第3話(妹)は姉の為に

私は先輩が好きだ。

と言っても...それはただの好きではない。

心から好きである。

その理由は単純なものだった。


先輩と話したあの場所で野犬から先輩が救ってくれたから。


だから私は先輩が好きだ。

だけど幼かったから先輩は多分覚えて無いと思う。

それに私は幼い時は男の様な服で男装をしていたのだ。

何故なら親とか親族が男装が似合うという事でさせていた。

幼い頃にないだろうかそういう経験が。


私はその事もあり男装人間だった。

まあ親とか親族がそういう人間だったから仕方が無かったが。

だけどまあ嫌でも無かったから男装していた。

そういう事があったのもあり先輩は多分、分からない。


「先輩」

「何だ?」

「泊って行って良いですか」

「良い訳無いだろ。お前も大概だな!」

「ぶー。先輩のけちー」

「先輩はケチでも良い」


まあ冗談で言っていた。

だから私は本気にされるとは思ってない。

そう思いながら私は乾いた身体を見ながら洗濯してもらった服を着てから覗き込む様に先輩を見た。

先輩はその事に気が付いて赤面する。


「早く帰れ。...全く」

「アハハ。そうですね。じゃあ帰ります」

「...ああ」


すると先輩の顔の雲行きが怪しくなった。

私はその様子に考えてから「...大丈夫ですよ」と呟く。

まあ正直、大丈夫では無いが。

姉と一緒に暮らすのが汚らわしいぐらいだし。


「...私は...姉をもう姉としては見れません。だけど大丈夫です。先輩」

「...本当か」

「本当です。...だけど先輩。もし良かったらハグして下さい」


それから先輩は私を抱き締めて来た。

私は身が震える。

そして目を閉じて涙を浮かべた。

それを気が付かれない様に拭ってから先輩に強気の顔を見せる。


「先輩。もう大丈夫になりましたぁ」

「...だったら良いが」

「えへへ。先輩暖かいですねぇ。もしかして下半身も?」

「...冗談は止めろ。...本当に大丈夫か」

「...はい」


そして私は真剣なその顔に頷く。

それから私は手を振ってから家に帰った。

すると姉が「お帰り」と言ってきた。

私はその顔を見て一瞬だけ顔をしかめた。

だけど直ぐに笑顔になる。


姉はニコニコしながら「これ。正人に貰ったの」と小さな香水みたいなのを私に見せてくる。

確かに良い香りだ。

だけどどうあって先輩に貰ったとはいえ。

コイツは浮気した姉だ。


「...良い香りだね」


そう言いながら私は死神の様な目を向ける。

すると何も分からなそうな姉は「でしょ?」とニコニコする。

アイドル級の可愛さがあり黒の長髪。

真白のキャンバスの様に真っ白な肌で目鼻立ちが整っており一途そうな顔だが。

だけど内面ゴミ屑の相手をせねばならないとは。


「...あ。そうだ美優」

「うん?どうしたの?お姉ちゃん」

「今までずっと何処に居たの?雨酷かったよね?」

「ああ。...図書館だね」

「あ、そういう事」


お姉ちゃんを見ながら私は悪魔の様な笑みが止まらない。

アンタの彼氏を寝取ったんだよ。

そう思いながら。


だけど悪いのは姉だ。

コイツが全てを壊した。

だから私は姉を許す気は無いと思う。

だけどそれを察されるのも先ず面白みがない。


ならば暫く姉の好き勝手にさせてそのうちで地獄に落としてやる。

そう思いながら私は歪んだ笑みの様な。

だけど纏まった笑みを浮かべながら姉を見ていた。



姉は楽しそうに自室に戻る。

私ははらわたが煮えくり返りそうになったが。

あくまで冷静に姉を見ていた。

それから私は姉と別れてから自室でベッドを殴った。

イライラする。


「だけどまあ先に手を出したのは姉だし。...今更後悔しても遅いね」


ブチ切れた感情を叩きつけながら私はニヤニヤしていた。

ヤバすぎるぐらいに感情が歪んでいる。

私もそうだが全てが。

そう思いながら私はベッドを殴りつけてからそのままスマホを開く。

私は先輩の連絡先を開く。


(先輩から貰った香水を姉が喜んでいます)

(...そうなんだな。もう思い入れも無いけど)

(姉が至極ウザいです)

(...そうか。お前大変だな)

(はい。大変です。だけど面白くなってきました。私、姉を地獄に落としたいです)


(私から希望という全てを奪ったんで)と書きながら私はゾクゾクする。

私はSなのかな。

そう考えながらだが。

そして私はスタンプを送る。


(...そうだな。...全てを奪ったな。俺達から)

(先輩はそのままで良いですよ。...こういう事をするのは私だけで良いです)

(...だが...)

(私がやりたいだけです。全て姉が悪いので)

(...分かった)


先輩はそう書いてくる。

それから(やり過ぎるなよ)とも。

分かっている。

私はお姉ちゃんに幸せを奪った分を背負わせる事にした。

幸せになるのだ。


私達が姉以上に。

姉というゴミ屑を地獄に落としながら私達は幸せになってやる。

そう思いながら私は横の部屋の壁を見る。


そこであの女が何をしているか知らない。

だけどいずれにせよまあろくでもない事をしているだろう。

私は思いながら薄笑いを浮かべる。

待っててねお姉ちゃん。

妹はこの為に居るのだから。

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