全て覆うほどおぼろげだった。


数多くの恋愛ゲームを渉猟した私だったが、私をこの世界に引き込んだまさにこのゲームだけは特別な意味があった。 格別の間柄だと言ってもいいよ。 そうだよ。何でも初めてという意味があるんだ。 誰が何と言おうと、このゲームは私にとって初恋だったから。


「私がゲームも消さずに出勤していたのか…。


かろうじて体を起こしてコントローラーを握り締めたら、業績達成率100%という文字が鮮明に見える。


虚脱するばかりだ。 おのずとため息が出る。 昔のことを思い出すのは当然のことだよ。


現実とゲームは何が違うんだろう? ただのゲームのように生きたいというのは、そんなに間違った欲なのか?


私はすぐにコントローラーを投げ捨て、ベランダに向かう。


よろめきながらドアを開けると、冷たい夜の空気が私を包み込む。


ベランダの手すりをつかもうと手を伸ばす時、強い風が吹く。


その瞬間にただ手が滑る。


それにして当然の対処をする前に、私の体はすでにベランダから離れて、深い夜の空に浮かんでいる。


そして、私は精神が朦朧としている中でもぼんやりと感じる。


あっ、こうやって行くんだ。 これが私の人生の最後の瞬間なんだ。


本当に虚脱きわまりなかった。 まるで映画を見るように、これまで生きてきた人生のすべての場面が目の前を通り過ぎる。


しばらく空を飛んでからドーンという音とともに全身で感じられる強烈な衝撃。


そしてもうろうとする精神。 ぼんやりとした視線でぼんやりと見えるのは、ただ流れている赤い何か。 生臭いにおいを漂わせながらねっとりする何か。


私はゆっくりと目が閉じる。


「ここは… 確かにベランダの欄干から落ちたことまでは覚えているが…」


私は頭をつかむ。


確か夜だったのに、そして高層ビルに囲まれていたのに…」


私が目を覚ました場所は、古風な装飾が目立つ部屋の中。


「何だ、この見慣れた気分は…··· きっとここは初めての場所なのに…」


私はただ慌てて、すぐに窓を開けて外を見る。


すぐ見えるのはただ広がる野原。


「確かにこの風景は… 私が夢を見ているのか?」


絶対に忘れられない風景。 そして、絶対に勘違いできない風景。 幼い頃からおよそ20年余り見てきた風景。


「ここは… ゲームの中の世界?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る